[BlueSky: 4877] Re:4876 補足


[From] "suka" [Date] Wed, 19 Feb 2003 17:51:54 +0900

土田さん

ご意見ありがとうございます。

>  例えば「保全」と「保護」についてですが、自分達の考え方に沿った
> 環境の姿をイメージするという点においては余り差がありません。

確かにそうですね。ご紹介したとおり、「保全」ということばも、「保護」に
くらべたら、理念のレベルでいろいろな立場のひとが合意しやすい考え方
だというだけです。いいかえれば、いろいろな立場に配慮のできる柔軟
で現実的なところのある考え方でもあると思うのですが、いかがでしょうか。

「鯨」については、去年の5月ごろにこのメーリングリストでやりとりが
ありました。そのなかで、僕がみなさんにお送りしたメールを引用します
(BlueSky: 4216)。
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僕自身は、捕鯨のことをあまり勉強していないこともあって、それほど
はっきりした意見をもっているわけではありません。でも、なるほどな
と思っている考え方があります。自然保護団体のWWFジャパンがこの
4月に発表した意見です。

http://www.wwf.or.jp/marine/kujira/index.htm

このなかで、WWFジャパンは、賛成派と反対派というふうに意見を
ふたつにふりわけていることに解決をこばむ最大の原因があるとし、
「保護と持続的な利用の両立派」ともいうべき見方が必要だとして
います。また、そのためには資源としてのクジラを適正に管理する
制度が必要だとしています。

捕鯨をめぐる今の社会状況について具体的なことをあまり知らない
のですが、生物資源の保全と利用についての一般論としては妥当な
考え方にそっているのではないかと僕は思っています。

東京大学の松田裕之さんのホームページにも、生態学的に生物資源
の管理を研究する立場からのくわしい解説と意見表明があります。
松田さんは、WWFジャパンの主張を全面的に支持しています。

http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/whale.html

http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2002/whale1.html

http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2002/whale2.html

僕自身は、日本国内で自然保護への理解をひろめるうえで、この意見
に注目があつまることがいい結果をうむのではないかと期待しています。

なぜなら、捕鯨問題で欧米の自然保護勢力が日本の文化を尊重しない
ということが理由で、自然保護活動への反発もっているかたがたが日本
にはすくなくないのではないかと推測しているからです。

つまり、クジラの問題が自然保護のシンボルとなっている面があるせいで、
ほかの自然保護問題にもいろいろ影響があると思っているからです。

この僕の推測が正しいかどうかはわかりませんが、こんなわけで、僕は
この意見に多くのみなさんの関心があつまることを期待しています。
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ただし、上の文章のなかで「クジラを適正に管理する」という表現は
誤解をまねくことに気がつきましたので、BlueSky: 4259 で訂正
いたしました。むしろクジラの捕獲をめぐる人間の活動を適切に
マネージメントする(日本語では不幸にして「管理する」になってしまい
ますが)、という意味にとったほうが、WWFジャパンの意図をより
正確におつたえることになるのではないか、と思います。

> 所詮、人間が生きて行くに際しては、多かれ少なかれ何かを犠牲にする
> のです。だからこそ、その犠牲を小さく、そして私達が頂く多くの動植物に
> 感謝はしないといけないなと思うのです。

おっしゃるとおりかもしれません。僕自身は「保全」という考え方を
おっしゃるようなご意見をもすくいあげられるようなものにしていかなく
てはいけないのではないか、と思っています。けれどもこのことに
どのくらい多くの方のご賛同をいただけるかはわかりませんし、
いずれにしてもこれからの課題なのかもしれません。

-----
須賀 丈(すかたけし)
長野県自然保護研究所
電話026-239-1031
Fax026-239-2929






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