[BlueSky: 682] Re:674 :共有地の悲劇


[From] HIROKI Masato [Date] Tue, 31 Aug 1999 16:19:15 +0000

中澤さま、みなさま

広木@ICUです。中澤さんにはわたしのネタ本がバレバレのようですね。

Hardin G. (1983) The limit of altruism. An ecologist's view of survival
(邦訳:「サバイバル.ストラテジー」思索社)

> ハーディンのいう共有地の悲劇モデルは,「共同で使用されるあらゆる資源
> は,必然的にその資源の乱開発あるいは劣化を招かざるを得ない」と予測
> しているわけですが,実は,ある資源を利用している人たちがその資源への
> アクセスを制限したり,その資源を持続的に利用するための取り決めを彼ら
> 自身の手でつくりだすのに成功している例は驚くほど多数あります(出典:
> David Feeny, Fikret BErkes, Bonnie J. McCay and James M. Acheson
> (1990) The tragedy of the Commons: Twenty-two years later. Human
> Ecology, 18: 1-19,昭和堂「エコソフィア」第1号,1998に,京大の田村
> 典江さんによる邦訳が載っています)。

「うまくいく」事があるのは否定しません。というより、ないのは不自然です。ただ
し、「なんでもかならずうまくいく」わけではないですよね。

> 例えば,日本の村における森や牧草地の共有地は,村長によって口明けと
> 口止めが設定され,何世代にもわたる持続的利用が確保されてきました。
> 件のソロモン諸島の例でも,海外資本が入ってきて養鶏やプランテーション
> で儲ける若者や中年層が現れ,長老による伝統的管理の権威が低下する前
> は,ツカツクリ営巣地への立ち入りは厳しく管理され,資源が維持されて
> きたわけです。これは,共同体所有制によって,個人の目先の利害でなく,
> 共同体全体としての長期的利害で行動しているからです。

この成功例で注目すべき点は、「資源にアクセス可能」な人間が、限られていた点で
す。その条件下で、短期的な利益を偶発的に乗りこえることがあれば、長期的利益の
確保は容易に確立されることでしょう。

私は確率論的過程も決定論的過程と同様に重視しています。

> 「自制」が生き残れないのは,ハーディンが仮定した(暗黙に仮定した
> ものもありますが),(1)オープン・アクセス制,(2)個人の振る舞いに
> 対する制約の欠如,(3)需要が供給を上回る状況,(4)資源の利用者が
> ルールを変更できない,などの条件が満たされ,かつ,共同体所有制の
> 可能性や文化的制約の可能性を排除した場合に限ります。

この条件が満たされる場合は多いのでは?

> 先にあげた
> Feenyらの論文の最後では,世界保護戦略や世界環境開発委員会が
> 地球の共有資源を協調していることに触れて,オゾン層の消失や
> 大気中の二酸化炭素の蓄積が,現在進行中の地球規模での共有地の
> 悲劇であるといっていますが,同時に,大規模な共同管理にその解決
> の糸口があるのではないかともいっています。

「ゲーム理論」で問題になる、「チーター」の排除、そこが如何に行なわれるか興味
があります。

> 著者らは明示して
> いませんが,もう一つの解決の糸口は,文化,つまり環境倫理を広める
> ことです。アニメやゲームの利用というのも,その意味でいい案では
> ないかと思います。

社会慣習やタブーといったものが果たしてきた役割を意図的に作ろうとするわけです
が、広めるべき「倫理」はどのようなものか、その策定段階での「異なる」文化(あ
るいは価値観、利害など)の対立をいかに乗り越えていくか、それが次のステップで
すね。

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広木眞達(HIROKI, Masato)
国際基督教大学生物学教室加藤研究室
〒181-8585 三鷹市大沢3-10-2
TEL 0422-33-3269 (加藤研究室)
email address:hiroki@icu.ac.jp.
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