[BlueSky: 5661] Re:5660 気候変動と生物の絶滅


[From] "suka" [Date] Sun, 11 Jan 2004 14:05:44 +0900

葛貫さん
        須賀です。

ご返事ありがとうございます。

なるほど、葛貫さんは水産資源に関係したお仕事をなさっている
ので、それであのようなことにご関心をもたれたのですね。

わたしがふつうに思い浮かべる野生生物は、水産資源にくらべる
と、ひとが繁殖をコントロールできない(していない)ものの割合が
はるかに多いような気がします。

そうはいっても、人間の生活に関係がないわけではありません。

高山植物、高山蝶、ライチョウなどにしても、信州の観光地や山岳
リゾートとしてのイメージに多大な貢献をしてくれているはずです。
観光資源として信州の自然のブランドイメージを高めることを通じて、
経済活動に寄与してくれている面があるわけです。これらが絶滅
するとなると、地域の生活にも確実に影響がおよぶと思います。

東南アジアで調査にかかわっている熱帯雨林の野生のミツバチも、
(多くの植物の受粉に役立っているだけでなく)その巣からとった
蜂蜜が地元のひとたちに利用されています。スラウェシ島でインド
ネシアの共同研究者が村のひとたちにききとり調査をしたところ、
異なった言語を話す人たちのあいだに、2種類いる野生ミツバチ
の種を区別する別の単語がそれぞれあることがわかりました。
これらの巣からとられた蜂蜜が、路傍や市場などでガラス瓶に
入れられた状態で売られています。

マレーシアのサバ州で、薬草など地元の有用植物をあつめた植物
園をみました。これらはおそらく教育・研究用としてあつめられた
ものでしょう。自生地で絶滅したときなど、いざというときのための
遺伝資源としての意味もあるのかもしれませんね。もっとも、これ
らの植物も、地元のひとたちが生活のなかで利用できるのが本来
の姿だと思います。植物園での遺伝資源の保存と並行して、やはり
自生地の保全をすすめることが大事だと思います。

葛貫さんのおたよりを拝読しているうちに、こういう例もあるのを
思い出しました。信州の里山にいるチョウのなかには、絶滅危惧種
がたくさんあります。ひとの生業の形態がかわり、土地利用のあり
方がかわって、生息場所が失われてきたことが、このように絶滅
が危惧される状態になったことの主な原因と考えられています。
今、地元のひとたちのあいだに、こうしたチョウのすめる環境を
とりもどそうという活動がはじまっています。アマチュアのチョウの
研究家の方たちが協力して、室内で繁殖させ、卵を育てて野外に
放すといった努力がつづけられています。これは(研究・教育・
美意識やアメニティーなどの側面を別にすれば)必ずしもひとの
生活の役に立つ生物とはいえないかもしれませんが、トキの
復活のための活動に似た例として考えることができそうですね。

いずれにしてもこういう活動の一環として、地球温暖化対策にも
より真剣にとりくまなければならない状況になってきていること
を感じさせてくれたという意味で、さきのネイチャーの論文には
つよい興味をかきたてられました。

> それでも、豪快に燃え上がる火を前にすると、絶滅が危惧される
> 「火祭り」の意味について、また、何をとっておきたい、次の世代
> につなぎたいと望むのか、考えさせられます。

そうですね。

それではまた。

         須賀 丈


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