こんにちは、葛貫です。
沖縄の泡瀬干潟近辺の「藻場造成事業」は、全国的に実施されてい
る「藻場造成事業」とは、背景が異なるように思われるので、後者
について、文献から得た断片的な知識ですが、書いてみます。
山陰地方を除く、日本のほとんどの沿岸では、「磯焼け(藻場が衰
退し、海藻群落がなくなった場所に無節サンゴ藻が付着して、生物
相が変化する)」現象が見られるそうです。
藻場は、磯根資源(アワビ、ウニ、サザエ等)の漁場であり、いろ
いろな魚介類の産卵場、幼魚の育成場にもなっていて、磯焼けとい
うのは、水産関係者にとっては、海の砂漠化現象みたいなものにあ
たるようなイメージを私は持っています。(無節サンゴ藻群落に適
応した生物が生息するようになるのでしょうから、砂漠化とは、ち
ょっと違いますね(^^; )。
磯焼け、藻場造成については、下記のサイト等が参考になると思い
ます。
「水産行政キーワード解説 藻場造成 海のゆりかごを取り戻す」
http://www.pref.mie.jp/ONOSYO/HP/kannaigaikyo/suisan/keyword/moba.html
このサイトには、「磯焼けの原因としては、1)水温、栄養素など
の海況変動、2)台風、淡水の大量流入などの一時的な環境変化、
3)植食動物による摂食、4)サンゴ藻などによる着生阻害、5)過
剰な収穫、6)海水汚濁による透明度の悪化、7)土砂の流入、8)
工場からの排水、9)生活排水などからの界面活性剤の流入などが
考えられますが、まだ分からない点が多く、一つだけの原因ではな
く、これらのものが複合的に作用しあっていると考えられます。」
と書かれていました。
各地の磯焼け状況調査の結果や、なかなか上手くいかない藻場造成
事業の経過を読んできて、上記の1〜9までの磯焼けの原因のうち、
人為的に改善できるのはどれだろう、そのためには、どれだけの
エネルギーを投入しなければならないのだろう等々、疑問に思って
いたので、山口さんに質問してみました。
山口さんwrote:
> 経験からのヤマカンですが、藻場はできるべくしてできる場所、環境
> のもとにできていて、動的平衡状態で存在する、という認識です。
>
> 海岸地形を変化させると流動、波浪条件の変化を伴って堆積環境が
> 大きく変わり、藻場形成場がシフトすると見ています。無理やり移植
> しても駄目なんです。
確かに。
磯焼け現象は、どう折り合いをつけていくのか、適切なケアをした
り、従来できた活動を諦めるなりして、一生付き合っていかなけれ
ばならない慢性病のようなものなのだと思います。
文字通り水面下で起こっていることなので、陸域よりもトレースし
ていくのは困難だと思うのですが、陸域において澤口さんが考えら
れている【5853】のような取り組みが可能なのかなぁ、と思います。
中澤さん、http://future.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/NWS6_Araki.pdf
読みました。
いろいろな立場の人が、どのような思いをもって、泡瀬干潟の問題
にかかわり、思いの部分でどのような変遷を辿ったのかが、垣間見
えて面白かったです。こういうアプローチの仕方の研究がが増えて、
知られるようになると、環境・開発・その土地の資源の持続的な利
用に関して、今迄とは、異なるチェック点が世の中に浸透していく
といいな、と思いました。
【5755】でご紹介した『多摩美術大学 情報デザイン学科 2003年度
卒業研究制作展』の中に、協調のプロセスの可視化と活用方法を
テーマに、3人の学生さん達が開発した「re.trace」というソフト
がありました。
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re.traceは、 re.box, re.table, re.boardで構成されています。
個人がre.boxを持ち、スケッチやアイデアを入れます。re.boxでと
り込んだスケッチやアイデアはre.table上に移動し、話し合いの中
でスケッチの関係性や、新しく生まれたアイデアの関係性をえがい
ていきます。re.table上で描かれた話し合いのかたちは、re.board
上に時系列で表示されます。グループで内容を捉え名前をつけ、新
たなかたちを描き、自分達の考えの変遷を見直していきます。
多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科 卒業研究制作作品集
2003 p.054-055 より
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泡瀬干潟のような問題も、かかわる人達が、自分自身やその問題に
かかわる人達が持っているスケッチ(心象風景?)やアイデアの変
遷、位置関係のようなものをこのようなかたちで可視化して認識で
きたら、もう少し整理されたかたちで、話し合いができるのかもと
思いました(話し合うため、同じテーブルについてもらうことが、
まずクリアしなければならない課題になってしまうのかな)。
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