[BlueSky: 48] 精神的欲望の対象はさまざま  Re [29]


[From] Ken Goto [Date] Sun, 11 Jul 1999 00:03:09 +0900

後藤@帯畜大です。

> 紺野@畜大です
⇒⇒⇒こちら(十勝地方)では、帯広畜産大学(今のところまだ国立です)のこ
とを畜大と呼びます。「帯畜大」という略称は、学会発表などの要旨集などの目
次に使われます。===>全国の皆さん、ローカルな話題で、すいません。

紺野さん【29】:
> 中国人が日本人並の生活をしたら、地球環境はそうとう悪くなるはずです。個人
> あたり資源利用量は日本人が中国人並になる必要があります。
>
> 人間は欲望の抑制ができるほど、崇高な存在だろうか?あまり自信がありません。
> 人間というものは、そうとうやっかいな生物です。
> しかし、それでも抑制の科学、のようなものを目指さなくてはならない。
>
> もっとも極端な抑制の科学は小型化遺伝子の人間への導入だ。
> 遺伝子導入も人ごとではなく(「他種ごとではなく、」が正しい)
> 人間自身の身長を小さくする遺伝子の導入なども考えなくてはならないという時
> 代がくるかもしれないと言うことです。小型化すれば資源を使わないから。
⇒⇒⇒これって、冗談(Jと略称することあります)じゃなくて、真面目なんで
すか?

仮にこのような形の遺伝子導入を是認すれば、手術を行う医者乃至は技術者が
(国家と結託して)何を本当に導入するのか、国民は恐怖に慄くのではないでしょ
うか?また、それ以前に、遺伝子導入される新生児の権利(と尊厳)はどこにい
くのでしょうか?

それはさておき、、、

「小型化すれば資源を使わない」というのは、事実認識としてまずい、と思いま
す。アメリカ人のひとり当たりのエネルギー消費が日本人に比べて高いのは、ア
メリカ人のサイズが大きいからではありません。産業・社会構造や生活スタイル
の問題でしょう。

「欲望」のレベルで議論するならば、人体生理学的欲望と精神的欲望が区別され
ます。人体生理学的欲望(渇水欲、性欲、食欲など)はとどまることを知った欲
望です。空腹感は、食事によって満腹感に変わって、抑制されるのです。60k
gのひとで、一日、約2000キロカロリーで満足される筈です。小型化すれば、
確かに消費量は減りますが、、、先進国の食糧問題・エネルギー問題での問題は、
この部分ではありません。

食欲で言うとグルメ欲。あるいは、より一般的なことばでいうと、快楽追求に相
当する精神的欲望の問題でしょう。

これを全般的に抑制するということは、人間弾圧です。廃人をつくるようなもの
です。したがって、倫理的には絶対的に許されない行為でしょう。

できることは、快楽追求の対象を変えることだ、と思います。科学者の研究活動
も、芸術家の創作活動も、技術者のエンジニアリング活動も、、、、あるいは、
主婦の井戸端会議も、車を乗り回すのも、、、すべて快楽追求です。もちろん、
グルメも快楽追求の一つです。

楽しいことを求めてやまないという人間性を否定することはできませんが、何を
どのようにして楽しむか、ということを「選択」することは不可能ではない、と
思うわけです。人間の果てしない欲望こそ、人間(個人)の活力の源泉です。そ
れは悪の源泉にもなりうるわけですし、環境問題の根底にあるには違いないので
すが、また、それは、人間の「美しさ」の源泉にも違いないのです。

僕のこの見地からすると、では、どのようにして、欲望の対象を、環境問題の解
決の方向に向けていけるかどうか、ということが重要な問題となるのです。

後藤 健
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生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


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