[BlueSky: 660] 「森と環境」教育での教材例( Re:427 子供の遊び


[From] ymizuno@yo.rim.or.jp (水野義之 Y.Mizuno) [Date] Mon, 30 Aug 1999 03:26:28 +0900

後藤さん、青空MLの皆さん、水野@京都女子大、です。 長文です。

遅れたコメントで、恐縮です。ちょっと思いだしたことがあって、書きます。

初等教育における環境教育の内容について、です。

まず、私は、こどもたちにも、「後藤さんが高度だとおっしゃる教育」をして
ほしい、(なぜなら、それが環境問題の本質であるし、子供でもわかるハズ)
と思っているわけでした。

そして、学校での教育内容をどんどんと落とそうとしていることを、危惧して
いるわけです(社会問題は、どんどんと難しくなっているのに!)。


さて:
At 17:01 1999.08.13 +0900, Ken Goto wrote:
>喜多さん、ゲンゴロウさん、葛貫さん、水野さん、多田さん、青空MLの皆さん、
>                            後藤@帯畜大です。
>お盆休みの静けさが漂っていますね。
>いずれにせよ、「小学生と環境教育」という主題において、エコ・フォビアが問
>題にされましたが、環境問題以前の問題として、マン・フォビア(ヒューマン・
>フォビア)となっていてはお話になりません。

これ、その通りですね。

>
>僕の一貫した主張は、思春期前に人間愛、人間的正義、環境愛を形成しているな
>らば、後は思春期以降に自発的な理論武装が行えるだろう、ということです。い
>じめや不登校の問題は環境問題以前の問題ですが、これを解決して行くような教
>育姿勢でない限り、幾ら「高度の論理」を教えたところで、それは「いい子の仮
>面」しかない作れないのではないか、ということです。

「思春期前に人間愛、人間的正義、環境愛」、というのは、もちろん、
すべての活動の基本であると私も思いますが、それは学校教育の教育目標
(教科書の内容)にはならなくて、こういうレベルのことは、私は、むしろ、
親がちゃんと伝えるべきことと、思います。

問題は、初等教育の段階における学校教育での環境教育、何を、どう伝えて
いくか、という問題であります。

それで、そこのところでも意見が合わないわけです。例えばここで
「いい子の仮面」と否定的に後藤さんがおっしゃることを、私はむしろ、
子供の成長段階における1側面(おとなになろうとしている試行錯誤の1段階)
として、むしろ、「自然」なこととして見てやりたい、と思うわけです。

で、「理論」的には、なかなか、合意が難しいので、一つ、面白い例が
あることを思い出したので、それについて、ご意見をお聞かせください。


「森と環境」について、何をどうおしえるか、という問題です。

この「森と環境」の問題は、小学生では、5年生で勉強します(全国的に)。

私の娘が5年生の時、学校で「森と環境」について調べてこい、という宿題が
出たらしく、「なにか資料がほしい」、というので、WEB上で調べて、以下
(引用)のようなものを作り、渡しました。

先日、これのことを思いだしたので、娘に聞いてみたところ、こういう返事
でした。

   あれ、どうだった?  みんなびっくりしてた。
   わかった?      先生の話があったから(わかった)。
   どう使ったの?    あれで調べて、まとめた。
   難しくなかった?   大丈夫っしょ。

ということで、(私としても以下の資料は小学5年生にはかなり高度
だと思いますが、それでも)ちゃんと消化していたことがわかります。
その過程で、いろいろなことを学んでくれたことと思います。

もちろん、これは、たった一つのテーマでの、ささやかな実践に過ぎませんが、
でも、そういう(私としては、まともな)教育を、私は可能であると思って
いるわけです。環境教育においては、「高度」であることを心配する必要は
ないと思います。

これを再度、議論しても、始まりませんが、私がいいたいことは、
「教えたいことを、きちんと、おしえたい」、「それは、理解できる
ハズ」というようなことです。仮面、という発想が、私には、よく
理解できません。理解とは、わかった積もり、から出発して、
だんだんと深まっていくものだと思っていますので、1時的な仮面
のようなものを、あまり気にしていません(いずれ、自分で
気が付くはずだから)。


以下、引用資料です。

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小学5年生のための資料として(1999年1月、水野)

テーマ:「森と環境」

問題の種類
1)酸性雨・酸性降下物・樹木衰退
2)国有林問題
3)森林・林業・山村・樹木
4)自然保護・生物
5)地球環境
6)林産
7)国際
8)研究
9)研究環境・処遇



森林火災の問題)
アジアやブラジルでは、熱帯雨林の大火災が多い。最近では、1997年の秋に、イ
ンドネシアで森林の大火事があった。その煙で、まわりの国の人達が病気になった。
またこれも、地球温暖化の原因になった。また、世界の動物たちの住み場所をなくす。

ニュースでは、例えば:
* <森林火災のカリマンタン島>煙による呼吸器系の病気で十一人が死亡二万三
千人が手当て。スマトラ島やカリマンタン島などで百か所近くの火災が確認。
スマトラ島でも数人の死者報告。(NHKニュース1997-10-25 18:13 )

* <インドネシア森林火災>日本、消防ヘリ二機空輸。米国とオーストラリアの
航空機が消火に当たっているが、煙や、泥炭層燃え移りでてこずる。日本ヘリ
は赤外線カメラ搭載。(時事通信1997-10-24-20:52、朝日新聞
1997-10-24-21:41)

* <森林条約>キンケル独副首相兼外相、大木浩同庁長官と会談。東南アジア森
林火災に懸念、森林条約締結へ日本の協力求め、大木長官も「できるだけの協
力したい」。(毎日新聞1997-10-24-19:28)

* <インドネシア森林火災>煙害再びシンガポール、マレーシアで悪化。スマト
ラ、カリマンタン発生の煙霧のマレー半島への広がり衛星で確認。両島で過去
二日新たに山火事拡大。(時事通信1997-10-23-21:51、共同通信1997-10-24
01:10)

* <熱帯林火災>アジアとブラジルの熱帯雨林火災は、世界の絶滅危惧種と生息
地を脅かしている。WWFレポート。長期的対策が必要。
http://www.wwf.org/new/fires/home.htm。(WWF1997-10-21 : 受信)

* 大規模な森林火災が地球温暖化に及ぼす影響を調べるため、気象庁は二十一日
から、オーストラリア、インドネシアと共同で航空機による大気観測を始め
る。(読売新聞1997-10-20-20:16)

* <シベリアトラ生息危機>WWFの調査で、ロシア極東地域保護区の大規模火
災で生息脅かされていること判明。IUCNは消火活動支援で2万ドル拠出。
(共同通信1998-06-09-15:12)


森林の伐採の問題)
発展途上の国では、熱帯雨林の木を切る企業が、いまでも多い
ニュースでは、例えば:
* <ガイアナ熱帯雨林伐採>マレーシア・韓国合弁企業Barama、ベルギーの面積
の半分にあたる広大な伐採権取得。伐採量急増。(CNN1997-10-21 : )



酸性雨の対策)
世界中の国で協力して、酸性雨の測定をしている。
ニュース出は、例えば:
* <東アジア酸性雨モニタリングネットワーク>10カ国、酸性雨の統一的測定の4
月からの試験稼働に政府間会合で合意。アジア地域初の共同取り組み。日本は
ODAを積極検討。(朝日新聞1998-03-20-23:05、毎日新聞1998-03-20-21:27)



酸性雨の対策)
自動車からの排気ガスを減らすために、いろいろな科学技術の研究を行っている。
例えば、低燃費、低公害車を流行させる、電気自動車を作る、大型トラックなどで
排気ガスの規制を強める、など。

* <低燃費でNOx・すすも削減>デンソー。直噴用高圧分配噴射ポンプ。ディ
ーゼル用開発。トヨタ「ランドクルーザー」に初採用。(日刊工業1998-01-21
MM:MM)

* <低公害車を格付け>環境庁方針。普及へ税制など優遇措置。CO2にも指針
設定。(日経新聞1998-01-20 MM:MM)

* <電気自動車用の電池容量4割増>水素エネルギー研。高性能電極を開発。
(日経新聞1998-01-20 MM:MM)

* <大型ディーゼル車のNOx排出量>日野、新触媒で25%削減。規制の一段強
化、先取り。(日経新聞1998-01-19 MM:MM)

* <米EPA排ガス規制強化−揺れる農機メーカー>厳しい規制内容。4サイク
ルへ。エンジン、外部調達も。「業界地図」変わる可能性。ここ数年が勝負。
(日刊工業1998-01-19 MM:MM)

* <新車CO2排出量削減−EU>欧州委と欧州自動車工業会(ACEA)、ACEA未加入メー
カー削減努力条件に、今後10年で今の160g/kmを140g/kmに削減合意。日本や韓
国メーカーも善処要。(読売新聞1998-07-30-12:05)



酸性雨の対策:エネルギー問題)
酸性雨の原因にならないような、新しい発電所の研究を行っている。例えば、風力発
電、太陽光発電のテストをする、太陽光発電の値段を下げる、など。

* <風力と太陽光発電>テスト施設を設置。和歌山県吉備町。NEDOの補助申
請。(日刊工業1998-01-21 MM:MM)

* <安価な太陽光発電>平井技研。電池モジュール規格化、簡便施工法でFC展
開。4kWモデルで180万円、7年で回収可。住建メーカー窓口に、電池メーカー
に挑戦。(日刊工業1998-01-19 MM:MM)

* <太陽光と風力利用の超高速列車実験>東北大グループ、時速500kmの未来列車
の模型走行実験、宮崎リニア実験線で開始。プロペラで前進、翼で浮上。(共
同通信1998-08-01-08:52)

* <風力発電共同実験>住友金属鉱山と岩谷産業、風力発電事業参入目指し、独
社5百kW機で秋田県内で実証実験開始。採算性等結果よければ全国住友金属社有
地に増設し本格参入。(共同通信1998-07-30-19:32)

* <節電・新エネルギー自治体サミット>全国21自治体首長ら、埼玉県川越市
で。風力発電、ごみ発電、太陽光発電の現状や問題点を報告。(毎日新聞
1998-07-30-18:41)


酸性雨の対策)
中国で、石炭の火力を使っても、酸性雨にならないための科学技術の研究をするために、
日本も協力している。
* <「副生品利用型簡易脱硫システムに関する実用化研究協力事業」委託先公募
>NEDO。http://www.nedo.go.jp/CCTC/koubo.html。中国で石炭火力脱硫技
術。締切9月11日。(NEDO 98-08-11 MM:MM)



日本が林業を続ける問題)
日本には、外国から安い木材が輸入されている。だから、日本の木材では値段が高く
て売れない。だから、日本の林業の会社がつぶれてしまう。営林署の数を減らす(リ
ストラ)べきかどうかで、問題になっている。

最近のニュースでは、例えば:
* <国有林野事業の再生示す 林政白書骨子>低価格外材輸入増加で木材価格低
迷、経営コスト上昇し、一般会計繰り入れペース追いつかなかったと指摘。民
有林についても、公益的機能維持のため市町村に権限を移譲の方針。三月の林
政審に諮り、四月中旬閣議に提出。(時事通信1998-02-26-11:14)

* <国有林野事業を抜本改革>林野庁。自己負担債務は1兆円。本庁、局・署で
大規模リストラ。生産林2割に縮小、伐採量大幅減。来年1月より新組織に。
職員数削減、今年度末までに結論。(林材新聞1998-01-16 MM:MM)〔職員数の
1/3への削減は、結論が今年度末まで持ち越されたようで、会でも頑張って要望
を続けたいと思います。〕

 衆議院の「日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する
特別特別委員会」で国有林改革関連法案が現在審議されております。最近の報道か
ら、関連の動きを拾ってみます。

 衆議院の特別委員会の質疑としましては、民主党の鉢呂氏が「229営林署から98森
林管理署への再編案は撤回すべきだ」とただしたのに対し、中川農相は「存続の要望
もあるが効率性も重要で、ベストなものと考えている」と、撤回の意思がないことを
明らかにしたそうです(共同通信1998-08-31)。
 参考人として招致された全林野労組吾妻委員長は「現在、日常の森林保全の費用の
確保も十分ではない。一兆円の林野庁の債務負担については、さらに圧縮軽減をお願
いしたい。営林署の削減問題についても存続に寛大な措置をとるべきだ。」と訴えた
そうです(共同通信1998-09-09)。

 一方、国有林改革で営林署が廃止になる山村からは、切実な声が報じられていま
す。天然杉で有名な高知県魚梁瀬地区が、住民の三割が関係する魚梁瀬営林署が統廃
合の対象とされ「集落がなくなる」と危機感、「農協や郵便局もそのまま残るか不
安。若者は営林署員がほとんどなので祭りのみこしも担げなくなる。山の留学制度に
も痛手。」と林野庁へ計画の撤回を求めると言います(共同通信1998-09-12)。

 その他の関連する国有林関係の動きとしまして、林野庁が、国有林事業を国土保全
など公益性重視に転換する「管理経営基本計画」の骨格をまとめました。それには、
ボランティアを活用して後世まで森林を残す「二千年の森」(仮称)構想、動植物の
生態系保全のため保護林をつなぐ「緑の回廊」(同)の設定、従来五割程度だった国
土保全などのための公益林を八割に増やす等が盛り込まれているそうです(共同通
信、時事通信1998-09-01)。
 国有林の97年度決算が出されましたが、予想通りの相変わらずの赤字決算(139
5億円の赤字)です。


日本の森林を守るボランティア)

* <草刈り十字軍>富山県で造林地除草剤散布に抗議し始まって25年目、今年も
全国から 約120人。植林面積も減少、林業全体にかかわれる新しい活動も模索
中。(共同通信1998-08-03-16:29)

* <命はぐくむ水源の森>今年の「水資源白書」、酸性雨・地球温暖化等地球環
境問題初めて取り上げ。森林の減少や荒廃も問題。神奈川県、水道料金の一部
を森林整備に充てる制度スタート、1年で県民延べ三千人ボランティア作業。
(読売新聞1998-07-31-22:04)

* <岡山県加茂川町久遠の森条例>4ヶ所の指定町有林32haを永久保存、豊かな森
林づくり、緑の大切さを提唱する事を目的とする。今後追加指定や、区域拡大
も。(環境ニュースレター1998- 7-27 14:19)



森の役割の研究)

* <炭素循環−CO2量上昇時の植物中炭素の行方>カリフォルニア大、2草原地
帯で実験。炭素流入増加しても土壌炭素総量増加せず。「行方不明炭素探し」
森林の解析が課題。(科学新聞1998-03-13 MM:MM)



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Y.MIZUNO 水野 義之 (大阪府 茨木市)
http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~ymizuno/
==> Kyoto Women's Univ. http://www.kyoto-wu.ac.jp/
Tel/fax: 075-531-7104 mizuno@kyoto-wu.ac.jp


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