[BlueSky: 5537] 本の紹介「いちばん大事なこと−養老教授の環境論」


[From] Minato Nakazawa [Date] Tue, 18 Nov 2003 23:10:28 +0900

中澤です。ご無沙汰しています。

「バカの壁」が大ベストセラーになったおかげか,養老さんの
本が続々と出ていますが,発行日は明日になっている
「いちばん大事なこと−養老教授の環境論」という書き下ろし
(口述を起こしたものをベースにかなりの加筆訂正をしたとの
こと)の新書が集英社新書から出ました。
ISBN4-08-720219-4,660円+税です。

p.43『グローバル化した経済は,地球規模の花見酒』
とか,p.75『環境問題とは,別な言い方をすれば「なにか
を手に入れたこと」のツケである』とか,p.99『「手入れ」で
保たれる環境』とか共感する点が多かったです。

ぼくはかつて【4490】で
> 多くの開発の場面で,実際に技術が未熟なために信頼するに足
> る予測ができない上に,立場や価値観によって,ありうる可能
> 性の中でどれを選択したいと思うか,という判断は違ってくる。
> つまり,唯一絶対の正解はない場合が多い。そうなると,市民
> 一人一人がきちんと情報を集め,自分で判断して合議により意
> 思決定する以外に,意思決定が正当化されうる根拠はなくなっ
> てくる。だから,一般市民を蚊帳の外においたやり方は,如何
> に短期的目標達成が早くても,正当化されない。一見遠回りに
> みえても,市民一人一人の主体性を向上させるための努力こそ,
> たぶん真の市民社会への近道ではないかと思うし,それ以外に
> 環境問題が解決される可能性はないと思う。
と書きましたが,養老さんも第6章「これからの生き方」で
『「どうすればいいのか」と質問する人の考え方が問題なので
ある。どうしたらいいかわからないことは人生には山のように
ある。それを認めたうえで「辛抱強く,努力を続ける根性」が
必要なのである。自然を相手にしていれば,ひとりでにそうし
た性格が育つ』と書かれていて,自己責任の必要性を訴えていて
その通りと思いました。

さらに続けて,実体に立ち戻る必要性に触れて,参勤交代として
1年のうち3ヶ月は田舎暮らしをせよというアイディアを書かれて
いるのですが,これも【843】で書いた週休三日制や【2401】で
書いた生活教育ということとかなり近い考え方だと思いました。
# というか,ぼくの考え方がそもそも養老さんの影響を
# 受けているのですが。
この視点で,週休三日制(+【2405】で書いた日本総田舎化計画)
と参勤交代はどちらが有効かというのは面白い問題だと思います。

この本が多くの人に読まれるといいなあと思いましたので
紹介させていただきました。

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Minato Nakazawa <minato@ypu.jp> http://phi.ypu.jp/
Associate Professor for Public Health and Informatics,
School of Nursing, Yamaguchi-Prefectural University
Phone +81-83-933-1453 / FAX +81-83-933-1483


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