[BlueSky: 4466] Re:4459 農業の新しいかたち


[From] "Kaz. Yokoyama" [Date] Mon, 8 Jul 2002 10:33:52 +0900

五十嵐 剛さんこんにちは。

横山と申します。たまに書き込むと長文に成ってしまいスミマセン。

> かなり期待してこの放送をみましたが、編集者の意図的な映像が、
> 効果的ですばらしかったです。

五十嵐さんの御意見大変興味深く拝読いたしました。
未来農業集団の活動をバックアップするNPO/DGC基礎研究所(愛称DGCbase
http://www.dgcbase.jp)を主催する者の一人として真摯に聞かせて頂きました。
有難うございました。

もし宜しければ製作に当たったディレクター氏にも転送したいのですがお許し
頂けるでしょうか?

> 消費者に対し、「ほとんど掛かっていないと思ってもらって結構です。
> 全然心配ない量です。」という心配なやりとりを放送。
> その後に生産者が自分のトマトをカメラの前で食べてみせる。
> という、狂牛病騒動を彷彿とさせるパフォーマンスを披露。

撮影を直ぐ横で見ていた者としての感想ですが、政治家のパフォーマンスとは
かなり違うと思いますね(確かにちょっとくさいですが)。政治家氏が食べた
牛が発病した地域や牧場の牛だったかどうかは甚だ怪しいですが、放送のトマト
は本当にその場のトマトを直前にもいだものです。しかも全く洗っていません。
採りたてを手で拭っただけです。

都会の消費者は農薬のことを非常に気にされますが、薬の影響を一番身近に
受けるのは農家自身です。ですから一番使いたくないのは他でもない農家です。

> 商社やメーカーの担当者が顔を出し、ビジネスとしての期待を表明。

最初ディレクター氏の提出した台本は農家のドキュメンタリーだったそうです。
それを見たデスクが即却下、番組の名前「ビジネス」に即した内容に書き換え
られたとか。主客が入れ代わって農家を取り巻く企業が主役になったそうで、
ディレクター氏も残念そうでした。

私は、農家だって事業主ですから、ビジネスとして主役を務める資格十分と
考えますが、大企業を巻き込みつつ展開する新たな農の形と言う味付けでも
良いかと今では思っています。

もっとも、農家が大企業と付き合うことを面白くないとする方もいる様です。
どうも、この国では未だに「生かさず殺さず」の伝統が心情的にあるようで、
農地に這いつくばっていないと健全な農民ではないと思っているみたいです。
この点は実際に首都圏の生協のバイヤー氏に聞いた話ですが、画期的な技術
革新で一家4人6ヶ月の労働で1000万円の利益を実現し、毎年海外で
バカンスという農家からは生産物を買わなくしたそうです。私はこう言う
農家がもっと一杯登場してくれると、新しく農業を始めようと言う人が
たくさん出てくれて良いのに思うのですが。

> 全体を通して見ての勝手な印象ですが、
> 農薬をかけまくりながら、「安心」を訴える生産者を、メーカーや商社がよっ
> てたかってIT技術で翻弄している。

こう言う見方もあるのかという印象です。放送直後から局には感想の電話が
掛かりその記録を見る限り、大変好意的な内容だったものですから。
内容によってはストレス発散しているのかと思うくらい辛辣なものが来る
そうですから、関係者としてちょっとほっとしました。
さすが環境に感心の有る方は目のつけ所が違うようですね。

> IT技術で生産履歴が確認できるような『安心』は信頼に値しない。
> という事を示して、逆説的な表現方法で「食の安全」が危機的状況に
> ある事を訴えたかったのかも知れませんが、なんにせよ、農家の思惑とは
> 逆の効果を示しているように思いました。

生産履歴も信頼できないと言うことですから、自分で作るしかないですね。
ただ、消費者の気持ちと言うのはそう言うものかもしれませんね。
放送の次の日に札幌で行われた「信頼は情報公開から」と言うシンポジウム
で講演したのですが、中には情報公開が「後悔」にならないかと言う意見も
聞かれました。それを言った方は、五十嵐さんの意見を聞いたら大変満足
なさるでしょうね。

> 町のスーパーで買った特売トマトに農薬が掛かっているのは許せても、
> 生産者の顔が見えるような関係の、「安心トマト」シールがついた
> ものにまで農薬が掛かっているのは、納得がいかない気がしました。

それで?納得して特売所のトマトを買って食べるのですか(笑)?
激安の輸入野菜とも知らずに?私は、本当のことを知って選択したい
ですけどね。

そう言えば、画面に登場する農家さんが「消費者と直接会話するように
なると、畑づくりが今までよりもっと張り合いがでた。収穫物があの人
の所に行くんだなって思うと、もっと一生懸命作ろうと思うようになった」
と言っていました。生産者と消費者がお互いに知り合って好きになるって
素敵なことだと思いますね。IT技術がそのお手伝いが出来れば良いなと言う
のが私達の素直な願いです。

嘗て中澤さんが、「食料生産手段を持たない1200万人の人がひしめく
東京は巨大な難民キャンプだ」と仰られたのを覚えていますが、そのこと
の意味を考える時、それ事体の深刻さもさることながら、自らが難民で
あることを知らないことの方がもっと恐ろしい気がしていました。

お上は常々「知らしむべからす、依らしむべし」と言うそうですが、
私は全ては「事実を知る」ことから始まると考えています。

番組の制作者の真の意図も、事実を知った「その後」あなたは一体どうする
のか、この点に有るのかも知れませんね。


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。