[BlueSky: 551] Re:541 遺伝子組み替えと農薬


[From] "Kaz. Yokoyama" [Date] Mon, 23 Aug 1999 12:10:22 +0900

葛貫 さん,MLの皆さん

横山@農環研です。

>遺伝子組み替えと農薬に関して、このようなシナリオが考えられないでしょうか。
(後略失礼)

悪意のあるなしは別にして,今も種子ビジネスは各国では戦略ビジネスとなって
いますから,その様な状況は十分予想できます。ただ,病気にしても害虫にしても
彼らの強かさからいって,そう易々と組換え作物で排除されるとはとうてい思えない
(現実に抵抗性の報告がある)ので,そう大儲けできるかどうかは未知数です。

現に(ちょっと古い記憶ですが),最初に商業用組換え植物(フレイバーセイバー
トマト)を作ったカルジーン社は,今後普及にはコストがかかりすぎる判断して
組換えビジネスから撤退したと思います。詳しい方いたらフォローして下さい。

私がもっと心配なのは,むしろ遺伝子への特許設定競争についてです。
我が国もイネゲノムプロジェクトとしてイネの全遺伝配列解読を急いでいますが,
これは何もそれによってイネの全てを知ることが目的ではなく,重要な遺伝子
配列を先に特許化されてしまうことを防ぐ意味もあるというのです。

もし,特許化されると,今後新品種を作出しても,特許に基づくクレームにより
特許所有者に莫大な特許料を支払い続ける必要が発生するのです。

戦略的作物でこれをやれば全く美味しい,大儲け間違いなしのビジネスですね。
だけどこの動きには釈然としない物があります。人間が生み出したわけでも無い物に
ましてや生命を左右する基本物資に特許を設定して儲けるという状況は異常です。

これから,年を追うごとに世界の食糧受給が大きな話題となるでしょうから,今の内に
この点を国際的な舞台で議論し,遺伝情報の特許化を無効にするか,特許を盾に
した国際取引への干渉を禁止する必要がある気がしています。

もっとも,金になるから研究もどんどん進んで,生命現象に関する科学的知識の蓄積
も長足の進展をしているのでしょうが・・・・・

複雑学の立場から言うと,遺伝子のデータベースが出来るだけでは決して生命現象
を解明できません。でもデータは有った方が絶対良いし・・・・いろいろ悩ましい・・・

Kazunari Yokoyama, Ph.D.
Soil Microbial Ecology Lab.
National Institute of Agro-Environmental Sciences, Japan
Phone:+81-298-38-8300
Fax:+81-298-38-8199


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