[BlueSky: 54] 複雑学? Re: [49] Re: [45] 南北問題と日本的生活スタイル


[From] Ken Goto [Date] Sun, 11 Jul 1999 16:49:10 +0900

後藤@帯畜大です。

和田さん【49】:
> 後藤さん、こんにちは。みなさん、初めまして。   和田です。
> >
> > 中澤さん【21】:
> > > ただ,そうした生活は,往々にして現地の人自身が選んでいるという
> > > のも,一面の事実なんですよね。
>
> > 後藤さん【45】:
>
> > ⇒⇒⇒この辺は、とても微妙な問題ですね。例えば、日本農民は高度経済成長の
> > 過程で、都会に流出していったわけですが、それを完璧な自由意志でもって「選
> > びとって」行ったというわけでもない、と思うからです。いわば、単なる都会へ
> > の憧れだけが動機ではない。農業では食っていけない、そういうせっぱ詰まった
> > 状況があったと思うのです。
> >
> > 同じようなことは後進国における土着農業の破壊と、プランテーション化(商品
> > 作物栽培への移行)でも「緑の革命」でも起こってきたのではないでしょうか。
> > 自らの生業を捨てざるを得ない社会環境を国家指導者(及び多国籍企業)が作っ
> > てしまう。これを、「現地の人自身が選んでいる」と言ってもよいですが、抵抗
> > する現地の人々「も」いる、というのも他面の事実なのでしょう。
>
> たまたま、僕はフィリピンに、ここ3年間、年8回くらい行ってます。最初は僕自身
> も先進国−侵略者、東南アジアの人民−被害者という図式と価値観で現地をみていま
> した。
⇒⇒⇒和田さんのフィリピンレポート(↓)楽しく読ませて頂きました。
http://city.hokkai.or.jp/~arc/arc/philip2/philip.html

そのレポートの中で、現地の人でも入っていきたくない「危険な」奥地にも村が
あって、和田さんはそっちの方が一番見てみたい、というようなことを書いてい
らっしゃったように思うのですが、、、日本国内で置き換えてみると、高度経済
成長で取り残された過疎地、ということになるのかなぁ。

和田さんのおっしゃる通り、南北問題は、「先進国−侵略者、東南アジアの人民
−被害者という図式」だけでは理解できないと僕も思います。しかし、また、こ
の図式が基底にあることも否定できない、と思います。

日本が、国内の農業・林業・漁業を保護・育成して来ていたら、東南アジアの熱
帯林で伝統文化を守って暮らしてきた人々の生活の変容や、国際的飢餓構造の創
出に対する日本の責任も生れなかった、と思います。

かつ、こうした一次産業を守る形で、日本の自然も作られてきたわけですから、
それを保護・育成して来ていたら、国内の自然保護運動は全く必要なかった、と
言えなくもないような気がします。

しかし、国家の指導者は一次産業を冷遇して高度経済成長させた。総体として国
民はこれを歓迎した、というのは事実でしょう。しかし、冷遇されていた一次産
業従事者のきもちはどうだったのでしょう。60年代後半から70年代初頭は、
公害紛争の時代、ベトナム反戦の時代でもありましたが、三里塚闘争に象徴され
る、国民総体の利益(三里塚の場合は、成田空港建設)を地域農民の犠牲より優
先させた時代でもあります。また、沿岸がどんどん埋め立てられていって海水浴
場がどんどん汚くなり、田圃も埋め立てられて、こどもの身近な遊び場がどんど
ん減っていった時代です。一億総白痴化、って流行語が生れましたね。

つまり、国際的南北対立は、国内諸階層の南北対立を通じて創出されていったと
いう点も見ておかないといけないのではないか、ということを言いたいわけです。
だが、国内の南北対立は、国民総体、あるいは国家の利益という大義名分で押し
隠されてきた。公害紛争、三里塚闘争のように「運動」として見えるものもあり
ますが、、、例えば、こどもの育つ自然環境なんて誰も構ってくれません。

  そのなれの果ての一つがテレビ保育なんでしょうが。現在の青少年問題の基
  本的源泉の一つは、おとながこどもの真の幸福を考えてはこなかった、とい
  う点に求められる、と思います。テレビやテレビゲームに興じてくれれば親
  は楽ですが、、、昔は、野外に放り出しておけば(勝手に遊ぶので)よかっ
  たから親も楽でした、、、同じ楽でも、こどもが培う能力は全然変わってき
  ます。
     本音ではコミュニケーションできなくなってる。すぐキレる。

  もちろん、そういう都会のジャングルで育てば、こどもはそれなりにしたた
  かに順応します。順応すれば、本人はそれでよし、という自覚を持つことに
  なるわけですので、周りがとやかく言う筋合いのものでは決してない。

  でも、子どもたちには豊かな自然環境に抱かれるようにして育って欲しい、
  というのが僕の願いです。豊かな自然環境が再生されるということと、豊か
  な人間的コミュニケーションが再生されるということは相互増幅的に作用す
  る筈です。

      庭先の自然に戯れるのと、車を走らせることによって自然に接する
      のとでは、こどもにとって雲泥の差があります。

だいぶ、まえおきが長くなりました。

和田さん【49】:
> ただ、今思えるのはそう単純ではないのかもしれないということです。どうも近代文
> 明のもたらす様々な快楽「テレビ」「車」「エアコン」等の中にやはり麻薬が入って
> いるとしか思えないのです。これは論理で解決できるものはなく、もはやみんな一度
> この道を通らなければどうにもならないところにきているのではないでしょうか。
⇒⇒⇒きっと、そうなんでしょう。流れを止めることはできません。ただ、それ
でも抵抗している人々も、まだ残っているのではないか、、、少なくとも、昨日
紹介した「生きる歓び」を読む限り、インドでも土着農業を復権させようとする
運動があります。フィリピンでも、和田さんが足を踏み入れることのできなかっ
た地域に、伝統生活が残っているのではないか、と思うのです。

そこで問題は、成田空港建設のときの三里塚闘争のように、国家(または国民総
体)の利益という大義名分で、そうした伝統を潰してよいのかどうか、というこ
とになると思います。

和田さん【49】:
> そうしないと、出稼ぎ労働者からの闇送金がGNPの30%をしめると言われるフィリ
> ピンで、
⇒⇒⇒う〜ん、凄いですね。

> 日本でエンターティナーと言う名のホステス(すみません。これはセクハラ
> 用語になるのでしょうか?他の呼び名を知らないので)をする長女からの仕送りで、
> 残った家族がテレビを見ながら次の仕送りを待っている姿を見ると、(これももちろ
> ん南北問題の引き起こす矛盾以外の何ものでもないことはわかっているのですが)僕
> 自身の理解能力をもはや超えているとしか思えません。
⇒⇒⇒このあたりのことは、一昔前までの日本でも当たり前のように行われてい
たのでしょう(日本の場合、出稼ぎは国内ですが)。女中奉公、妾、娼婦・・・。

> 彼らは、車が大好きです。エアコンも大好きです。そして、我々が考えるより遙かに
> したたかな一面も持っています。
⇒⇒⇒ジプニー
http://city.hokkai.or.jp/~arc/arc/philip/PJPNY1.HTML
に乗る大人たちに、年に一度でしたっけ、子どもたちが勝手に水(泥水でも)を
かけることが許されている、というお話。こどもとおとなのあいだの「絆」が、
まだしっかりと結び付けられている社会のようで、微笑ましく感じました。

> もちろん、だからといって解決しなくて良い問題ではないですけど、我々日本人が手
> に入れたものを、同じ方法でいま彼らは手にしようとしているのは事実だと思いま
> す。唯一、彼らに対して説得力のある方法は我々が彼ら以上に貧しくなることではな
> いでしょうか?いわゆる先進国にそれができないのなら、人類滅亡の日まで解決でき
> ないのではないでしょうか。
⇒⇒⇒彼らが「開発」するのは、彼らの自由、自主性の問題ですよね。私たちに
とやかく口出す権利はないし、現実には、経済援助という形でそうした「開発」
を支援する方向に国家としては動いてきたと思うのです。でも、土着民の生活と
権利はどうなるのだ、、、というのが僕の疑問です。

一方、

紺野さん【29】も、
> 中国人が日本人並の生活をしたら、地球環境はそうとう悪くなるはずです。個人
> あたり資源利用量は日本人が中国人並になる必要があります。

と書いていらっしゃいますが、僕もこの点では基本的に賛成です。ただ、「中国
人が日本人並の生活を」する前に、資源が急騰して、実際にはそこまではいけな
いのではないか、とも思います。人類滅亡が見える時代になれば、その前に世界
大戦争が繰り広げられるだろうし、、、。

いずれにしても、産業構造なり、生活スタイルの変革は、現実的には可能なこと
だ、と思います。それが、国民の主体性のもとで実行されるのか、あるいは、国
際的圧力の下に渋々行うのか、、、或いは、キレる世代の反乱・紛争によって達
成されるのか、、、或いは、携帯電話世代が実権を握った時点で日本が沈没する
のか、、、具体的道筋は全く分かりませんが、現代の危機・矛盾がじわじわと蓄
積してきていることだけは確かなのだろう、と思うのです。

後藤 健
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生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


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