[BlueSky:06623] エコツーリズ ム RE:


[From] "SUKA Takeshi" [Date] Wed, 12 Jul 2006 23:00:08 +0900

中澤さん みなさん

須賀@長野市在住です。
中澤さんとはそんなに遠くないところに住んでいるはずなのに、
おたがいにいそがしすぎるのか、お目にかかることがめったに
ありませんね。

中澤さん:
> 授業と観察の違いなのか,高校生と小学生の違いなのか
> 興味深いところです。

そうですね。わたしは、両方かな、と思いました。
高校生の前で(実習はしたことがありましたが)、
講演のかたちの授業をしたのははじめてだったので、
ちょっと勝手がちがうな、と感じたことも事実です。

授業がはじまる前に、先生から、おしゃべりしたり
居眠りしたりする子もいると思いますが、気にしないで
ください、といわれて、ちょっとびっくりしました。

話の内容は、あまり高校生を子どもあつかいしないで、
大人むけの講演会などで手ごたえを感じる話を、ある程度
かみくだきながらも、正面からぶつけたつもりでしたが、
具体的な材料が「虫」だったりしたので、いろいろ感じる
ところの多い高校生たちにとっては面くらうところが
あったかもしれません。生物多様性と文化とか、自然の
めぐみとか、持続可能性とか、そういう総論的な話に
後半でうつったときには、ちょっと表情がちがった
ような気がしました。表情とか、ちょっとした視線の
変化などからは、話に興味がないわけではなくて、
内心いろいろなことを考えているんだろうな、という
ことがつたわってくるのですが、それが質問という
かたちでは出てこないところに興味をそそられました。

中澤さん:
> 教育には社会化という一面があることは確かだと思うので
> これは日本社会が個が目立つことを良しとしないため
> かもしれません。

それはありそうですね。わたしも、質問が出ないのは、
生徒同士のあいだで、目立ちたくない、という配慮が
あるような感じがしていました。そうしたことからすると、
わたしのした話は、高校生の日常にとっては、場違い感が、
大きすぎたのかもしれません。

> 発言するのが当然,という「場の空気」
> を作ってしまえば別かなあ,と,冷泉彰彦『「関係の空気」
>「場の空気」』講談社現代新書,を読みながら考えたり
> しています。

そうかもしれませんね。葛貫さんの投稿からも感じたのですが、
確かに、今回の話では、高校生から質問などのことばの反応を
ひきだす、ということを十分に考えていませんでした。それよりも、
メッセージとして伝えたいことがたくさんあって、つい
熱弁をふるうような格好になってしまいました。この反省は
次回に活かしたいと思います。

わたしの場合、職種(公立研究機関の昆虫担当)のせいか、
観察会やイベントなどで接するのは、子どもかシルバー世代の
方が多く、若者やはたらきざかりの世代の方と接することが
少ないのです。そういう世代のみなさんともっと深く接した
ときに、どんな世界がひらけてくるのかには興味をかきたて
られます。

> エコツーリズムといえば,長野大学に「環境ツーリズム
> 学部」というのが来年できる予定だそうですが,どういう
> カリキュラムを作るのか,またどんな学生が受験するのか
> 興味津々です。今年の4月から生態学者の佐藤哲さんが
> 東工大から移ってこられたのも,その布石ですかね。

そうですね。以前、このメーリングリストでもお話したかも
しれませんが、世界のエコツーリズムのあり方のひとつの
モデルを示しているとされるコスタリカに行って、ラセルバと
いう有名な研究施設で、一般向けの熱帯林の観察会に参加した
とき、ガイドをしてくれた方が、大学で観光学を学び、ナチュラル
ヒストリーを専攻した、という方でした。「観光」と「ナチュラル
ヒストリー(自然史)」という言葉のむすびつきが新鮮でした。
信州の場合はどんなふうに展開していくことでしょうか。信州の
自然を観光資源としてみたとき、その自然史的な側面をうまく
付加価値にできれば、その可能性はたいへん大きいと思うのですが。

> そういう意味では,観光客の側が変わってくれないと
> エコツーはうまくいかないと思います。
> また,十分な数の客がこないと観光産業としては
> 成り立たない一方で,客が多いと環境負荷が上がって
> エコツーの資源自体が破壊されてしまうという矛盾を
> 内包しているので,そこのバランスの取り方も難しい
> ところです。

そうですね。わたしの研究所でも、エコツーリズムとは
いっていませんが、過去数年、エコツアーを少し意識して、
丹念に下調べをして少人数の公開観察会をしています。
準備にとても手間がかかりますが、行事の性質上、
人数をあまりふやすことができません。同じことを
民間で、ある程度の収益をあげながらやるには、
本当にいろいろなむずかしさがあるでしょうね。

コスタリカの場合は、自然史情報の集積がかなりあり、
それが利用可能であることが、そうしたエコツーリズム
に付加価値をつけるのに相当役立っているのではないか
と思います。こういう、一見「役に立たない」基礎的情報が
実は大いに役立っている、というところが面白いと思いました。
もっとも、それだけがエコツーリズムのありうるかたちでは
ないかもしれませんし、このほかにどういうかたちに発展性が
あるかにも興味をそそられるところです。

   須賀 丈




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