[BlueSky: 474] 戦争と平和 Re:444 RE:442


[From] Minato Nakazawa [Date] Tue, 17 Aug 1999 11:08:14 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

■やまもとさんがメールで使われていた,丸に囲まれた数字(いわゆる
■「丸付き数字」)と,半角カタカナは,Macintoshでは文字化けします
■し,メールソフトによってはハングアップすることがありますので,
■書き換えました。本のMLのマナー集の文字コードのところ
■(http://www.alles.or.jp/~akihisa/manners.htm#mozi)が参考に
■なります。

(件名:[BlueSky: 444] RE:442 Re:440に於て)
Sun, 15 Aug 1999 09:02:55 +0900頃,Yamamotoさん:
> いろいろパターンはあると思いますが、
> (1) 生活苦からの戦争
> (2) 力のバランスからの戦争
> (3) 考え方の違いから(宗教・民族)対抗相手をねじ伏せるための戦争
> (4) 独裁者による戦争
>
> (1) 生活苦からは、泥棒や乞食などと同じです。
> (その人達に対する見方接し方)
> 別の見方では、自分よりも裕福に生活していて
> 食料・エネルギーなども浪費している人を見た場合
> 少しぐらいもらってもと考えることから
> 憎しみへとつながる事もないとは言い切れませんよね。
これは,分集団内では分かち合い,あるいは社会保障などによって
回避されうる問題です。同様に考えれば,分集団間でのそれ,つま
り国際援助やボランティア活動がうまく機能すれば,避けうる筈
です。ところが,分集団内では価値観やルールが共通である
(のが定義)のに対して,分集団を超えた普遍的な価値観や
ルールは,ごくわずかしかありません。現状の国際法は,適用
範囲が限られていること以上に,先進諸国の「抑止力」に実効性
の根拠を頼っているのが弱点だと思います。

環境倫理も同じ問題を抱えていると思いますが,どうしたら
いいのでしょうか? うまくいくかどうかわかりませんが,ぼくの
案としては,情報伝達速度と範囲を拡大して,地球全体を大きな
ムラ社会にしてしまうこと,が思いつきます。そうすれば,普遍的な
価値観・ルールが成立する可能性はあります。ただ,集団は
分節化傾向を内在していると思われますし,外部の自然環境条件
が一様ではありませんから,大きなムラ社会論は,かなり画餅に
近いです。他の分集団の異なる条件を理解できるだけの知性が
要求されます。逆に,地球全体に影響するほどの力をもつような
大きな分集団が存在しない状態でもいいわけですが(極論すると,
個人の多様性を極限まで認めるということです),これは,ある
意味では,文化をなくすというのと同義です。文化のない社会は,
もしかしたら灰色かもしれません。この辺をうまく組み合わせた
ところに,問題解決の条件が潜んでいるように思うのですが,
まだうまくまとまりません。
#言語が共通でない,という大障害もありますし。

(2)(3)は,分集団(げんごろうさん流にいえば集団生物,進化
遺伝学の言葉ではディーム)の成長の力学なので,手段を武力
から情報にシフトさせることによって,現実の軍事衝突は回避
できる可能性があります。情宣を主な武器にするということで
す。それによって固有の文化がなくなるとすれば,文化的抹殺
には違いなく,被征服集団にとってはつらいことには違いあり
ませんが,(A)情報の伝播は征服と同時に,必然的に融合を含む,
(B)自然環境への直接的破壊を伴わない,という2点から,ぼく
の私見としては,情報を武器にする方がマシと考えます。

(4)はちょっと違っていて,個人が自分の頭で考えることを
放棄したときに,独裁者の暴走が始まると思うので,集団を
構成する各個人がきちんと自律性を保つことを心がければ
かなり有効な防御になるのではないかと思います。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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