[BlueSky:06280] サンゴ礁の保全


[From] "Yamaguchi" [Date] Sat, 18 Dec 2004 09:14:03 +0900

葛貫さん、おはようございます。

> 立地条件の違いのようなものもあるのかもしれませんが。

欧米の科学的合理性文化と日本の「目の前のことを何とかするだけ」
文化との差異でしょうね。不幸にも日本のサンゴ礁では病気とは別の
要因でサンゴの大量死が続いています。その裏に沿岸汚染が絡んで
いることが十分考えられますが、直接的な因果関係が明白に示されて
いないこと、とにかく大量死をどうにかしたいが(昔のように情報の
ふたができないので)効果的な対策が見えないことなどから、水質
管理よりも何かやっている姿が見えるような対症療法事業と調査研究
に走るのでしょう。根本的な問題意識と、仮説検証のために腰をすえた
調査研究がされにくいのは(成果がすぐに出ないので)どこでも同じ
ですが、日本では特にお金を支配している連中が短期(同じ職務に
留まる期間)ですので、タイムリミットが短いようです。

> 山口さんが感じていらっしゃる「ろくでもないことが進行する予感」
> が現実のものにならないようにするためには、どんなアプローチの
> 仕方があると思われますか?

お金の流れ方とその管理システムにおける構造的な問題ですから
根本から見直す必要があるのでしょうが、次第に透明性が要求され
るようになっていますので、事業の結果があからさまに見えるように
なって、改善されて行くでしょう。しかし、役人の組織にはアリバイ
工作の天才たちが多いので、どうかな。結果の分析や評価ができる
専門家たちの多くが体制に取り込まれているし、まだまだ時間が
かかるかもしれません。

> 何処が主体だったら、山口さん、保全事業のアドバイザーになって
> 下さるんだろう? なんて、ふと思いました。もったいないなぁ〜。

主体が必要であるが、それが裸の王様になっているジレンマですね。
役人たちが、自分で発案して獲得した事業予算は自分のオカネで
あるような錯覚を持たないこと、発案から獲得するに当たっての十分な
勉強、情報収集、専門家との意見交換などをすること(後付の専門家
検討会議みたいな事業が走り出してからの権威付けやアリバイ工作
をやらないこと)ですか。学会の権威の先生たちが、ろくに勉強もせず
役人を動かしてろくでもない事業を立ち上げさせたりするのもストップ
させるべきですね(これは過去に多かったようですが)。

個人的に経験した具体例でいうと、県に中央から出向していたエラ
い役職の方が、オニヒトデ問題対策に天敵のホラガイを養殖して
放流する事業を立ち上げたいと考えて、そのための予算をつけるから
仕事をして欲しいと持ちかけられたことがありました。

本人はこの方面にど素人さんの技術官僚ですが、数年間の出向中に
何か実績を残したい、地元に貢献しておきたいという善意からでしょう。
この事業を立ち上げても、所期の効果が期待できないし、学術的な
意味も弱いので、理由を詳しく説明してお断りしました。後から聞いた
話では、その後、私より役人にフレンドリーな先生に持ちかけてOK
させ、その先生はもちろん自分ではそのような仕事はできないから
若手の先生に押し付けたが、結局そこで断られてストップだった
そうです。オカネをもらったら勝ちで、使ったあとはアリバイ工作する
という古き良き時代のお話でした。

山口正士
903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
琉球大学理学部海洋自然科学科
TEL: 098-895-8561




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