[BlueSky: 5536] Re:5532 ことばと現場(有害成分の場合)


[From] "Y.kuzunuki" [Date] Fri, 14 Nov 2003 11:32:52 +0900

こんにちは、葛貫です。

葛貫:
> > 実際、「そのもの」を体験した時に発生する神経細胞の電気的な活
> > 動を伴わない「知識」とは、どのような位置付けになるんだろう、
> > と思ったのでした。

ゲンゴロウさん:
>  この葛貫さんの言う「神経細胞の電気的な活動を伴わない知
> 識」、これこそが須賀さんの引用した小説の中にでてくる、
> 「記号の記号」ということなのかもしれません。

記号には、「他者に、自分の場合と同じやり方で、自分のかかわっ
ている対象にかかわるように仕向ける」働きがあるそうです。

記号は、シンボル(symbol 象徴記号)、インデックス(index 指標記
号)、イコン (icon 類似記号)に大別されるそうです。

漠とした世界の中から、言葉というシンボルを使って拾い上げられ
たものごとに、その性質や量を表わす「単位」を与えるインデック
スをつけるのが科学の役割なのだと思います。

例えば、食べ物の有害成分について考えているときは、言葉という
記号を介して認識した世界から、更に指標として抽出した記号を使
って考えていることになるのだと思います。

毒性の強さを定量的に表すために、ある物質をマウスやラットの群
に投与して、その半数が死亡する量であるLD50(半数致死量)とい
う指標を用いることがあります。

私の弟は、実際、マウスを使った毒性試験をする仕事をしていたこ
とがあります。餌に問題になっている物質をいろいろな濃度で混ぜ
て与え、マウスが死亡していく様子を目の当たりに見ているので、
そういう試験をしたことのなく、単にカッキリとした数字として文
献で見ている私に比べ、LD50(半数致死量)という指標がもつ意味
を、よりリアルに知っているのだと思います。

食品の安全性等を公に評価するためには、「同じやり方で、対象に
かかわるようにする」必要があり、このような指標を用いざるを得
ない。

現場に携わっている人(一次情報の発信者)と、現場を知らず結果
を扱う人(情報を受け取ったり、加工する人)との間には、「いや、
ちょっと待ってくれない」と言いたくなるような、感覚的なずれが
あるだろうなと思います。

ある指標が使われるようになった経緯や、実際に、何を使って、ど
のように把握されているものなのかということを、情報の発信者が
知らせるようにし、受け手も知ろうとしなければ、不安のもととも
なる感覚的なずれは埋らないだろうな、と思いました。



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