[BlueSky: 4701] BT 農薬の海中での影響


[From] "IWAO, Keisuke" [Date] Mon, 2 Dec 2002 11:50:51 +0900

山口さん、みなさま、こんにちは。
いわお@桃山学院大学です。しばらくROMしておりました。
BTというキーワードに反応して出てきました。

[BlueSky: 4694]にてMasashi Yamaguchiさんが02.12.1 6:41 AMに書きました:
>最近ではBT農薬が急速に普及して使用されているようですが、
>有効成分やその分解物(それらの活性は?)が農地から外に
>でているのかどうか、海においてはどのように変化してどのような
>挙動があるだろうかというのが心配です。

少なくともBT農薬の有効成分である毒素の性質から推測できるかぎりでは
他の農薬のような問題が起きる心配はないと私は思います。

BT農薬の有効成分は、Bacillus thuringiensisという細菌が作り出す毒素タンパク
です。むきだしのタンパク質が野外で長期間そのまま残存することは考えにくいです
し、自然界にもともと存在するものですから分解経路も当然存在すると思います。

この毒素は、特定の昆虫の腸内で腸液により分解されて初めて活性を持ちます。腸壁
にとりついて穴を開けてしまうことで昆虫を死に至らしめます。この毒素と、毒性を
発揮する昆虫群との間には厳密な対応関係があり、頻繁に使われているチョウやガ(
鱗翅目昆虫)の幼虫に効くものも、他の昆虫群には無害です。同じ昆虫類でも一部の
ものにしか効かないのですから、さらに遠縁になる海中の生物に有害であると考える
根拠はありません。


と、こう書いていて一抹の不安が胸をよぎるのは、「そんなこと言うけれど、これま
でもそうだったように予想もつかないことが起きてとんでもないところに害が出てい
るかもしれないじゃない」と考える人の不安を払拭することはできないのだろうなぁ、
という悲観的な思いがあるからです。どうなんでしょうね。山口さんはプロの科学者
でいらっしゃるようなのでそんな心配はないと思いますが。あるいはもっと具体的に
BT農薬が害を引き起こす筋書きを検討されていらっしゃるのでしょうか。

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巖 圭介(いわおけいすけ)
桃山学院大学社会学部
iwao@andrew.ac.jp
http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/iwao/


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