[BlueSky:06119] Re: 遺伝子と選別教育


[From] MISONOU [Date] Fri, 17 Sep 2004 14:38:35 +0900

みそのうです

#わたしも反応しました

"IWAO, Keisuke" <iwao@andrew.ac.jp> wrote:

> > 「遺伝情報が解析され、持って生まれた能力がわかる時代になっ
> >てきました。(中略)いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞ
> >れの子どもの遺伝情報に見合った教育をしていく形になっていきま
> >すよ」(『機会不平等』文春文庫)後略・・・・・

非常にナイーブな科学万能主義的発言ですが,
正鵠の羽くらいは掠っていますね.
個人の能力に差があるというのは確かです.
そして,その差を作る原因の幾ばくかは
あきらかに遺伝的要因によります.
人間の能力のどのような側面がどれだけ遺伝的に決まっているのか
を調べる人類行動遺伝学の分野は,長足の進歩を遂げています.
#しかし,日本には専門家が少ない..
詳しくは
安藤寿康「心はどのように遺伝するか」講談社ブルーバックスB1306(2000)
などを.

> 知能を向上させる遺伝子などみつかっていません。

#これは,「知能」の定義の問題でもあるのですが
巌さんが指摘されているように,
このような形質は一遺伝子による支配を受けることはまずなく,
多数の遺伝子が関わるポリジーンモデルが考えられています.
で,1997年に知能に関わるポリジーンのうちの一つが同定されたというのです.
IQが高い集団を調べると,第六染色体上のIGF2R遺伝子の多型のうち
タイプ5を持つ人間が有意に多いということから結論づけられました.
ただしこれは一対一対応ではなく,<必要条件でも十分条件でもない
あくまで統計的に有意であるということですが,
すくなくともこの遺伝子のタイプはIQに関わっているとは言えそうです.
また,同書では知能の遺伝率(遺伝によって決まる割合)を0.52としています.
#つまり,半分は遺伝で決まるということです

#さて,このように書くと
#わたしも単純な遺伝子還元論者に見られそうですが..
ここでヒューム,D.の格言です.
「事実命題から価値命題を引き出すことはできない」

知能に限らず,さまざまな形質が遺伝子の支配をある程度受けるからといって
個人が遺伝子によって差別されるなどというのは
現代民主主義社会においてはとうてい許されるものではありません.
人間は「能力においては不平等でも,権利においては平等」であるべきです.

> それにしても、教育改革がこうした人々の手にゆだねられているというのは
> まったく空恐ろしいことです。

このような恐ろしいことを避けるためには,
やはり社会における知識の共有の度合いを高めて
構成員がそれぞれの意見を持って議論を交わしていくことが
必要だろうと強く思います.

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山梨大工学部循環システム
みそのう



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