[BlueSky: 722] Re:715 共有地の悲劇と生物多様性


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 02 Sep 1999 15:38:05 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 715] 共有地の悲劇と生物多様性に於て)
Thu, 2 Sep 1999 09:58:02 +0900頃,Y.Kuzunukiさん:
> クジラやマグロを食べる習慣がない国から見ると日本は、世界の共通資源である
> これらの絶滅の危機にある種を、「ぶんどって」いることになってしまう。
一瞬,たしかにそうだな,と思いましたが,思い直しました。
欧米の多くの国からそのように思われている可能性はあるかも
しれませんが,それは合理的でないように思います。
持続的利用であれば,「共有地の悲劇」でいう「ぶんどる」には
あたらないのでは? 調査して,持続可能な量を計画的にとり,
同時にクジラの生存に適した環境の維持に努めるなら,資源として
なくなることはないわけですから。

[705]でながみつさんが紹介された松田裕之さんの本では,米国人
の知り合いがいうには,日本の捕鯨が認められないのは,一旦
許したが最後,約束通りに計画的に捕るはずがない,と思われて
いるからだと書かれています。信用がない,ということです。
松田さんは,地道に信用を確保すべく努力することを勧めています。

しかし,クジラを捕って食べることに関しては,資源と生物多様性
といった問題以上に,文化の問題があります。民俗的資源利用と
してクジラを食してきた人々に対して,「賢くて人間の友達だから
クジラを食べるな」と自文化を押しつける一部の欧米人に,理を
認めることはできません。
http://telemann.edu.ibaraki.ac.jp/sts/ad-ee8.htm
に出ている文献リストは,クジラ問題を考える上で役に立つと思います。

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo


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