[BlueSky: 724] Re:714 勝手,お約束のアイデア


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 02 Sep 1999 18:17:11 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 714] 勝手,お約束のアイデアに於て)
Thu, 2 Sep 1999 07:24:51 +0900頃,Katsumiさん:
> 1,昆虫の義手,義足を製作
> 2,バーチャル・リアリティー(仮想現実)
形態分類・教育目的なら,いいアイディアだと思います。
しかし,限界があるのも確かです。その限界を弁えた上で
使うなら素晴らしいと思います。

作り物の場合,極限まで細かく見ると,細胞構造でなくて
均質な人工物になってしまい,そこには驚きがありません。
科学の心を養う上で制約になるかと思います。機械に3次元
トレースさせて作っても,鋳型の中は本物の複雑さには遠く
及びません。仮想現実の場合,さらにプログラマの脳という
フィルタを通った知識になりますから,自然から学ぶことに
なりません。

解剖学者の養老孟司さんが,解剖学の講義で,本物の人体
標本の価値を説明するときに,顕微鏡でみたときの驚きを
あげていました。もちろん,プラスティック製の人体模型
も,マクロな構造の理解には役に立ちます(その意味で,
精密な昆虫模型や仮想現実も役に立ちます)が,それとは
別に本物も必要なのです。本物なしに自然の理解に迫ろう
という教育をするのは傲慢(自然に対して)ではありませんか?

人体標本ではプラスティネーションといって,特殊な樹脂を
注入して触れるようにしたものが最近開発されています。
これまで液浸以外では不可能だった内臓の標本ができたので
画期的だったそうです。

昆虫はキチン質(でいいんでしたっけ?)があるので,
プラスティネーションは難しいかもしれませんが,ああいう
感じで,触っても大丈夫な加工ができるなら,それに越した
ことはないですね。

#余談ですが,養老さんも子どもの頃は昆虫少年だったそうです。

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo


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