[BlueSky: 557] Re:551 遺伝子組み替えと農薬


[From] yuichiro komiya [Date] Mon, 23 Aug 1999 16:43:27 +0900

こんにちは。小宮です。

◯横山さん
> 現に(ちょっと古い記憶ですが),最初に商業用組換え植
>物(フレイバーセイバー トマト)を作ったカルジーン社は,
>今後普及にはコストがかかりすぎる判断して組換えビジネス
>から撤退したと思います。詳しい方いたらフォローして下さ
>い。

フレイバーセイバー トマトは、まだ生産されているようです
(カルジーン社が関与しているかどうかは不明)。

http://www.mhw.go.jp/search/docj/other/houdou/0910/h1022-1.html

「97/10/22 食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会報告」
平成9年10月22日 生活衛生局食品保健課食品化学課
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麒麟麦酒株式会社から申請されたトマトに係る「組み替えDNA
技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に適合している
ことの確認を行うことの可否について

麒麟麦酒株式会社から申請されたトマト(開発者:米国Calgene
社、FLAVRSAVRTMトマト)について「組み換えDNA技術応用
食品・食品添加物の安全性評価指針」(以下指針という。)に適
合した安全性評価がなされているか否かについて検討した。


1 申請された食品の概要

フレーバーセーバートマト(以下「FLAVRSAVRTM トマト」
という。)は、アンチセンス・ポリガラクチュロナーゼ遺伝子
(以下「FLAVRSAVRTM遺伝子」という。)により、果実の
軟化速度を遅延させることにより収穫後の日持ち性を良くし、
果実の腐敗及び収穫後のトマトの病気の発生が低減される。
FLAVRSAVRTMトマトには、トマト果実の細胞壁に存在する
ペクチンの可溶化とそれに伴う果実の軟化をもたらす酵素であ
るポリガラクチュロナーゼ(Polygalacturonase:以下「PG」
という)の発現を抑制するために、それをコードする遺伝子と
相補的な塩基配列を持つFLAVRSAVRTM遺伝子が導入されて
いる。また、選択マーカー遺伝子として、Escherichia coli(以
下「E.coli」という。)に由来しAPH(3')II(NPTII)蛋白質を発
現するカナマイシン抵抗性遺伝子(以下、「kanr遺伝子(
nptII遺伝子)」という。)が導入されている。


2 指針の適用の可否について

FLAVRSAVRTMトマトの指針適用の可否については、指針の
第1章第3(1)〜(4)に従って申請資料の検討を行った。

(1)遺伝的素材に関する資料

宿主はトマトである。遺伝子供与体は、栽培トマト
(L.esculentum cv Caligrande cv Campbell33)に由来する。この
食品は、アンチセンス方式による遺伝子組み換えであるため、
組み換え体におけるPGの発現量は0.01μmol/min・mg protein
であり、宿主トマトのそれに比較して少ない。また、kanr
遺伝子により発現するAPH(3')II蛋白質の発現量は、1.75μg/g
以下である。

(2)広範囲なヒトの安全な食経験に関する資料

宿主である栽培トマトはLycopersicon esculentum Millに属し、
食品として古くから利用されている作物であり、広範囲で安全
な人の食経験を有する。kanr遺伝子の供与体であるE.coliは、
ヒトの直接の食物源ではないが、環境中に広く分布しており、
kanr遺伝子(nptII遺伝子)の発現蛋白質であるるAPH(3')II
(NPTII)蛋白質は、微生物界に幅広く分布している。

(3)食品の構成成分等に関する資料

FLAVRSAVRTM、トマトは、主要構成成分(蛋白質、ビタ
ミン、ミネラル)及び毒性物質(トマチン、ソラニン、チャ
コニン)に関し、既存のトマトと同等であった。

(4)既存種と新品種の使用方法の相違に関する資料

FLAVRSAVRTMトマトの食品としての使用方法は既存のト
マトと同等である。なお、既存のトマトとの相違は果実の軟
化をもたらすPGの発現をコードする遺伝子のアンチセンス
遺伝子の発現により、収穫後の日持ち性が向上し、果実の腐
敗及び収穫後の病気の発生を低減させる点である。

(5)指針適用の可否に関する結論

申請に際して提出された資料に関する以上の知見からすると、
FLAVRSAVRTMトマトは既存のトマトと同等と見なし得る
ものと考えられ、指針の適用範囲内であると判断できる。

ー中略.遺伝子マーカーの胃液での消化報告、ラットでの毒性
テスト資料等ー

申請に際して提出された資料に関する以上の知見から、
FLAVRSAVRTMトマトは、指針 に沿って安全性評価が行わ
れていると判断した。
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フレーバーセーバートマトを日本でも表示対象にするかどうか
が、食品部門懇談会で議論されていました。

平成10年12月17日 第13回食品表示問題懇談会遺伝子組換え
食品部会議事録

http://www.maff.go.jp/work/990128-02.htm


現在世界で商業栽培されている主な組換え農作物には,次のよ
うなものがあるそうです。

農作物(開発国.安全性確認年)
・日持ちの良いトマト(米.1994)
・ペクチンを多く含むトマト(米.1995)
・オレイン酸を多く作るダイズ(米.1997)
・除草剤の影響を受けないダイズ(米.1994)
・除草剤の影響を受けないナタネ(カナダ.1994)
・ラウリン酸を作るナタネ(米.1994)
・害虫に強いジヤガイモ(米.1994)
・ウイルス病に強いスクワッシュ(米.1994)
・除草剤の影響を受けないトウモロコシ(米.1995)
・害虫に強いトウモロコシ(米.1995)
・除草剤の影響を受けないワタ(米.1994)
・害虫に強いワタ(米・オーストラリア.1995)
・色変わりカーネーション(オーストラリア.1996)
・ウイルス病に強いパパイヤ(米.1997)

農林水産省 農林水産技術会議事務局 先端産業技術研究課
http://ss.s.affrc.go.jp/docs/sentan/pa/mokuji.htm


◯葛貫 さん
> まず、農薬が不要な遺伝子組み替え植物の種子を作る。

完全ではありませんが、特定の害虫に対しての農薬が不要
な作物(BT遺伝子を組み込んだ作物)は既に生産されていま
す。また、特定の除草剤の影響を受けない作物も生産され
ていて、除草剤とセットになって売られています。当然特
許は押さえられていますので、毎年特許使用量を払う必要
があります。ちなみにこの除草剤(ラウンドアップ/モンサン
ト社)は、世界で一番売れている農薬です。



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