[BlueSky: 5677] 先の土曜日に隣町の・・


[From] "荻野 行雄" [Date] Tue, 20 Jan 2004 21:51:47 +0900

 先の土曜日に隣町の、28歳のまだまだ可愛らしい女性のお宅に、
顔を出してきました。
 彼女は私が訪ねていくと、とても素敵な笑顔で迎えてくれるので、
恋人もいない独身男としては、クラクラのフニャフニャだったりします。


 彼女は、進行性の神経難病 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者で、
重度の身障者です。
車椅子に座り足で床を蹴って、室内であればなんとか移動できる状態で、
手も力を入れることは出来ずあまり動かせません。
話すことは不可能ではないのですが、発音がうまく出来ず
一言二言がようやくで、聞き取るのはかなり困難です。
 私は、4年ちょっと前に知人から個人的に頼まれ、彼女のパソコン関係の手伝いを
させていただくことになり、以来時々お宅にお邪魔しています。
その時点で発病後3年程とか。彼女の状態は当時からあまり変化していません。
この病気は年配者の発病が多く、若い患者は全国的にも珍しいようです。
 
 平成14年3月に、重度障害者用意思伝達装置の給付(給付補助限度額50万円)
を受け、日立製作所の「伝の心」を購入しました。
(ノートパソコン・伝の心ソフト・プリンター・タッチセンサー・汎用リモコン他付
属品
  一式50万円)
 http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/acce/products/body/denno_o/index.html

 この「伝の心」、ワンスイッチの操作で、文字入力から、Eメール・ホームページ
閲覧・
ポケベル呼出・リモコンを通してテレビ等家電の操作が出来るというもので、
販売業者は、とても使いやすいと説明していました。
 ところが購入してみると、文字入力のみであれば知らず、
受信メールにコメントをつけて返信する事など
不可能ではないかと思えるほど、メニュー構造が複雑で操作しにくく、
とても使いこなすことが出来ませんでした。
スイッチがなかなかしっくりこないという問題点もあります。

 何度となく日立に対してメニュー構造の改善を要望しましたが、
『「伝の心」は利益をあげている製品ではありません。
とても開発工数を掛けるわけにはいかず、
現在の「伝の心」のメールソフトの改良が精一杯です。』
 ということで、全面的な改変は出来ないようです。
もっとも、その要望内容を「発注」した場合いくらかかるかと聞いたら、
「1000万円程度」らしいのですが・・・

 平成14年10月に「宮崎県ALS患者・家族の集い」というのが開かれた際に
「意思伝達装置についての講演」もあるということだったので、
個人的な関係者として私も出席し、
 「販売店側は、操作が簡単で、何人も利用していると説明しているが、
実際の利用状況はどうなのか。活用できている患者がいるのに、自分は
操作できないと本人が思えば、余計な心理的プレッシャーを
与えることにもなるのではないか。」
という趣旨の発言をしました。
 ALS協会の 平山 宮崎支部長(患者) http://www.h2.dion.ne.jp/~makibo/
によれば、実際に活用できているのは、給付を受けた患者の2割程度
という話でした。

 結局実体としては、この給付事業に使われた税金の
8割近くは、無駄になってしまっているということらしい。
 メーカー・販売業者・給付事務担当の公務員、
みんな忙しそうに働いていますが、何のために、何をして忙しいのだろう。
税金の無駄遣いのため???
 みんな善意で、障害者の必要をそれで満たせると思っているのだろうけれど。

 現在私は、「ハーティー・ラダー」というソフトを「伝の心」のハードに
組み込んで使えるように、工夫しているところです。
 文字入力・Eメール機能があり、メニューの概要を視覚的に把握でき、
いずれも操作が簡単で完成度が高いと思います。
最近、ホームページ閲覧も出来るようになりました。
 ところでその優れものの「ハーティー・ラダー」、フリーソフトです。
http://www.try-net.or.jp/~takaki/hearty/index.html
 Windows95以上に対応、要するに、タダ同然の本体でOK。
 なぜそれは、障害者にとって使いやすい仕上がりなのか、
答えは簡単、開発者も障害者だから。

 スイッチをどう工夫し、電源の入・断を簡単に出来ないかなど、
問題山積ですが、ここで50万円あればねえ。

 先日彼女は、家計簿をつけてみたいといってましたが、
そのように、他のソフトも使えないかとなるとまた難しい。
ワンスイッチに対応したゲームソフトなどあることはあっても、
そのワンスイッチが、どのキーなのか、マウスなのか・・・
 オートスキャン・ワンスイッチ対応、それぞれのアプリに応じて、
有効な信号にスイッチ信号を読み替える機能つき、
なんていうメニューソフトがあればねえ・・。

 それにしてもIT技術って、何のための技術なんですかねえ。
本当に必要な人の役には、なかなかねえ。



 さて、自由に話すとはどういうことなんでしょうか。
人は、一人だけで話すことは出来ないのではないかなあ。

 行動の自由だって実際には、他人の作った服を着て、他人の作った車に乗り、
他人の作った道を交通ルールにのっとって走る程度のことではないか?
これは、私の自由なのか。自由って個人のものなんでしょうか。
 精神だけは自由なのか。しかしその精神を支える言葉は、
やはり周りとのやり取りのなかで磨かれるものでしょう。

 自由・平等・博愛 とか言われてもよく分からないけれど、
彼女の心の中にどんな言葉があるのか、ありえるのか、
私はそれを聞いてみたい。

  ● 
| 荻野 行雄 ogino.yukio@nifty.com
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