[BlueSky: 5273] Re:5267 「針葉樹人工林」が悪いのではなくて、その「管理手入れ不適切」が問題


[From] "gengorou" [Date] Sat, 2 Aug 2003 00:17:42 +0900


ゲンゴロウです。
佐藤さん、詳しいお話をありがとうございます。
おかげで、自分が何を考えていたのかが、分かってきました。

−−−

弥富の佐藤さん:
> 「虫は虫なりに一つの考え・・・・土石流災害に思う」について参考になればと思
> い、只木良也名誉教授と「四万十川源流域・かわうそ通信」 第16号を許可を得て
> 転送します
> 長いのは迷惑だとは解っているのですが針葉樹人工林に対する誤解を解くには
> ついつい長くなってしまいました
> 私自身は林業者ではなく、一介のユーザーの立場ですが
> 本当に人工林をほっておくと大変なことになってしまうと思うのです

 佐藤さんの言う「針葉樹人工林が悪いのではなくて、その管理
手入れ不適切が問題である」「人工林をほっておくと大変なこと
になってしまう」というお考えに異論ははありません。
私も、虫虫の中で、「山に針葉樹を植えすぎたこと、その山を
放置し、山の水を無理にせき止めたこと、それが土石流災害など
の原因の一つ」ということで、「管理手入れがされない針葉樹林
が悪い」と同じことを述べていると思います。

ただ、佐藤さんは、私の針葉樹林そのものを否定している考え方
に、「それは誤解だ!」と考えておられるようですね。
確かに、私は、針葉樹、それが、山の崩壊を招くだろうと推測し
ました。佐藤さんは、そこを問題視しているのですね。
私にすると、同じ事を言おうとしているとしかとれなかったので、
佐藤さんは異論だとおっしゃる理由がなかなか分かりませんでし
た。
 しかし、よく考えてみて、その違いがやっと分かりました。ど
うやら、前提条件のようなものが違う様です。

 私の前提は、「管理・世話されていない針葉樹林」を前提にし
ていて、「管理されない現状」をあきらめてしまい、そもそも針
葉樹林自体が悪いのではないかと考え、針葉樹林とはどういうも
のなのだろうと考えていたようです。
 佐藤さんの場合は、「管理・世話」を考えに入れて、「管理さ
えすれば健全な樹林に育つ人工針葉樹林は悪くない」と考え、悪
いのは、「管理されていないこと」と考えた様ですね。
そして、佐藤さんは、きっと「管理」を重要視していたので、、
「管理」をなおざりにした私の考えが、かなり気に入らなかった
様に感じました。

そこで、そのポイントに絞って考えてみたいと思います。私は、
速水林業のような組織があり、誰にも迷惑をかけず商売をし、
その結果で山が崩れずに済むのなら、何も言いません。しかし、
それは、記事にもあったように、現在、かなり希なケースでは
ないでしょうか。他の林業業者が手を引き、高級木材の値が高
く維持できる状態というのは、他の山が放置されているという
環境があるということです。それを考えると、私は、速水林業
のケースというものは、「こうやれば人工針葉樹林でも大丈夫
さ!」という例ではなく、他の山は放置されている例とも、と
れるように考えます。
 しかしながら、もし消費者が家屋の化学物質によるチック症
候群と嫌い、木材住宅を希望し、それを大企業が商売になると
考え、日本の放置された山に、再び着目したら、また再び、山
は管理・手入れされるようになるでしょう。(ただ速水林業は
立ち行かなくなるでしょう。)
 でも、その場合、それはかつての繰り返しにすぎず、ただ、
消費需要があるからということで、「あ〜よかった。。」でし
かないと思います。
 簡単に言ってしまえば、金が転がり込めば、だれでも「管理
・維持・手入れ」をするし、そうであれば、人工針葉樹林であ
ろうと人工授精だろうと、クローンだろうと、なんだろうと人
間は、可能にするのですから、あたりまえのことであると、私
は思います。

 私が問題視するのは、金が入らなくなったら、簡単に放置さ
れるに決まっている低地の針葉樹林を問題にしているような気
がします。。。

細かいことは、佐藤さんが、私の意見に手を焼いて、私の投稿
を渡した大学教授への、私のコメントで申し上げたいと思いま
す。

ところで、佐藤さんは林業者ではなく、一介のユーザーの立場だ
ということですが、下記の教授は、そうではないようですね。も
しかすると、行政に度々関わる機会が多い方なのではないですか。
そうだとすると、私としては、教授には立場上、偏ったものがあ
るかもしれないと、注意をはらいます。ご本人もその片寄りに気
が付いていない場合もあるかもしれないと用心しながら、ご意見
をお聞きします。
その為に、少々、意識して懐疑的になりますので、お許しを。。。

−−−
それでは、教授とお話をします。

只木良也名誉教授:
> 「針葉樹人工林」が悪いのではなくて、その「管理手入れ不適切」が問題
>   ---産んだ子は、まともに育てるのが親の責任-- 

これは、私の考え、「山に針葉樹を植えすぎたこと、その山を
放置し、山の水を無理にせき止めたこと、それが土石流災害
などの原因の一つ」と、近いと思います。
正確に考えれば、違いはありますね。でも、その違いは、どう
なんでしょう。。
 あまり差はないようですが、実は、よく考えると、立ってい
る場所が大きく違うようでもあります。

私は、現在の、金にならないと放置されやすい人工針葉樹林を
考え、「管理しないと大変なことになる針葉樹林はまずいんじ
ゃないの」という意味で、「針葉樹がまずい」と考えてますが、
教授は「管理すれば針葉樹でも大丈夫!」ということの様です。
現在、管理されていないから土砂流出などの問題が起きている
時に、管理すれば大丈夫とは、私にすると、「なんだ?!」と
なります。現在管理されていないから、「管理すればいい!」
などという悠長な意見が交わされているのではないでしょうか。

私としては、「なかなか管理されないような針葉樹植林は不適
切」と言いたいです。つまり「そりゃー管理するならいいです
よ!」と、考えられなくもないです。しかし、それは並大抵の
ことではないのではないでしょうか。
 並大抵ではないということは、金がかかるということです。
全国の山にある人工樹林はかなりの面積に登るようです。それ
をボランティアで手入れするなど無理だと思います。行く行く
は国税金で業者が雇われ、人工樹林が存在する限り、未来永劫、
税金が投入される。税金とは何か!の問題にも発展しそうです。
もともと育った広葉樹の自然林に近い状態に戻せば、山はそれ
ほど手を加えなくても、”然るべくして自らある”ようになる
のではないでしょうか。。

>  水源かん養能力に優れた森林とは、どんなものでしょうか。森林の水源かん養能力
> は、要するに土壌の水浸透能力に基づきますから、簡単にいえば、団粒構造が発達し
> た林、正常に落葉があり、その分解がスムーズな、したがって、植物現存量大きく、
> 低木層も発達し、土壌動物・微生物も豊富な林ということになります。それじゃ落葉
> が分解しやすく団粒構造化も速い広葉樹林、と決めてしまうのが一般です。間違いで
> はないのですが、その一方で、スギなどの針葉樹人工林の能力はゼロのごとくに短絡
> 的に結論されがちなのは危険なことです。

学者の方は、頭がいいので、それだだけで私は納得してし
まいそうですが、ちょっと考えさせてもらいます。

 ここで、突然、土壌の話が出てきますが、大切な保水能力
である、落ち葉はどうなっているのでしょうか。土壌の上に
積み重なった落ち葉の保水能力の比較はどうなっているので
しょうか。。
我が家の庭に、桜の落ち葉を多量に撒いたことがあります。
すると、かなり散水しても、その下の地面に水は通らず、
木を枯らせた経験があります。その経験からですが、落ち
葉の保水能力は大変なものがあると推測します。針葉樹の
枯葉は保水力はないように思いますが・・・。
というより、浮いて流れてしまうように思います。この落
ち葉の差は、重要なことだと思います。。
 プロである教授が、それを持ち出してくれないことに、
なんか、、ちょっと、偏りがあるような気になります。

次に、人工樹林の土壌の保水能力です。それはゼロと短絡
的に考えがちと言われますが、それをゼロとは、私は考え
ていないです。(ないことを例に出す手法は、論理的では
ないような・・・)針葉樹の生息する土壌にそれなりに保
水力はあると思いますが、ゼロとは言わないですが、広葉
樹林には劣るのではないでしょうか。そして、現在の人工
樹林は、もともとは自然広葉樹林地域だったのではないで
しょうか。

ただ、そのこと以前に、落ち葉?が流れるのではと考え、
土壌がむき出しになるような気がします。高い山には自然
林として針葉樹が生息していますが、その傾斜地は、岩で
ごつごつでした。
 それでも高い山には、雨が多量に降らないと思いますし、
崩れても、直接、民家などを押しつぶさないと思います。
ただ、貯水ダムが無い場合は、大変なことになるとは思い
ます。
多量の雨を長く降らす雨雲は低いと思いますので、人工樹
林が植えられている地域こそが、岩でごつごつになる状況
に向ってしまうのではないでしょうか。。

> なぜなら、針葉樹の落葉も、速度は多少遅くとも分解するのは当然だからです。ある
> 程度の時間を経た、適切に保育手入れされてきた壮齢期以上の人工林ならば、水源か
> ん養能力も十分といえます。天竜川の金原明善の例のように、過去の水源林造成に使
> われたのはほとんど針葉樹(スギ)で、それで充分目的を達してきました。

ここで、落ち葉が出てきました。(論理展開で、落ち葉が必
要になると取り上げるのは、ちょっと。。)
針葉樹も分解するのは、もちろん当然ですが、その当然のこ
との裏に隠れてしまいそうなことが別にあるようです。量は
どうなのでしょうか?落ち葉の量は!

落葉広葉樹の落葉の量と、針葉樹の落葉?の量とでは、その
差は大きいような気がします。街の樹木の下で、それは歴然
とすると思いますが。。。秋の「落ち葉はき」は、それはそ
れは大変です。後から後から降ってきます。
今度は、量が消えてしまったようですが、その量の差は、と
ても重要なことではないでしょうか。。
(この量については他の植物の専門家に聞きたいところです。。)

>  針葉樹人工林、造ったからには正常に育てることに全力を尽くさねばなりません。
> 森林面積の4割強、国土面積の3割弱までに拡大した人工林にも、自然環境保全に参加
> してもらわないと、森林を基調とするわが国の自然環境は崩壊してしまいます。

人工林、植えてしまえば、自然林!ってわけですね。
使いたいときは人工林で、使わなくなったら自然林。。
使えるときは所有権があり、使えなくなると所有権は皆の者。
その考え方、なんか変な気がしますね。。私には。

もしかすると、国が国策として財閥系企業と共に植えた人工林は、
不用になると自然林と呼ばれ、その保全費用は自然保護勘定という
国税になるという具合なのでしょうか。銀行と同じ。

> これまた 弥富の佐藤さんの「どうやって説明していいのか途方にくれています」
> の「虫は虫なりに一つの考え・・・・土石流災害に思う」は、ちょっと思い入れが大
> きすぎるようです。

アハハ!参りました。。先に言われてました。

> 【日本の針葉樹林】は、広葉樹と針葉樹を逆にとらえているみたい。一般に、土地を
> 選ぶのは広葉樹で、土地が悪いところでも根を張って生育できるのが針葉樹。針葉樹
> 人工林で、根張りが悪いのは、手入れ不足の競争激化のため、樹木間の競争の影響
> は、地上部よりも地下部に激しく現れます。

 「悪い土地でも根を張る針葉樹」は、確かにそのようです。
しかし、手入れ不足(枝切り、間伐)のことは、今現在、行われ
ていないことなので、出来ない現在の状況で考えないとまずいと
思います。「手入れし、間伐すれば大丈夫」とは、、土砂災害が
起きているから砂防ダムを作ってきた時代が、もうとっくに過ぎ
た後の話ではないような気がします。

 上記のお話を信じたとして、針葉樹は背丈がかなり高くなるの
で、倒れやすいのではないでしょうか。それも将棋倒しに。
 生育と、物理的に重力でぶっ倒れるということとは別なことだ
と思います。そして、土砂災害は、針葉樹の生育力に関係してい
るのではなく、その背丈の高さが物理的に問題のように感じます
が。。。

言い換えるなら、現実の問題として考えた場合、
間伐、枝打ち、下草刈りが出来ないのに、それさえすれば、
針葉樹でも大丈夫は、それが出来ない現在、かなりまずい
樹木と考えた方が妥当なような気がします。。。

> 【針葉樹と広葉樹と雨】も逆。書いてあることは人間の感覚(錯覚)で、実は、針葉樹
> 林の方が土地面積あたりの葉量・葉面積が大きくて雨もよく遮断します。

このお話は、何処の針葉樹を例にしているのでしょうか。
間伐し、枝打ちし、木の上部に葉がポヤポヤと付いている
管理された針葉樹林なのでしょうか。それともカナダの樹
林なのでしょうか。。。その変が気になります。

 上記の話は間伐がされていない状況、つまり、低地の多
雨地域では、最悪の状況での話ではないでしょうか。もし、
最悪の状況であるとするなら、なんかおかしいことになる
と私は思います。
データサンプルはその木が植えられる地域でのデータでな
いとまずいのではないでしょうか。
間伐をすると木の保水力はなくなり、間伐をしないと木は
倒れるのに。。。

> 【土石流災害】も、人工林だからというのは言い過ぎでしょう。集中豪雨で、水を一
> 杯に含んだ土砂がその重みで崩れ落ち、流れるのですから、広葉樹林で土石流がない
> とは言えません。

うむ。。この地耐力のお話は納得します。でも、それは地力と土石流
の関係だけですね。樹木を考慮している場合、背丈が高くなる針葉樹
を考えて、どうなるのでしょう。また、密集してしまうと、倒れやす
くなることも考慮したらどうなるのでしょう。。
で、さらに、地力との関係に話を戻して、上記で、教授は、「針葉樹
林の方が土地面積あたりの葉量・葉面積が大きくて雨もよく遮断しま
す。」と言われていることを考える(私は、そう思いませんが)と、、、
針葉樹のほうが多雨の時、重くなり危ないのではないですか?
(というと、こんどは、枝打ちするので、、と言われるかな・・・)

なんか、こうして教授のお話を読んでくると、教授こそ、なぜ
針葉樹だけを見ているのだろうかと、思えてきます。
教授は、なぜそれほどまでに針葉樹に思いを入れるのでしょう。。。
住友林業や関係省庁などと関係しているのでは?などと邪推して
しまいそうになります。
(住友林業=住宅と木材が2本柱。在来工法で首位。日本最大
の山林を持つが木材販売は輸入材がほとんど。)

 私にすると、広葉樹でも、いや、広葉樹のほうが猿も喜ぶし、
いいじゃないの!と言いたいところです。
さらに、広葉樹は、地中の水分をドンドンと吸い上げ蒸発させ
ることなどを考えると、広葉樹こそ土砂災害を起こしやすい場
所に適しているのではないでしょうか。。

 生物の生息を考えるとき、適するとは決して力があるという
ことではなく、様々な状況において、共存できる生物がその環
境で生息できるということだと思います。
 ある時は食われ(伐採され)るということも、あるいは、死
ぬ(朽ちる)ということも、共存の条件になると思います。

そういった、不可思議で、複雑である自然を操作できる、人工
的な行為(管理)さえすれば可能だ!、という自然保全の考え
方が、私にすると、納得がいきません。

 私がこんなことを言うよりも、自然は、広葉樹を日本の
どこに生息させたかを考えたほうが、よいかもしれません。


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        ゲンゴロウ
gengorou@m08.alpha-net.ne.jp
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それにしても、、樹木は自らの足下に多量の雨が降るのを防ぐ
ように葉を茂らせ、自らの落ち葉で地表の保水力を高め、自ら
の根で土砂の流失を防ぎ、自らの体内で栄養のほとんどを作り、
大したものだと思いました。


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