[BlueSky: 571] Re:536 農薬の安全性


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Tue, 24 Aug 1999 08:09:05 +0900

小宮です。

◯小宮
>効率良く食料を生産するためには、農薬は必要なものだと思います。
>問題は、農薬がどの程度人体に対して危険であるか、それと生産性
>を上げるために、必要以上の農薬を使用したり、環境に対して悪影響
>を与えるようなことをしていないか、ということだと思います。やはり
>正しい知識を持つことが大切なのでしょうね。

農薬がどのくらい危険かを考えてみました。

◯食品科学広報センター資料より
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    ・有害か無害かは量で決まる
  「毒」とは、健康に悪影響をおよぼす物質
のことで、「有害物質」ともいわれています。
しかしながら、この「毒」という言葉には、量
的な概念や毒性を発揮する条件などは、まった
く含まれていません。
 16世紀に、パラケルサスというスイスの医者
が、「すべてのものが毒である。なぜならば、
毒性のないものはないからである。それが有害
か無害かは、量で決まる」といっていますが、
これは今でも毒性学の基本になっています。つ
まり、どんなものでも、無条件で無害といえる
ものはないのです。
 毒性学というのは、すべての物質には毒性と
しての側面があるということを前提として、有
害な作用が発現する条件や作用メカニズムを解
明する研究分野です。食品の安全性を確認する
ためには、実験動物を用いて各種の毒性試験を
行います。その結果、ある量を超えて食品中に
存在するときに、有害な作用をもたらすけれど
も、ある量を超えていなければ有害ではないと
いう「有害度」と「量」の相関関係が明らかに
なります。
  例えば、身近な調味料である食塩でも、動
物実験によって有害作用が発現する量や致死量
が確認されています。
  すべての物質は潜在的になんらかの毒性を
有しているのですが、摂取量(暴露量)によっ
て、安全にも危険にもなるのです。したがっ
て、食品の安全性を評価する場合は、物質の毒
性と暴露量の両方を考えることが必要です。
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どんなものでも毒性があるので、農薬が残留している、という
ことだけを危険とするのは間違いで、その残留している量が問
題、ということです。例え天然のものでも山菜のワラビのプタ
キロサイドや魚の焼けこげのトリプP1、P2、それに、フキや
フキノトウにも発がん性物質が含まれているそうなので、農産
物に含まれる極めて 微量な化学合成物質について危惧する必要
はない、ということです。ただし、自然界にもともと存在して
いるものとくらべ、人工的に作り出された化学物質は、例え
微量でも人間の代謝機能がうまく働かないのではないか、とい
う疑問は残ります。環境ホルモンの例もあるし、無農薬の野菜
を使うことでアトピーが治ったという話もよく耳にします。

残留農薬の安全基準量は、ADI(一日摂取許容量)で設定される
そうです。ADIとは「人が一生涯にわたって毎日摂取し続けて
も、健康に影響をおよぼさないと判断される量」として、
「一日当たりの体重1kgに対するmg数(mg/体重kg/日)」
で表され、実験動物に毎日、生涯にわたって食べさせても、
何ら毒性変化も認められなかった投与量の上限x百分の一で求
められます。たとえ残留農薬が検出されたとしても、基準値
以内であれば問題にはならないそうです。


◯平成7年度残留農薬検査結果

[検査数/検出数/基準値を超える件数]
・基準値が設定されているもの
国産品[91,234/551(0.68%)/20(0.02%)]
輸入品[70,236/760(1.08%)/2(0.00%)]
合 計[161,960/1,311(0.81%)/22(0.01%)]
・基準値が設定されていないもの
国産品[41,610/285(0.69%)]
輸入品[51,287/184(0.36%)]
合 計[92,879/469(0.51%)]
・総合計
国産品[132,844/836(0.63%)]
輸入品[122,013/944(0.77%)]
合 計[254,857/1,780(0.70%)]

基準値を超えているものはもちろん廃棄されます。これを見る
限り、無農薬でなければ、国産品と輸入品でそれほど残留農薬
の量は違わないようです。ただし、検出される農薬の種類は異
なるようです。


◯洗浄・調理による残留農薬の減少減少率%)

農薬名 水洗 煮る 炒める 焼く 蒸す 漬ける
DDVP 67          
DMTP 46   21 65 71  
ESP 50          
PAP 37 51 37 31   11
PCNB         50 1)
TPN 63 99 89     78
イプロジオン 77 15 19   12 17
キノキサリン系 81          
ジメトエート 45          
スルフェン酸系 93          
ビンクロゾリン 18 51 47      
プロシミドン 48   56 66 0  
メソミル 15 2)         80 1)

注:供試作物は1)がハクサイ、2)がキャベツの他は果菜類
(トマト、ナス、ピーマン、キュウリ)
(植物防疫講座第2版−農薬・行政編より)

この資料から、野菜を水洗することで残留農薬の半分以上を
落とすことができるということが分ります。これはかなり大
きい比率といえるでしょう。

自分の感想としては、日本で流通している作物の残留農薬は
かなり低いので、無農薬栽培にかなりの負担がかかるのなら、
あえて無農薬栽培品だけしか要求しない、という必要はない
のではないか、といった所です。ただし、農薬、化学肥料の
使用は健康に関する影響だけでなく、土地の汚染や土壌の貧
困化も合わせて考えなくていけないでしょう。

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yuichiro komiya (小宮祐一郎)
e-mail:can32960@pop07.odn.ne.jp


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