[BlueSky: 523] コードンコンウェー教授のモンサント社での役員会でのスピーチの要旨


[From] yuichiro komiya [Date] Fri, 20 Aug 1999 12:02:43 +0900

みなさんこんにちは。小宮です。

米国ロックフェラー財団理事長・コードンコンウェー教授の、
モンサント社での役員会での遺伝子組み換え食品を巡る論争に
ついてのスピーチの要旨という記事がありました。

http://www.pure-foods.co.jp/GMOinfo/RFspeach.html


以前長峰さんが言われていたように、遺伝子組み換え技術は、
うまく用いれば開発途上国の貧困層への食糧供給や、来るべき
将来の食料危機への有効な対応策となり得ると思います。感情
的に危険、危険といって研究開発の芽自体を潰してしまうので
はなく、冷静に、なにがどう危険なのか、また、倫理的にも
どういった問題があるのかを議論する必要があるんでしょうね。

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米国ロックフェラー財団理事長・コードンコンウェー教授、遺伝子組み換え食品を巡
る論争についての見解を表明

ロックフェラー財団は、植物のバイオテクノロジー開発の為、多額の支援を行ってい
る米国有数の財団です。 同財団理事長のゴードン コンウェー教授は、ワシントン
D.C.において開催されたモンサント社の役員会において、最近の遺伝子組み換え食品
を巡る論争により、人類にとって有益な技術が脅威にさらされているが、消費者の批
判に対しては、これを受け止めて誠実な対応が必要であると述べました。以下に、ス
ピーチの要旨を掲載します。 



ワシントン発、6月25日

ロックフェラー財団理事長、ゴードンコンウェー教授によれば、開発途上国の貧困層
に食糧供給を改善するのに役立つと期待されている遺伝子組換え作物は、巻き起こる
論争の中で、脅威にさらされているという。

しかしながら、消費者と環境保護グループの懸念の多くは合理的であり、適切に検
討・監視が行われる必要がある。

更に、バイテク商業植物の最大手であるモンサント社は、ターミネーター種子の案を
取り下げること、及び開発途上国における植物科学研究に多くの投資をすること等を
含め、誠実な公開討論を通して、方針を変更する必要がある。

コンウェー氏は、さらに、食品の表示問題に関し、遺伝子組換え食品が本質的に危険
であるからではなく、消費者は自身が購入・消費するものについての「知る権利」が
あることより、表示することに賛成の立場を表明した。

コンウェー氏は、ワシントンD.C.で行われたモンサント社の役員会におけるスピーチ
の中で、遺伝子組換え技術の導入に関し、従来よりも責任のある取り組みが必要であ
ると述べた。

もしこれが行われなければ、増加する消費者の反感と行政の逆戻りにより、技術の潜
在的な恩恵が失われるという真の危険が引き起こされることとなる。

コンウェー氏によれば、ロックフェラー財団は、植物バイテク研究に、1億ドルを拠
出し、アジア・アフリカ・南アメリカの400名以上の科学者を支援している。世界
の貧困層、その中でも特に、現在農業に不適な地域に住む人々にとって、バイテク分
野の支援は、重要であるとの確信のもとに、ロックフェラー財団は、支援を強化して
いる。

ヨーロッパにおける大規模な抗議行動が始まる前に、遺伝子組換え技術による真の恩
恵は、特に開発途上国における利用分野において、ほぼ実現に近づいていた。これら
の中には、病害虫耐性のイネ、更にベータカロチン(ベータカロチンは人間の体内
で、ビタミンAに分解される)を含むイネがある。開発途上国では、1億8千万人も
の子供が、ビタミンA不足に悩まされ、毎年2百万人が、ビタミンA不足で、死亡し
ている。イネに異なる遺伝子を挿入すると、鉄分の含量を3倍に増やすことができ
る。世界中で、約20億人が、鉄分の不足から起こる貧血症に悩んでいる。

ロックフェラー財団の支援しているメキシコの研究者は、熱帯の広範囲にわたる立ち
枯れの原因となる、土壌毒性成分であるアルミニウムに対する耐性を増加させるため
に、イネとメイズに遺伝子を挿入した。インドの研究者は、アジアでは一般的な問題
である、長期間に渡る冠水時にも、生存するのに役立つ2つの遺伝子をイネに挿入し
た。

コンウェー氏は次のように述べた。「我々は、このような成果が、開発途上国の人々
に大きな真の恩恵をもたらすことと確信している。しかしながら、特に貧困層によ
る、これらの研究の使用に関しては、ヨーロッパで巻き起こる論争とアメリカでも論
争がある程度拡大してきているため、脅威にさらされている。研究が逆戻りするこ
と、特に圃場実験が禁止されることこそが、真の危険である。勿論、圃場実験を通し
てのみ、我々は、恩恵と危険を正確に評価することができる。」

更に彼は、次のように付け加えた。「バイテク植物の使用に関するヨーロッパと開発
途上各国での論争は強まっているが、科学的な論点がその中心ではない。研究が遅
れ、圃場実験が中止され、新技術で生産された食品の行政制限措置が講じられること
こそが、今や真の危険である。」

「ヨーロッパで現在言われていることの多くは、感情的な事柄である。いくつかは、
単に反企業、反アメリカの感情に基づいている。しかしながら、この論争の中では、
バイテクの倫理的な問題、環境に与える危険、人類の健康に与える影響等に関する、
純粋な懸念も含まれている。」

コンウェー氏は、商業的に、早急に製品を市場に出したため、誤解を招き、技術に対
する反動を招くような失敗を犯したと述べた。

発展途上国の貧困な農民や種子業者と、巨大企業との間で、不平等な交渉関係がある
との危惧が指摘されていた。

コンウェー氏は、新作物に挿入された遺伝子が、近隣の雑草またはその他の植物に拡
散する危険については、ウイルス性遺伝子の使用による新規のウイルスが生まれる可
能性があるのと同様であり、真剣に検討されるべきであると述べた。技術は、緊密な
監視の基に、注意深く進められる必要がある。

しかしながら、遺伝子組換え作物が、抗生物質耐性を増加させるとの危惧に対して
は、抗生物質耐性マーカーは、作物の成長には必要ないので、これを作物からはずす
ことにより、容易に解決できる。

ガン誘発の危険を含む、人類の健康に悪影響を与えるとの広い大衆の危惧について、
コンウェー氏は、単に証拠がないとの理由だけでは、このような危惧は、なくならな
いであろうと警告した。「危険の証拠がないからといって、これらの危惧に対抗する
ことはできない。これは、丁度イギリス政府がBSE感染牛からの肉を食べることにつ
いての説明と同様であり、またつい数週間前まで、ベルギー政府が、石油化学品を含
む飼料で飼育した家畜についての説明とも同様である。」

コンウェー氏は、技術の健康に与える影響に関して、監視・公開・討論といった新し
い取り組みが必要であると述べた。

「適切なシステムと継続的な支援により、注意深い監視、公開された報告及び透明性
を確保するとともに、植物バイテクの人類の健康に与える影響に関する公開の討論会
を提供するような、新しい取り組みがなされなければならない。危惧・興味ととも
に、偏見のない立場を保持していると認められれば、大多数の人々から、健康問題を
引き起こすことなく、人類の食糧確保のための新しい方法を確立するための信頼でき
るパートナーとして納得させることができる。

「危険と恩恵の折り合いは、開発途上国では、その尺度が異なるかもしれない。栄養
失調や餓死に直面している人々は、アメリカやヨーロッパの圧力団体によって言われ
ている、不完全に定義された、健康に与える危険について、あまり心配しないかもし
れない。」

「しかし、貧困層は、自身の事を決定する権利があり、それを実施するための情報と
道具が必要である。彼らの決定は、自身の必要性と優先順位を勘案し、自身の分析に
基づかなければならない。賄賂等により、買収されてはならない。」

コンウェー氏は、遺伝子組換え技術を使用した新規植物の特許は、制限されるべきで
あると述べた。発明ではなく、知識について、知的所有権を確保しようとすることは
危険である。さらに、発展途上国でこのような技術を評価する場合、科学的な視点に
加えて、経済的な視点からも、その影響を研究する必要がある。

コンウェー氏は、遺伝子組換え食品を食べるかどうかといった消費者の選択のため
に、表示すること、およびターミネーター技術の研究の中止を求めた。「農業種子産
業は、種子の不稔性を招くターミネーター技術の使用は、否定しなければならない
。」

農業関連企業は、ステートメントを発表することだけで、批判に答えるべきではな
い。「貧困層に対して、食糧供給と環境保護に関して、責任を持ち、安心させること
が必要である。」

モンサント社の役員会でのスピーチの中で、次のように付け足した。「貧困層の人々
を、誠実な対話の対等な相手として、取り扱う方が良い。モンサント社として、投資
に対する見返り、市場開拓、継続的な成長、その他の経済的な点について、心配して
いることを了解する。全ての点について回答がないかもしれないが、回答できるもの
からはじめ、迅速に対応し、保持しているデータを誠実に公開することが求められ
る。」

「今は、新規の経営計画や、広報による宣伝活動の時期ではない。公正さと公開性に
基づいた、新たな関係を築く時である。」

コンウェー氏は、次のように締めくくった。「ロックフェラー財団の顧客は、国際化
の恩恵を受けていない貧困層である。モンサント社の保持する技術は、これらの我々
の顧客に重要なものとなりうるものである。遺伝子組換え技術が、最も不利な立場、
または弱い立場にある貧困層の直面する問題を、解決するのに役立つのであれば、モ
ンサント社は、従来とは異なった説明をし、行動を取る必要がある。」

ゴードンコンウェー教授は、「The Doubly Green Revolution」、「Food for All
in the 21st Century」、また最近出版された「global food security」の著者であ
る。同氏は、スセックス大学の前副学長であり、開発途上国の農業分野で、著名な権
威者である。

ロックフェラー財団は、世界中の貧困層の生活を豊かに、維持することを使命として
設立された国際的な団体である。

出典: ロックフェラー財団





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