[BlueSky: 5241] Re:5236 土砂災害の背景


[From] "suka" [Date] Fri, 25 Jul 2003 09:27:32 +0900

山口さん、葛貫さん、ゲンゴロウさん

    須賀です。

葛貫さん:
> 「人と話すとき、相手の言葉の意味を理解していると思っているが、
> 本当は自分の記憶や理解を当てはめようとしているだけで、脳の内
> 部の意味や価値が想起されるにすぎない」そうです。
> http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/news/2003/jul/index.html#gen_01

ゲンゴロウさん:
> ・・・そういえば、私が漠然と思っていたことを
> 明確に言っている人がいた。。
>
> −−− 理解の蜃気楼(ミラージュ)by石川 −−−
>
> > 神や愛や自由といった、抽象度の高い言語ほど
> > ミラージュを現出させるようです。会話してお互いに
> > 話が通じたと信じ込みながら、実は全然通じていない、
> > というような理解の蜃気楼(ミラージュ)なわけです。

たまたま今よんでいる本に、似た趣旨のことが書かれて
いました。

山鳥 重(やまどり・あつし)
『「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学』(ちくま新書339)
                  (2002年発行 筑摩書房)
という本です。カバーについている本の紹介文にはこう書かれて
います。

 われわれは、どんなときに「あ、わかった」「わけがわからない」
 「腑に落ちた!」などと感じるのだろうか。また「わかった」途端
 に快感が生じたりする。そのとき脳ではなにが起こっているの
 か――脳の高次機能障害の臨床医である著者が、自身の経験
 (心象・知識・記憶)を総動員して、ヒトの認識のメカニズムを、
 きわめて平易に解き明かす刺激的な試み。

本文中にも引用してみたい部分がたくさんありますが、たとえば
次の部分など、葛貫さんが紹介してくださった話と重なっている
のではないでしょうか。

 心象はこのように経験を通じて形成されます。そして、この心象
 がわれわれの思考の単位となります。われわれは心象を介して
 世界に触れ、心象によって自分にも触れるのです。外の世界
 (客観世界)はそのままではわれわれの手に負えません。われ
 われは世界を、心象形成というやり方で読み取っているのです。
 心象という形に再構成しているのです。
                          (本文31ページ)

「心象」ということばについては、次のように説明されています。

 心象は視覚映像だけではありません。触覚、聴覚、嗅覚、味覚
 など視覚化出来ない心理現象を含みます。これらをすべて含む
 語としては、正確には心理表象という言葉を選ぶべきなのです
 が、長いし、なじみも薄いのでやめにしました。
                          (本文15ページ)

葛貫さんやゲンゴロウさんのお話も記憶にとどめながら、この本を
最後までよんでみようと思います。

***

ゲンゴロウさんの紹介してくださった文にある「理解の蜃気楼(ミラ
ージュ)」にすぎないものとなることをおそれつつ、山口さんのお話
を拝読して心にうかんだことを書いてみます。

山口さん:
> 自然の営み、その絶大な力と折り合いをつける知恵と工夫を忘れ去った
> 土建技術、公共事業で無理やり何とかしようとすることはばかげていると
> 思えないのでしょうか。

ひとつには、行政が土木、林政、環境というようにそれぞれの部局に分か
れて縦割りで仕事をしているところに問題があるのではないでしょうか。
言い古されたことのようにも思いますし、わたし自身行政の専門家でも
ありませんので、どのくらい的を得ているのかも実はわからないのですが。
けれどもいろいろなことを断片的に経験するなかで、やはりそうではないか
と思います。

それぞれの部局のなかに、山口さんのおっしゃるような考え方に共感される
方はいらっしゃると思います。けれどもそういう考え方をもったひとたちが
連携してひとつながりのまとまった政策をつくりあげ、実現していくことが
なかなかむずかしい。これは組織のかたちとか、そのなかでの仕事のすす
め方を変えることで、改善できる部分があるのではないでしょうか。それだけ
でうまくいくかどうかはわかりませんが、そういう工夫をしてみる価値はある
のではないかと思います。

みなさんはどんなふうにお考えになるでしょうか。

-----
須賀 丈(すかたけし)
長野県自然保護研究所
電話026-239-1031
Fax026-239-2929



▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。