[BlueSky: 841] 還元論にご注意を! Re:829,826 倫理と法的規制 - クローン人間は認められるのか?


[From] Ken Goto [Date] Thu, 09 Sep 1999 15:27:53 +0900

小宮さん、ゲンゴロウさん、青空MLの皆さん
                     後藤@帯畜大です。

小宮さん【829】:
> 実際にはクローン人間を作ることでこのような問題は起きませ
> ん。クローン人間はその人の全くのコピーではなく、遺伝的に
> 同じ、というだけで自然界に存在する一卵生双生児と変わりは
> ないのです。もちろん人格も異なるし、指紋も違います。そう
「一卵性双生児と異なることはない」という世論誘導も盛んに行われ
ていることなので、注意してください。これについては下記の二つの
ホームページで批判的見解を述べておきました。

●論壇時評「クローンと日本」(朝日、 6/2/97)の誤謬
http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/clone/AsToRondanJihyo_HumanCloning.html

●クローン人間作成と世論誘導
http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms/clone/MassMediaManipul_HumanCloning.html

一節を引用しておきます(↓)。

【二人の間の人間関係を遺伝的関係にのみ還元し、その他の関係(出
生の由来や「肉親」関係など)を切り捨てることによってのみ、核ド
ナーとクローン人間との関係が一卵性双生児同士の関係に等しい、と
結論できるからである。】

生命は時間的「断面」としての瞬間ではなく、時間的連続(生活環
(生命サイクル)リズムの位相進行)としての瞬間として存在します。
平たく言えば、プロセス、ですね。

こうした全体から部分を切り取り、その部分をもってして全体とみな
す見地が「還元論」です。

・・・全体から部分を切り取るまでは、西洋科学の正しい認識過程で
す。

一卵性双生児等価論は、したり顔でこの還元論的見地を普及すること
によって「恐怖感」なり「嫌悪感」を払拭しようとする試みでしょう。
臭いものには蓋、です。

環境問題も、自然を「経済的資源」に還元する態度に由来している、
と言えるかと思います。

中澤さん【60】が発案された環境問題を巡る三つの水準での対立軸
については、まとめページ(↓)
http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/bssummary.html#6
にまとめてありますが、、、
今、MLの話題になっている「人間中心主義」に関連して言うと、

後藤【84】:
> で、とりあえず、中澤さん【60】の三水準を僕の言葉でまとめてます。
> (1)(いわゆる)非人間中心主義 対 人間中心主義 
> (2)と(3)は、人間中心主義内部での対立。
>
> 中略
>
> 以上、列挙しておくと、、、
> (1)(いわゆる)非人間中心主義 対 人間中心主義 
> (2)文化的自然 対 「文明的」利便性(利用価値)
> (3)同一の目標を達成する際の、自然能力 対 人工能力 の対立。

因みに(1)はどういう問題として出されたかというと、
中澤さん【60】:
> 例えば,先頃,千葉県による東京湾三番瀬埋め立て計画が縮小されました。
> (1)たんに「干潟の生物多様性を守れ」とか「東京湾の生物相を破壊
> する権利は人間にはない」といった環境保護論だけでは,おそらく
> 千葉県や周辺市町村の行政が耳を貸すことはなかったでしょう。
> 環境保護論が悪いとはいいませんが,多くの人を動かす力としては
> 弱いと思うのです。

僕としては対立軸(2)の「文化的自然」の【最も見えにくい】価値
を重視したいと思っています。

なお、
後藤【198】:
> > 最後に。公害とか立ち退きとか、↑の(1)→(3)の対立軸では捉えられない
> > 問題ももちろん残っています。
> を補足しておきます。
>
> (4)人権 対 企業利益
>
> いわゆる公害の場合、人体に対する危害(生存権というのか?)に関係している
> ので、また、原因が企業の垂れ流し等に関係しているので、この構図がとてもはっ
> きりしています。
おっと、上記、青空MLまとめページでは、この【198】は#6自
然と人間「環境問題はまず人間にとっての問題」というセクションで
はなく、#7集会などの情報「新潟水俣病特別講義@帯畜大」という
セクションに配置されていました。

・・・うーむ。要するに、【734】の推奨にあるように1メール1
テーマにしないと、「まとめ」ページにも上手く載せられない、
ということかも。ごめんなさい、本メールは少なくとも2テー
マになっています。

ただし、このメールは【734】の推奨にしたがい、一行全角
35字以内で書きました。

後藤 健
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帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612

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