[BlueSky: 4681] Re:4680 日本の農業


[From] "Kaz. Yokoyama" [Date] Sun, 24 Nov 2002 12:04:43 +0900

横山です。
早速の反応を有り難うございます。うれしくてちょっと長文です。

> 始めたばっかりですから、まだ評価できるほどのものはありません。

小刻みな評価とその都度の小刻みな軌道修正が複雑系制御の鍵です。
いわゆるハーネシング、牛とか馬と付き合ってると体感できますよね。

> 稲作も畜産も林業も国なり県・市町村の主導で補助金やその他の体制が
> 大枠で決まるわけですが、肝心なこと、「どこの出口に向かってわれわ
> れは進んでいるのか」については何も示唆するものがないことも事実で
> す。

おそらく誰も出来ないでしょう。たとえ出来たとしても、それらはほとんど
原理的にはずれです(たまたま当たることはありますが)。
私が一番問題だと思うのは、そんなことを誰かに決めて貰おうと心のどこかで
願っていることです。だから原理的にいつも外れを掴まされて、怒る羽目に
なる訳です。次回からは、そう言う尤もらしいことを言う人が居たら、端から
当たらないと思って聞いていた方が良いでしょう。ただ、聞く耳を持たない
のはもっと悪い。貴重な情報源ですからね。集められる限りの情報を集めて
自分で判断し、小刻みにハーネスすれば良いのです。

> 大規模化や機械化を進めていけば、中国やアメリカその他との農産コス
> トに対抗できる日が来るのか、ということです。
> グローバルシェア獲得のストーリーが無い以上、経済優位の議論がリア
> リティを持つものとはならないでしょう。

これはその通りです。大規模化については一歩先を行く北海道を見れば良く
分かるでしょう。ここ十勝地方では、確かに今は農家は豊かですが、先の
ことを考えると誰もが不安感を持っています。つまり、大規模化の行き着く
先に今まで信じてきた未来像がどうも無いのではないかと感じ始めています。
理由は澤口さんが指摘した通りです。国内で比較優位を保っていられる間は
良いでしょうが、国際比較となると全く中途半端な規模です。労働コストを
計上すれば何れは皆赤字に転落してしまいます。

> 中国が経済爆発や人口爆発を起こして国際的な食糧危機でも起これば別
> ですが。

これは大丈夫です。必ず起きます。時期は原理的にはっきり言えませんが。
ただ、そのことを考えるといつも憂鬱になりますね。

> 労働者はいつの時代も労働の切り売りで生計を立てるわけですが、現代
> のようにフラグシップがどこにいるかわからない状況ですと、よほど高
> 度な専門性をもっていないと、それ単独で社会にニッチをつくることは
> 難しいと思います。

その通りです。私は仕事柄システムの多様性と安定性について考えること
が多いのですが、多様性を欠いたシステムは早晩必ず滅びます。それは
生命システムが多様化を選択して生き残ろうとしていることからも自明
ですね。ただ、東大の安富さんたちのモデルでは、多様性が高いシステム
もいつか必ず絶滅すると予言しています。確かに滅びの日は最も遅くやっ
て来ますが、その日には一気に滅ぶと言う不気味な結果を予測しています。
これは熱帯林が伐採により大木の覆いを奪われた途端一気に砂漠化する
のに似ている気がします。

> 専門性に自信がなければ、個人における総力戦とリスクヘッジが必要で
> す。

そうですね。どちらにしても複雑系の安定性は「翻弄され続ける」と言う
安定性「動的安定」です。その時自分を生き残らせるためには、自分に
対しても絶え間ない投資とハーネシングが必要です。試験に受かったから
定年まで安穏などと言う世界は大凡極楽とんぼな幻想です。その意味で、
日本はかなりまともな世界になってきたと思います。50代でリストラ
と言う話を暗い話しにするのはマスコミのプロパガンダで、競争力がない
産業で飼い殺しにならずに済んだと喜ぶべきでしょう。もっとも、脳力
が伴えばですが。

> 通常の会社などにおきましても不採算部門はアウトソーシング、採算部
> 門は独立法人化してより広範な展開を狙うというのは常識ですし、これ
> を個人レベルでやっても悪いことはないでしょう。

全く同感です。その際、農業を細々としてでも無借金経営していると言う
のは何も持たざる者ホワイトカラーよりも相当有利ですね。文字通り喰う
に困りませんから(笑)。「大都会は巨大な難民キャンプだ」はこのML
の創始者(誰だったけ)の言で、感激したので良く覚えていますが、農の
人は「食」の生産者ですからね。最後はやっぱり強いですよ。

> もちろん、個人の場合は採算・不採算は金融経済のそれとイコールでは
> なく、環境経済として採算を考えることになるわけですが。

そう言う新たな価値観の創造が最も大切です。昨今の食べ物に関するやや
ヒステリー気味の騒ぎも日頃食べているもに関して自らが価値を見積もれ
ない一種の思考デバイドのような現象に見えます。この裏返しが、リスク
に関する判断力の欠如にも端的に反映される。だから、テレビが「何か」
(将に「何か」で実は何を言っているのか理解できていない)言っている
と直ぐに買わないと言う反射的行動を起こす。そのくせ、テレビが何も
言わなくなると、あるいは「何も言っていないもの」は全く無防備に
大量摂取するという変なことが行われています。こう言う、付和雷同的
食行動が日本の農を随分歪めていると思いませんか?

先日ちょっと参加させてもらった「環境を守る農業」と言うフォーラム
でも、口では「環境に関心がある」と言っている消費者の買い物かごの
中を覗くとちゃんと傷一つない、野菜が入れられてたという話が紹介さ
れていましたね。

> また、システム化が進みすぎると教育の再生産もできないことも確かなこ
> とです。
> 参加者が自律思考できないシステムはいずれ破綻すると思います。

破綻は避けられない訳ですからいっそその後を議論した方が実りある
のかも知れません。私など、所得半減化による真の豊かさの再発見、
是しかないように思えますね。是にしても、脳力のある人にだけ訪れる
福音なのでしょうが・・・

来年2月(日にちは未定)、「安心な食、未来の農業、選択−日本人は
何を食べるのか?」と言う討論イベントを東京で開催すべく、準備中
です。当日はリアルの議論バトルとネット会議、公開掲示板、メール
と言う四元マルチで行います。また、終了時にはそれぞれの参加者に
よる投票により結論を出します。詳しくは私たちNPO/DGCbaseの
掲示板に反映させます。我こそと言う論客の参加を期待します。
と言うことで澤口さん、会場で待ってます。

NPO/DGCbase HP:http://www.dgcbase.jp/
注)脳力とはペーパーテストで計る所謂学力とは全く同一ではありません。


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