[BlueSky: 747] 共有地の悲劇


[From] Nagamitsu Teruyoshi [Date] Sat, 4 Sep 1999 07:21:43 +0900

広木さんへ。ながみつ@札幌です。
(管理者さんへ:議論のまとめのページすごいですね!ありがたや)

さきにおことわりしますが、
私は、資源を
「利用可能で、利用すると利益があり、へってしまうもの」と定義し、
共有を
「おなじ資源を複数の個体が利用している状態」と定義しています。
(たとえば共存とか共生も、2つの生物がいっしょにいる以上の意味はないとおもいます)
とくに、管理できる範囲が資源だとか、ルールをまもっている状態が共有であるとか
そういったニュアンスはまったくありません。

自分で数理モデル(模型)をだしときながら無責任ですが、
このmlは、数理模型の拡張を議論する場ではないような気がしますので、
(微分方程式などをかきこみたくないので)以下手短に。
模型の拡張はご自分で検討してください。

> 実際の問題は、「安定平衡解が存在する
> か」ではなく、「どのようなプロセスで平衡解に到達するか」であると思います。

平衡解の解析は、数理模型の理解の第一歩です。
この共有地の悲劇の模型には、2つの平衡プロセスがあります。
ひとつは生物資源の個体群動態のプロセスで、
もうひとつは資源利用率が局所的安定(いわゆるESS)にたっする行動変化のプロセスです。
この2つを同時に検討するのはたいへんですね。

> さらに、松田さんのモデルは集団サイズを一定と仮定していますが、この仮定は現実
> 的ではないですよね。集団サイズと時間軸の変数を入れたら、どうなるでしょう。

集団サイズとは共通資源の利用者数のことですね。
この変数をうごかすと、模型は「くうくわれるモデル」にちかくなります。
で、利用者数を変化させるルールによっていろんな模型があるとおもいます。
が、おそらく、
利用者数1のとき利用者の平均利益がもっともおおきいので
利用者数1と生物資源K/2の平衡点にに振動しながら収束するか(競争排除則?)、
利用者数がふえるほど利用率がたかまる点を重視すれば、
振動がどんどんおおきくなって、利用者数0生物資源0の平衡点にいくでしょう。

> 系が連続的ではなく、離散的だと(たとえば、資源の収穫時期と成長時期がずれてい
> るばあい)、平衡解に到達するまでの挙動が不安定になるのでは。また、離散の程度
> が大きいと、平衡解が不安定になる可能性も出てくるのではないでしょうか?

こういったことも、「くうくわれるモデル」の離散変数模型で確認されていますね。
(ニコルソンベイリーとか)

まあ、共有地の悲劇の模型は、
500系のぞみ量産タイプ先頭車両の模型というよりも電車一般の模型といったかんじですから
抽象的な教訓がひきだせるだけで現実的な予測にはむいていません。

で、私がひきだした教訓は、
1)分割がかんたんな資源は、私有し、リースで相互利用する。
2)分割がむつかしい資源は、数十人(単位)の利用者の行動を操作できる状況で利用する。

おまけ
行動の操作は、技術的制約(利用期間、利用道具の制限、利用に危険がともなうなど)と
心理的規制(資源がきもちわるい、おそろしい、利用がばれたらはずかしいなど)、
が有効で、制度的規制、科学的説明による説得などは役にたたないでしょう。
技術的制約がほとんどなくなった現在、中沢さんがおしゃっていた
深層心理にうったえる文化的規制が有効だという認識に
私もまったく同感です。



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