[BlueSky: 702] 完全変態生物について


[From] "nobuaki" [Date] Wed, 1 Sep 1999 14:02:05 +0900

ゲンゴロウさん、みなさん、こんにちは。
川口伸明と申します。初投稿です。宜しくお願いします。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2101/nob.html
ここに私の7つのホームページの総合案内があります。
4つはダイビングですが、文明論的環境論もあります(工事中ですが)


>昆虫の多く(?)は完全変態ですよね。
>幼虫から成虫になるときに、「さなぎ」になるようですが、
>あの、「さなぎ」の中では、何が起きているのでしょうか?

私は東大薬学部で博士論文の時に、完全変態昆虫『センチニクバ
エ』(Sarcophaga peregrina)の形態形成の研究をしていました。
また、昆虫の変態を通して、生命進化の意味なども考察していました(こちらは
科学とは言えないかも)。

完全変態昆虫の蛹内部では、幼虫組織の崩壊と成虫組織の構築が同時に進行して
います。
センチニクバエの場合、卵胎生ですから幼虫の姿で生まれてくるのですが、2回
の脱皮を経て最終齢である3齢幼虫となります。幼虫の体内の大部分は脂肪体
(fat body)と呼ばれる組織で占められており、これが幼虫の必要な様々なたんぱ
く質の生合成や分解などを司る。よく、腎臓と肝臓の機能を兼ね備えた器官と言
われます。その他の器官は脳神経系,消化管(中腸),そして成虫原基
(imaginal disc)があります。
センチニクバエの場合は、体表が乾燥すると、変態ホルモンである ecdyson が
分泌され、表皮が角質化し、囲蛹殻(いようかく)が形成されます。これが所謂
サナギです。
さて、蛹の内部では、(1)脂肪体が血液細胞(haemocyte)により分解され、ドロド
ロのポタージュスープのような形状・色・粘性のコロイドで満たされます。ただ
し、脳神経系や中腸の一部はそのままです。つまり、それまで正常な自己と認識
されていた脂肪体が非自己へと標識を変え、生体防御機構によって崩壊させられ
るのです。と同時に、
(2)それまで眠っていた数千個の細胞の固まり(成虫原基)が急速に分裂増殖を始
め、成虫構造形成を行います。たとえば、ハエには2個の複眼、2枚の翅、6本の
肢がありますが、全て対応する2個の複眼・触角原基、2個の翅原基、6個の肢原
基から分化するわけです。
このとき、ドロドロに壊れたスープ状の脂肪体の残骸は、膨らんで行く各構造の
内部に取りこまれて行きます。成虫の材料やエネルギー源になるのでしょう。
蛹を注意深く解剖すると、囲蛹殻内で綺麗な透明な成虫の原型が形成されて行く
様子が観察できます。

すみません。時間がないのでとりあえずココまで。続きはよるにでも。
ではでは
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Nobuaki Kawaguchi, Ph.D.


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