[BlueSky:06164] Re: 06160 あなた(私)は何も分かっていない


[From] "荻野 行雄" [Date] Tue, 5 Oct 2004 22:37:11 +0900

ゲンゴロウさん
>香山リカさんの職業から言えば、そういう存在を出現させること
>で、自分の存在感もハッキリしてきますので、必然的に、そうい
>った顕著な区別(差別化)を行ってしまうのでしょう。
>その区別(差別化)は学問上は、いいのですが、それに対して、
>病的なイメージを与えているとすれば、どうかな?と、私は思い
>ます。脳の個性、脳の傾向と考えたほうがいいと思います。

 この辺り、「何を持って病気と判断するか」というような
問題は、確かに微妙ですが、香山氏が指摘しているのは、
個性の問題ではありません。
 具体例として、示されているのは、
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(p52)
 女性雑誌の編集に長い間携わってきた編集者に尋ねたところ、
今の読者が求めているのはこの(矢田亜希子や伊東美咲に
代表されるような)「女の子らしさ」と「わかりやすさ」
だけなのだそうだ。少しでも個性的なモデルやタレントが登場すると、
「自分には関係ない」と読者は興味を持ってくれない。
 (中略)
「ちょっと社会的な活動なんかしているタレントや
中性的なイメージのモデルを出すと、反発がすごいんですよ。
こわい、ついていけない、って。そしてきれいなモデルの
実用記事のほかは、ペットとグルメとリゾートの記事だけ。
つまり、見た瞬間に“かわいーい”“食べたーい”“行きたーい”
と反応できるようなものしか、通用しません。じっくり読んで
考えてもらうような記事は、どの雑誌にももう載っていませんよ」

(p74)
・・ときどき学生から言われることがある。
「二年前にレポート出したら、先生に“間違ってる”と書かれて、
見捨てられてんだな、嫌われてんだな、ってわかりました。
あれから自信なくしちゃって、ゼミもやめたんですよ」
 もちろん、私はその学生を「嫌い」でもなければ、逆に
「好き」というわけでもないのだが、・・

(p75)
 ある新聞社の社会部記者は、「最近は記事が作りにくい」と
こんなエピソードを語ってくれた。「拉致の問題などデリケートな
社会問題を取り上げるたびに、読者からの感想が寄せられる。
それはありがたいのだが、最近は非常に感情的で短絡的な抗議が
多くなる傾向が著しい。たとえば、関係者が涙を流している写真
を載せたりすると、記事の内容にはほとんど触れずに“泣かせるな”
“あの涙をなんだと思っているのだ”といったお叱りが殺到する」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 以上のような話で、社会全体として、病的傾向が
出てきているのではないかという議論です。
「<私>の愛国心」という題は、
「私」=個人 の病的傾向を原因にして、今 
「公」の愛国心の問題が議論されているのではないか、という
意味のようです。個人の問題のはずか全体の問題になっている。
 社会全体が、病的個人の束になっているイメージでしょうか。

 この本では、過去にもあったことに名前を付け区別して
議論しているわけではなくて、社会全体に、新しい問題が
降りかかってきているということが述べられていると
私は理解しました。



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