[BlueSky: 4467] Re:4466 農業の新しいかたち


[From] Igarashi Tuyoshi [Date] Wed, 10 Jul 2002 01:16:04 +0900

こんにちは、五十嵐です。お返事が遅くなってしまいました。

横山さん:
> もし宜しければ製作に当たったディレクター氏にも転送したいのですがお許し
> 頂けるでしょうか?

このメーリングリストでの葛貫さんからの案内がなければ、
きっとこの特集を見逃していただろうと思いまして、
メーリングリストに感想報告しましたが、番組の感想なら、
まずその番組に送るのが筋としては正しかったかも知れませんね。

横山さんにはお手数をおかけしますが、このメールも含め、
転送する価値があると評価していただけたのなら、
大変うれしく思います。

> > 消費者に対し、「ほとんど掛かっていないと思ってもらって結構です。
> > 全然心配ない量です。」という心配なやりとりを放送。
> > その後に生産者が自分のトマトをカメラの前で食べてみせる。
> > という、狂牛病騒動を彷彿とさせるパフォーマンスを披露。
>
> 撮影を直ぐ横で見ていた者としての感想ですが、政治家のパフォーマンスとは
> かなり違うと思いますね(確かにちょっとくさいですが)。政治家氏が食べた
> 牛が発病した地域や牧場の牛だったかどうかは甚だ怪しいですが、放送のトマト
> は本当にその場のトマトを直前にもいだものです。しかも全く洗っていません。
> 採りたてを手で拭っただけです。

横山さんからの返信を見て大変疑問に想うのですが、
採りたてのトマトを農家が洗わず食べることで、安心感や
安全性を表現できるとお考えなのでしょうか。

政治家の食べている牛肉が、狂牛病を発症した、まさにその牛の肉
だったとしても、パフォーマンスの怪しさには何ら変わりはないと思います。
普通、牛肉やトマトは人間の食卓に上る可能性のあるモノとして、
一般に「食品」の範疇に入ると考えてもいいと思います。
これを人間が「食べてみせる」ことで示される「安全性」や「安心感」って
どういう程度のモノなのでしょうか?
もともと人の食用に供されているモノを、人間が食べたからってなんの
新たな安心感も示されていませんし、人間が食べたことで特別安全とも
考えられませんよね?

普段食品としては考えられていないモノならまだしも、
「食品」として通常考えられている牛肉やトマトを、
「なんと、この{牛肉|トマト|食品}は、{大臣|農家|人間}が食べること
ができるんですよ!!」なんていうアピールは、どう聞いてもおかしくはな
いでしょうか。

このおかしさが、「牛肉を大いに食べる会」がニュースになった理由だと
思うのですが、「食ってごまかそうとしてる」意図が画面から感じ取れる
から、かえって心配や不安が高まってしまうわけですよね。

おいしそうに食べているか、という意味では、生産者の方が、大臣なんか
よりもはるかに上手だったと思いますが、それは、おいしさをアピールする
シーンでこそ生きてくる話であって、狂牛病騒動や牛肉消費の落ち込みの話
に引き続いて牛肉を食べていたりするときと同様に、残留農薬の話の"後"に
生産者がトマトを実食する映像が来ると、おいしさをアピールする
シーンとは受け止めにくくなるように思いますが、そのようには
思われませんでしたでしょうか?

件のビデオチャットの収録順番が実際にはどのように進んだのか、
僕にはわかりませんし、放送されなかった部分や背景についても教えていた
だくまではまるでわかりませんでしたが、
1.生産農家がカメラの前で実食して、消費者に「みずみずしさ」
「おいしさ」をアピール。
2.消費者からの残留農薬についての質問には、「種子消毒で1回、
苗を作るときに培土の殺菌で1回、成長後はタイミングを見て
防かび剤を1回の合計三回防除しています」などと、生産者が
直接回答する。

というように編集した映像と、消費者からの質問のあとに、
生産者の実食が来るのとでは、受け手の印象がまるで違うと思います。
実際の放送ではビデオチャットの映像が2つ連続しているように
編集されて見えるので、まるで「食ってごまかした」かのように感じました。

本当はあの実食は「食ってごまかした」シーンでは全然無かったの
だろうと思いますし、トマトは間違いなくおいしかったのだろうと
思いますが、そのおいしさが僕にはうまく伝わりませんでした。
「食ってごまかす」ような浅はかな方にはとても見えませんし、
「農家が食べてみせる」程度のことで保たれるような信頼感を、
都会の消費者と結ぼうなんて、さらさら思ってないだろうと言うことは、
あの放送からでも理解できますし、葛貫さんからご紹介いただいた
ページを少し眺めただけでも、WBSの放送映像から受けた印象の奇妙さが、
生産者の姿勢を反映したものではないことはわかります。
編集による意図的な映像だと僕が感じた部分を理解していただけなかった
ようなので残念ですが、膨大な撮影時間の中から採用する映像として、
もっとも農家の方々が放送して欲しかったシーンだったのでしょうか?

> > 全体を通して見ての勝手な印象ですが、
> > 農薬をかけまくりながら、「安心」を訴える生産者を、メーカーや商社がよっ
> > てたかってIT技術で翻弄している。
>
> こう言う見方もあるのかという印象です。放送直後から局には感想の電話が
> 掛かりその記録を見る限り、大変好意的な内容だったものですから。

五十嵐:
> という映像にしたいかのような、意図のある編集を強く感じました。
面倒くさい書き方をしてしまったせいでしょうか、
上の一行を一緒に引用していただけなかったので、僕の発言をどこか
誤解されているのではないかと思います。

全く同じ映像でも、効果音やキャプションやシーン順番を変更すれば
番組から受ける印象はまるで変わってしまうことでしょう。
IT技術を持ったメーカーや商社が、先進的な農業者の生産現場を
IT商品販売の新市場としてとらえているという、
販売サイドのビジネスではなく、
商社やメーカーが提案するIT技術を駆使した、生産者サイド
のビジネスを取り上げるものだと、この放送に期待していたのが、
映像から受ける印象が大きく食い違った原因なのかも知れません。
また、邑瀬さんからのご指摘のとおり、
> 「食の安全」とは元々のベクトル(方向性)が違います。
ということを、端から理解していなかったことも大きいと思います。

> 生産履歴も信頼できないと言うことですから、自分で作るしかないですね。
> ただ、消費者の気持ちと言うのはそう言うものかもしれませんね。

たとえば虫食いのない「キレイ」なほうれん草が一把あったときに、それが
生産者のたゆまぬ虫取り努力の賜物なのか、殺虫剤のすばらしい薬効に
よるものなのか、厳しい選果基準に選ばれたものなのか、はたまた虫が近づ
けないような、何か装置工夫によるものなのか、などという事の判断に
利用できるのが、信頼される生産履歴のポイントなのではないのかと
思っています。
> 「ほとんど掛かっていないと思ってもらって結構です。
> 全然心配ない量です。」という心配なやりとり
この回答では、直前に映像で紹介されていた生産履歴・作業日誌が
生きていませんが、こういうところで活用するために生産履歴を
残しているのではないのでしょうか。
わざわざ生産履歴の生きてこないやりとりを放送に採用したのは、
何故なのかはわかりませんが、積極的な情報公開に取り組んでいる
意識の高い生産者像とのずれでも描き出そうとしているのかと
思ってしまいます。

シンポジウムで情報公開についてどのようなお話がなされたのか、
参加していないのでわかりませんが、誤解を招くような方法で
中途半端に情報を公開すると、その半端な部分に注目が集まってしまって、
こんな事なら最初からもっともっと公開しておけば良かったと
「後悔」する羽目になるというお話は理解できます。
大阪雪印の社長が引き合いに出されたりしますよね。

> 番組の制作者の真の意図も、事実を知った「その後」あなたは一体どうする
> のか、この点に有るのかも知れませんね。

番組の編集をする方の苦労というのも並大抵のものではないのだな、
と思いますが、残念ながら僕には制作者の真の意図はまるっきり
映像から読みとれていなかったようですね。

長いメールになりましたが、いくら書いてもなかなかうまくまとまりません。
読みにくい文章を最後までお読みいただきありがとうございました。

--
Igarashi Tuyoshi <tuyoshi@anet.ne.jp>




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