[BlueSky: 5553] 薔薇の名前  Re:5552 人間らしさ=


[From] "suka" [Date] Fri, 28 Nov 2003 11:49:58 +0900

葛貫さん
       須賀です。

ちょっと考えすぎでしたらおゆるしください。

葛貫さん:
> 養老さんは小説家ではありませんが、
> 「およそ語り手という者は自分の作品の解釈を提供すべきではない。
> さもなくば、もろもろの解釈を生みだす機械たる小説を書いたりし
> てはいけなかったのだ。(中略)とはいえ、無際限な読み方は、作
> 者が思いもしなかった意味効果をあぶりだすものである。作者が思
> いもしなかったとは、どういう意味なのか。(中略)仕事が終れば、
> 完成したテクストとその読者達との間に対話が生じる(作者はそこ
> から締め出され、いくつかの異なる解釈に作品は開かれている)。」
> と言った作家がいるそうです。

もしこのことばを葛貫さんが引用したいとお思いになった間接的な
理由のひとつがエーコの『薔薇の名前』をめぐるわたしとのやりとり
にあったのでしたら、おわびしなくてはなりません。

葛貫さんが引用されたような文学作品についての考え方は、わたし
も20代のころ詩を書こうと努力していた時期に別なかたちで目に
した記憶があります。とても楽しい考え方だと思います。わたしも、
このような考え方に賛成です。

『薔薇の名前』をめぐるやりとりで、わたしが葛貫さんのそうした自由
な解釈をさえぎったようにもしお感じになったのだとしたら、わたしの
ことばがここでも足りませんでしたね。

わたしは、ただ、『薔薇の名前』の引用した箇所([BlueSky: 5511] )
が物語の流れのなかでどのように出てきたのかをもう少しご説明
したほうがいいのではないかと思っただけです。葛貫さんではなく、
メールのやりとりだけをごらんになるほかのみなさんに、『薔薇の
名前』という小説について実際とちがいすぎるイメージをうえつけて
しまう結果になることが心配でした。わたし自身がこの小説を最後
まで読んでいないだけに、その心配を不器用にお伝えすることしか
できなかったわけです。

小説のストーリーの文脈にしたがってよんでいただいたうえでなら、
葛貫さんが示唆されたように「十牛図」との比較について考えること
も、たいへんおもしろいよみかたになるかもしれませんね。

そして、最後に、このおたより自体がわたしの過剰解釈によるもの
でしたら、おゆるしいただけましたらさいわいです。

それではまた。

  須賀 丈









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