[BlueSky:06176] Re: 遺伝子と選別教育:遺伝子選抜は機能しない


[From] "ICHINOSE,Takeshi" [Date] Sun, 10 Oct 2004 21:54:12 +0900

 神戸市の一ノ瀬と申します。

 このところ、みなさんの「遺伝子と選別教育」に関するご意見を読んでおりま
した。しかし、議論が錯綜していてどこにコメントすべきかはっきりしないの
で、とりあえず、ゲンゴロウさんの発言にくっつけます。

 本件は、選別教育の是非と、それを遺伝子解析を利用して進めることの是非、
の2つの論点についての評価が絡まって、非常にわかりにくく難しい話になって
います。この2つを、分けて議論することはできないでしょうか?
 すくなくとも、後者の遺伝子選抜の是非については、大塚さん[6157]のご意見
で、”機能しない”という結論が定まったように思われます。いかがでしょうか?


”遺伝子解析”と聞かされると、何かすごい魔法のようなことができるのではない
かと思ってしまいますが、大塚さんが指摘している通り、人間の知的能力の選別
に利用することなど、現状では”科学的”のレベルに達していないと思います。

「遺伝情報が解析され、持って生まれた能力がわかる時代になってきました。
(中略)いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子どもの遺伝情報に見
合った教育をしていく形になっていきますよ」(江崎玲於奈)

という様なことをノーベル賞学者が発言すものですから、一層、そういうことが
できるのだと思いこんでしまいますが、この江崎発言は誤りです。遺伝子研究に
関する彼の無知を露呈していて、同じ物理系の教育を受けた一人として、大変に
残念に思います。

 数年ほど前に、人間の全遺伝子配列が解読されて話題になりました。上記の江
崎発言はそのことを念頭に置いたものと思われます。
 しかし、それは、DNAを構成する塩基の配列が分かったと言うだけのこと
で、その配列がどういう機能を果たすのかは全く分かっていない。この機能の解
明こそがもっとも困難で、かつ重要な作業ですが、これは緒についたばかり。少
なくとも、全塩基配列の解読などとは比較にならないほどの時間と労力を要する
と言われています。しかも、個々の機能が解明できたとして、それらが人間の人
格や知性の形成にどのように寄与するか、という更に別の、更に複雑な問題が
残って、これはどう解決したらよいのかすら分かっていない。

 こんな状況で遺伝情報を選別教育に使うなど、ニセ科学、としか言いようがな
い。例の、”マイナスイオンで血液さらさら”というインチキと同レベルだと思い
ます。

 ただし、”遺伝子”を外した、”選抜教育”そのものについては、私は必ずしも反
対ではありません。
 少なくとも、大学以上の高等教育においては、”その専門分野に進むレベルに
達している者のみを選抜する”態度は必要でしょう。その専門分野における知識
が、必要なレベルに達していないものは、落第させるべきです。無論、遺伝子に
代表されるような潜在能力は、考慮する必要がありません。測る方法がないので
すから。




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