[BlueSky:06313] Re: 外来種問題


[From] SUKA Takeshi [Date] Thu, 06 Jan 2005 16:01:18 +0900

山口さん

ご返事ありがとうございます。また、シジミについて、ご教示を
ありがとうございます。

すでにご承知のことと思いますので、あまりくりかえすつもりは
ありませんが、わたしには環境省の代弁をするつもりはもともと
ありません。おわかりのとおり、批判するためにも、まず個々の
当事者が発信しているメッセージをよりよく知ろうと努めることが、
ものを考えるときの前提にくるべきだろう、とわたしは考えてい
ます。

さて、外来種問題が環境省だけの問題じゃないというのはまさに
そのとおりだと思いますが、その上で、環境省の外来種対策の
専門家は、数がどう考えても少なすぎると思います。

たとえば、日本に定着している昆虫類は、少なくとも433種が知ら
れています。
http://www.env.go.jp/nature/intro/sentei/insect01/mat03_1.pdf

おそらく、山口さんが水産資源生物について必要とお考えになる調査
をすべての種についてやろうとすれば、1種についてひとりでも足り
ないでしょう。国立環境研究所の侵入生物研究チームのスタッフは
何人いるかご存じですか? 2人ですよ。しかも、そのどちらも併任
です。こういう人員の配置を放置していることをへっぴり腰という
なら、確かにへっぴり腰というしかありませんね。もちろん、ほか
の省庁も専門家を増員するなりして適切に配置するべきでしょう。

外来生物法が成立したときの「付帯決議」をここで全文を引用したい
くらいですが、政府がこの法律の施行にあたって「人員・予算の確保
等」にも努めること、としています。
http://www.env.go.jp/nature/intro/gairaihou_hutai.pdf

外来種対策法に関連して、経済活動に利用されている昆虫類では、
特にハウス栽培の作物の授粉につかわれているセイヨウオオマル
ハナバチが問題になっています。
http://www003.upp.so-net.ne.jp/consecol/japanese/maruhana/index_maruhana.html

このセイヨウオオマルハナバチについては、外来種対策法における
特定外来生物の選定にあたっても、小グループを設けて討議がおこな
われています。
http://www.env.go.jp/nature/intro/sentei/index.html

山口さん:
> これはハマグリなどの問題と同じ構図です。近似した在来種を圧迫すること、
> そして生態系撹乱という観点から見ると環境問題ですが、環境省はこれら
> 経済種について踏み込む覚悟があるのか、見守りたい所です。

そうですね。見守りたいところです。長野県の亜高山帯から高山帯に
かけてのお花畑の花々には、在来のマルハナバチがさかんに訪花して
います。輸入されているセイヨウオオマルハナバチは、原産地のヨー
ロッパではスカンジナビアまで分布していますし、日本でも北海道を
中心に野生化の証拠がみつかっていますので、このまま放置すれば、
中部山岳のお花畑にもその影響が及ぶおそれがあると考えています。

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須賀 丈(SUKA Takeshi)
〒381-0075 長野市北郷2054-120
長野県環境保全研究所(飯綱庁舎)
自然環境チーム 動植物生態グループ
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E-mail: suka-takeshi@pref.nagano.jp


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