[BlueSky: 688] Re:628 昆虫の標本


[From] HIROKI Masato [Date] Tue, 31 Aug 1999 19:22:43 +0000

松尾さま、みなさま

広木@ICUです。こっちの問題も口を挟んだ責任を取らないと

> ホームページの「昆虫採集への疑問 Q&A」読みましたけど、読む前よりも
> 昆虫採集に疑問を感じるようになりました。
> 疑問点は、
> 環境破壊などで減少した昆虫は採取をしてもしなくても減少するので、
> 採取を禁止しても意味がない。ととれるような点
> 昆虫採集が「人間が健康な肉体と精神を維持するために必要な殺生」ならば
> 鹿の頭を部屋に飾るためにハンターが猟をするのと同じなのかなぁ〜?
> 国語力のない私なので、全然意味を理解していないのかも知れませんけど。

文字どおり、そのままの解釈で間違っていないとおもいます。

確認しておきますが、松尾さんの指摘する問題は2点ですね?

まず、前者について。生息場所が減少すると、次世代再生産に関わる成虫個体数が減
少します。すると、様々な要因(雌雄の出合いが限定される、性比が偏りやすくなる、
などなど)によって、各個体が繁殖に成功できる確率が下がります。すると、ちょっ
とした偶然(たまたま雌雄の羽化時期がずれた、ちょっと天気が悪かった、各個体が
成長している地点が離れすぎている、などなど)によって、局所個体群というのは簡
単に絶滅します。その確率は、数個体採集することによる個体数の減少とは比較にな
らないものです。生き物の基本は「過剰繁殖」ですから。

ただ、食草を根こそぎ持っていってしまうような大量の採集は問題でしょう。それは
既に環境破壊です(^^)

しかしながら、大量採集、飼育が、一概に悪である、と決めつけるわけにはいけませ
ん。養殖で増やした個体標本の流通によって得られる収入を産地の生息環境の維持に
利用することが可能ではないか、という指摘がなされており、既にチョウではそのよ
うなことが行なわれつつあるようです。飼育の難しい昆虫ではなかなか採算が軌道に
乗ることはないでしょうが。また、毛皮用の動物養殖のような倫理的問題は未解決で
あることも確かです。

ちょっと商売になりそうなのでここで話すのは問題があるのかもしれませんが、私ど
もが現在翻訳をしている甲虫の本にそれに関する記述があります(言っちゃった)。

つぎに、後者についてですが、これはもう、文化の問題です。疑問を感じたら、素直
にどんどんそれを公表すべきでしょう。

> #自分の子供には昆虫を観察するための昆虫採取はさせても、
> #標本を作るための昆虫採取はさせないようにしよう。

観察したあとは、どうするんですか?

&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
広木眞達(HIROKI, Masato)
国際基督教大学生物学教室加藤研究室
〒181-8585 三鷹市大沢3-10-2
TEL 0422-33-3269 (加藤研究室)
email address:hiroki@icu.ac.jp.
&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。