[BlueSky:06295] Re: ハマグリ調査


[From] "Yamaguchi" [Date] Tue, 21 Dec 2004 08:55:04 +0900

葛貫さん、おはようございます、

> 文献で、時々チョウセンハマグリ(外洋性の海岸に生息する)の種
> 苗放流というのを目にしますが、ハマグリの仲間は浮遊幼生(プラ
> ンクトン)の時期を経て、干潟等に着底するのでしたよね。

2週間から3週間くらいの浮遊期間がありますが、これは判明して
いる範囲で、二枚貝としてごく平均的の長さです。卵や幼生の大きさも
含め、ごく初期の二枚貝の発生はほとんど同様です。

> プランクトンには国境はないので海流等の影響で、この3種が自然
> に日本沿岸の干潟に着底し交雑が起きる、そういう歴史を経てきて
> いるという可能性はないのかな、とちょっと思ったのですが、それ
> も、これからの調査で明らかになってくるのでしょうか。

これまで集めた表現型のデータから見ると、海流による幼生分散
のリンクも重要ですが、地域集団の遺伝的特性(形態、色彩、模様
の集団としての特性、なかには遺伝支配かどうか不明の部分を
含め)が見られます。温度環境の違いで成長も違うでしょうし、
日本の地質的な多様性を反映させて砂にも多様性があり、
背景色と貝殻の色の関係で地域選択が起こっているようでも
あります。とにかく、とても複雑なので、読み取りに苦労しています。

強い海流は幼生の運搬に関わるだけでなく、バリヤーにもなっている
ようです。

まだ確定していないので述べるのを控えましたが、西表島に
残存していて、かつては沖縄本島にも分布していた南方系の
ハマグリ属の一種がいます。これと東南アジアの別の1種と
がそれぞれチョウセンハマグリとハマグリにとてもよく似ている
ので、熱帯原産と見られるこの属の貝が日本沿岸と大陸沿岸
でそれぞれ分化してきた道筋が読めるようにしたいものと考えて
いるところです。沖縄本島の集団は地域絶滅したと考えられます。

> シナハマグリ、チョウセンハマグリの稚貝を、内湾域の干潟に播い
> てしまっていると、こういう実態があるか、明らかにするのも難し
> くなってしまうのかな。

在来種であるチョウセンハマグリの外海に面した砂浜の生息域に
内湾性のハマグリを放流したケースがあちこちにあります。
ハマグリとチョウセンハマグリは生息場所が分かれていますが、
場所によって重複しているので、自然交雑もありえるだろうと
見ています。大量に異種を放流した場合の交雑はわりあい
実証、検討しやすいテーマでしょう。

> それにしても、スポンサーなしで、広域に渡る調査を実施するのは
> 大変ですね。時々、山口さんのサイトの元気な掲示板、拝見してい
> るのですが、各地に協力者がでてきてくれるといいですね。

インターネット時代の強みは、全国からの現地情報が入ることと
応援してくださる協力者が見つかることです。

山口正士
903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
琉球大学理学部海洋自然科学科




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