[BlueSky:06370] Re: 移入種としてのヨーロッパウナギ


[From] "Yamaguchi" [Date] Sun, 23 Jan 2005 07:30:52 +0900

葛貫さん、おはようございます。

> ヨーロッパウナギの産卵場は大西洋のサルガッソー海域,ニホンウ
> ナギの産卵場はフィリピン東方海域と離れていますね。両種は,自
> 然な状態では,混ざり合うことはないのでしょうか。

ウナギの生態、資源研究は進んでいるようで進んでいない、という
これも日本の水産研究の典型ですが、肝心のところがされていない
ということでしょう。

日本や韓国、中国などで成熟して産卵場の海に向かう時に何を
手がかりにして場所を見つけるのか、ヨーロッパとアメリカのウナギ
でも同様な問題があるはずですが、わかっていないのです。

海底山脈などの地形だとか、水深による水温や塩分の差異だとか
何らかの手がかりが働いているはずです。渡り鳥やウミガメのように
水面で星を見るようなことをウナギがするかどうかわかりません。
しかし、水面近くでの移動は海流が反対方向で難しいので、
海底あるいは水温の不連続層など深海を伝って進んでいるでしょう。

移入、放流されたヨーロッパウナギ、カナダや南半球から日本につれて
来られたウナギたちが海に出てからどうするのか見当もつきません。

とにかく、それらしき方角に向かう習性が組み込まれていて、
なんとなく産卵場所に到達できるのか、別種ではそれができるのか
できないのか、また、日本から中国までの出発点はとても広いのですが
そろって同一海域に同時に集合して産卵するのか、さらにそこで生まれた
ものがどこに流されて行くのか、バラバラなのか、などの宿題は山積み
です。最近の遺伝情報を調べる技術を使えば何とか推測できるはず、
と思います。多分、海洋研でやっている真っ最中だったりするのかも。

> 素人考えなのですが,日本近海へ海流に乗ってやってくるシラスウ
> ナギにヨーロッパウナギがどれほど含まれているか,経年変化を調
> べれば,どの程度,逸散または放流したヨーロッパウナギが降海・
> 産卵し,天然群にどのような影響を及ぼしているか等がみえてくる
> でしょうか。

これが、ウナギ資源の崩壊で調べられなくなる前にできるかどうか。
そもそも日本で天然群が消滅に向かっているのはおそらく間違いないと
思います。地域個体群の消滅は広がっているでしょうし、海に降りて
産卵する個体数が激減し、シラスウナギは養殖用に根こそぎ採取され、
資源の循環が大きく断ち切られてからすでに数十年たっています。

資源を増やすという名目で水産庁が巨額の助成をしてきた放流事業は
ほとんどがまやかし・ごまかしでしょう。成魚になって再生産するまで
10年程度ですから、そろそろこれまでにたまった歪の結果がでる頃
ではないかと見ています。韓国や中国のシラスウナギなども乱獲され
全域的な資源崩壊が起こる寸前ではないかと懸念しています。

山口正士
903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
琉球大学理学部海洋自然科学科



▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。