[BlueSky: 5782] Re:5780 食と農シンポジウム


[From] "IWAO, Keisuke" [Date] Thu, 12 Feb 2004 13:09:40 +0900

こんにちは、巖です。

2月8日の食と農シンポ、出席しました。

家が近所なのでこれはラッキーと思い楽しみにしていたのですが、子供の幼稚園の行
事と重なり、横山さんの背景説明は聴けず、中澤さんのお話から聴くことができまし
た。Bluesky常連の生(なま)姿を拝見でき、なんとなくうれしかったです。DGC基礎
研による緑化樹剪定枝葉堆肥で育ったサニーレタスも一鉢いただいてしまいましたし。

シンポで印象に残ったのは、中澤さんのお話で、問題にしているリスクは「病気や死
亡」だけではなく、「安心が失われること」もまたリスクなのだということでした。
「BSEについての日米の議論の食い違いの原因の一つはここにあると思う。」という
説明で腑に落ちました。

その「安心」を確保するために生産者、流通・販売者などになにができるか、という
点について他の講演者の話が続きました。情報開示というのがその中心にあるようで
したが、やはり最後に残る印象としては、どんなにいろいろやっても完全な安心は難
しいだろうなぁということでした。

安心を与えるのは、結局のところ科学的データや情報よりも、人を信頼できるかどう
かに行き着くような気がしました。人を信頼するには、やはり直接会って顔を見て言
葉を交わして直感する必要があるわけで、それができないときの次善の策としてイン
ターネットなどに公開された生情報を得て判断する。それが、主催者「生活者のため
の食の安心協議会」の目指すものなのでしょうね。


もうひとつおもしろいと思ったのは、パネリストの一人で京都市の消費生活アドバイ
ザーの米林さんが言われたことで、いろいろな苦情が持ち込まれる消費生活センター
だが、食の安全に関する問い合わせというのは、じつはほとんどない、ということで
した。BSEや鳥インフルエンザに関してもごく少数だと言うことでした。

これは、私が大学で講義をしていて学生のレポートなどから受ける印象とつながる気
がしました。つまり、問われれば食べ物のことが不安だ不安だと言うけれど、じつは
多くの人がそれほど気にはしていないし、不安を取り除くためになにか努力しようと
いう気もない。流行に乗って健康ものや有機ものに手を出すこともあるけれど、じつ
はどうでもいいと思っているのではないか、ということです。

だから、たとえばスーパーの野菜売り場で生産者の顔写真を出し生産履歴を公開して
みても、好意的に評価はされても売り上げにはつながらない、という結果になるので
はないか。知りたい人が知ることのできる仕組みができるのは大切なのだろうけど、
その成果はごく限られた人にしか意味を持たないかもしれない。

それはもちろん消費者各自の勝手であり、自分から本気で安心を求めない人にまでわ
ざわざ届けてやる必要もないのでしょう。しかし、現場で努力する人たちにとっては
がっかりする結末が待っている気がしてなりません。手間をかけて情報を記録・公開
しても、いいことは何もなかったということになりはしないか。


とりとめなく書きましたが、こんなふうにいろいろと考える材料を受け取ったシンポ
ジウムでした。もっと長時間あってもよかったなと思います。今後どんな展開を見せ
るのか楽しみです。

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巖 圭介(いわおけいすけ)
桃山学院大学社会学部
iwao@andrew.ac.jp
http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/iwao/


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