[BlueSky:06185] Re: 遺伝子と選別教育


[From] "IWAO, Keisuke" [Date] Wed, 13 Oct 2004 11:49:12 +0900

みなさん、こんにちは、巖です。

核心部分についてコメントする元気がないので、
遺伝子に関して些末なことだけ少々。

genngorouさんが[BlueSky:06182]に書きました:
>私、最初、大塚さんがおっしゃっていた、
>−−−−−−−−−−−−−
> 表現型のばらつき = 遺伝子型のばらつき + 環境のばらつき   (1)
>と分割した時に、遺伝率=遺伝子型のばらつき÷表現型のばらつき
> で表されます。
>−−−−−−−−−−−−−
>を読み、遺伝子解析して、適した環境を整えれば”表現型のばらつき”
>が少なくなるので、分母が小さくなり、遺伝率も高まるなどとも考えまし
>た。・・・しかし、今は、もしかすると、私が分かるような、そんな分数レベ
>ルの話しではないような気がしてきています。

遺伝率というのは、単語としては非常にわかりやすいような印象を与えるのですが、
実感としてうまく把握するのが難しい概念だと思うのです。上記に引用された大塚さ
んの式を見ると明らかなのですが、「ばらつき」についての計算ですから、遺伝率は
特定の「集団」についてのみ定義できる値です。つまり、

 ある特定の環境における
 ある特定の構成員からなる集団

についてのみ、遺伝率は計算できるはずです。

当然、構成員が変われば遺伝率の値は変わります。
当然、環境が変われば遺伝率の値は変わります。
上記ゲンゴロウさんが書かれるとおり、環境を整える(環境のばらつきを小さくする
)と遺伝率は上昇するでしょう。でもそれは計算値が上昇しただけで、べつになにか
が変わったわけではないでしょう。

まぁ、「○×の遺伝率がxxだった」という表現は、いくつかの集団で求めた値がだい
たいそのxxの近辺だったということでしょうから別に間違いではないのですが、どの
程度その数字を信用していいのか、なんとなくしっくりしない気がします。


genngorouさんが[BlueSky:06182]に書きました:
>人間の能力についてヒトゲノムで求めようとしても、出来ないのではな
>いかと。。。ヒトゲノムと成人した人間の能力との間の関係には、法則
>性とか、普遍性などは、実は、まったくないのかもしれません。
>
>人の能力の発現には、人間という実にややこしい存在が常に影響を
>与え続けているので、ヒトゲノムを解析した結果などは、言ってしまえ
>ば、時間が経ち、人間が成長するほどに、人間の想いというものに大
>きく影響を受けてメチャクチャになるので、結果的には、まったく役に
>立たない可能性があるかもしれません。

前述の『ゲノムが語る23の物語』(リドレー、紀伊國屋書店)に書かれているのです
が、意外なことに遺伝子の影響というのは、成長するに従って表面化するのだそうで
す。

子供の頃は、母親の胎内環境や食事、家庭環境など多くの環境影響下にある(つまり
環境のばらつきが大きい?)ので遺伝子の効果はまだ低めなのだけど、成長するに従
ってそうした環境の影響を脱し、本来の、つまり遺伝子の効果がより表面に出てくる、
のだそうです。だから、知能の遺伝率の値は年少時より成長後の方が大きくなる、と。

へぇー、というだけのことですけど。



------------------
ところで、
いろいろお考えはあるでしょうが、
「煽りは無視する」
というネットの基本を守った方が
MLの雰囲気を良好に保てるのではないでしょうか。


==================================
巖 圭介(いわおけいすけ)
桃山学院大学社会学部
iwao@andrew.ac.jp
http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/iwao/


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。