[BlueSky: 5554] Re:5553 薔薇の名前


[From] "Y.kuzunuki" [Date] Fri, 28 Nov 2003 16:07:52 +0900

須賀さん、こんにちは、葛貫です。

> ちょっと考えすぎでしたらおゆるしください。

私は、あの時点では「薔薇の名前」は映画を見ただけで、エーコに
ついての知識はなく、記号論についても、グラフィックデザインを
勉強している娘からの聞きかじった程度した。無責任に思い付きで
「十牛図」を持ち出して、須賀さんのお話の腰を折ってしまったの
ですから、御自身の文脈と違うと、はっきり言って戴けて、よかっ
たです。

言訳なのですが、映画でみた「薔薇の名前」の舞台は、ラテン語等、
巷で使われていない言語で書かれた本を一括管理し、役柄に応じて、
必要と思われる書物を読むことを許可する、という知の管理をして
きた中世のキリスト教会。貨幣経済が発展し、土着の領主や教会と
農民という関係からはずれ浮遊し始めた人々によって都市がつられ、
俗語で新しい文化が語られるようになってきた。教会の権威が揺ら
ぎはじめ、また、教会が蓄積してきた「知」も貨幣経済の対象とな
る可能性が出てきた、という背景のもとでのお話だったので、
この僧院における「索引づくり」のようなことに少し関わってきて、
情報公開の仕方について、思いを巡らせていた時期だったので、
自分勝手な方向に話をとばしてしまいました。

ただ、ゲンゴロウさんが紹介して下さった「理解の蜃気楼(ミラー
ジュ)」や、須賀さんが紹介して下さった山鳥重さんの本に基づく
心象の話等を通して、「ことばと現場」に関する話のアウトライン
は、もう済んでいると思っていましたので、別の切り口でみたかっ
たのだということも、わかって戴けると、ありがたいです。


あのあと気になって、「薔薇の名前ってどんな本?」と連れ合いに
聞いたら、「う〜ん、pedantic(衒学的)な本」と言いながら、
ニッと(君に読みこなせるかいなというニュアンスで)笑ったので、
「よ〜し、読んでやろうじゃん」と、かなり背伸びして読みました。

件の馬の話は、どこに出てくるんだろうと思っていたら、物語の導
入部にあったので、へっ?ここで読むのやめちゃったの?と、目が
点になりつつ、ある場に残された「痕跡」を見出し“a horse”で
はなく、“the horse”へと詰めてゆく、これはフィールドワーク
のエッセンスだなと思い、須賀さんの話の腰を折ってしまって、
悪かったなと、改めて思った次第です。ごめんなさい。

【5536】で index に「指標」という語をあてましたが、「痕跡」
の方が、適切な語だったんだなと、本を読んで気付きました。
変な横槍を入れなかったら、面白いお話がうかがえただろうにと、
惜しまれてなりません。

> > 「およそ語り手という者は自分の作品の解釈を提供すべきではない。
> > 後略

ウンベルト・エーコの「覚書」のなかの一節です。
須賀さんは、御存知だったのでしょうか。

エーコは、無際限な読み方をされることを避けるため、「以前に出
くわした一つ以上のテクストの知識に依存したテクストを利用する」
という方法をとったそうです。ただ、エーコが想定する「以前に出
くわした一つ以上のテクストの知識」を持っていなかったり、思い
もしないテクストの知識と結び付けられてしまったら、意味がない
ということですね(^^;;。

これは、話の流れで、偶然、思い付いたて引用しただけで、他意は
ないこと、ご理解下さい。

一連の本を読むきっかけが得られたこと、須賀さんに感謝しています。
無礼に感じられたところがあったとしたら、お赦しください。


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