[BlueSky: 4344] Re:4342 京都議定書を批准しても対策は幻


[From] Minato Nakazawa [Date] Wed, 05 Jun 2002 02:12:18 +0900

中澤です。

gengorou さんは書きました:
>何をするにしても車の、私なので、私が、なぜマイカーなのかを
>考えてみます。
具体的に理由をあげてくださってありがとうございます。
想像もしなかったような理由もあって,勉強になりました。
ただ,これらの理由の根底に,「車が好き」という価値観が
どーんと横たわっていそうな感じがしてしまうんですよね。
ぼくの偏見でしょうか?

それに,ゲンゴロウさんが挙げてくださった理由の大部分は
インフラを整備すれば車じゃなくても満足できそうに思います。
ちょっと逐条的反駁というやつを試みてみますと,

>【通勤の場合】
>○ 雨風をしのげる。ドアtoドアで、私には、傘がない♪
都市部では,歩道のアーケード化や横断地下道の整備をすれば
徒歩でも大丈夫だと思います。
それに,ひどい暴風雨でなければ,傘をさして湿気を感じながら
歩くのも悪くないものです。雨を含んで美しくなったアジサイや
ツユクサの花を愛でることができるのは,歩くからこそだと思います。

>○ 自家用車を、時に社用に使う。社用の車を自家用車にしている
>  人もいる。この場合、駐車場は自宅にしかない場合が多い。
>  (都心は駐車場が高いので経費節約)
もう3年前になりますが,[160]で大塚さんが提案された裸地税
http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/mllogs/bluesky/160.html
を導入すれば,駐車場をもっているだけで経費がかさむことに
なります。

>○ ギューギュー詰めの電車に乗らなくて済む。満員電車に乗ると、
>  自分が家畜に思えてきて、吐き気がする。(チカンに間違われ
>  ないかという、アホな心配もない。)
ぼくも満員電車は嫌いですが,あれは電車の運行スケジュールを
経済性優先で最適化するのでなく,乗車率を100%未満に抑える
ことを優先にして最適化して組んで,かつフレックス制などで
時差通勤を可能にすれば,かなり解消できると思います。

>○ 朝が弱い私は、起きてから、徐々に目を覚ますことができる。
>  車の中で朝食、ひげ剃りも出来る。
レトリックだとは思いますが,目が覚めていない状態で運転できる
わけではありませんよね。運転しながら眠るわけにはいきませんが,
電車やバスの中なら眠ることもできます。電車で髭剃りしている人は
まだ見たことはありませんが,化粧を直している女性は,最近では
かなり普通にみかけます。自分からちょっと離れた空間を意識から
切り離してしまうことによって,心理的に個室と同じ状況を作りだす
ことができるようになったのではないか,と論じている文章を読んだ
ことがあります。エドワード・ホールという人が書いた「かくれた
次元」(みすず書房)のコトバを借りれば,日本人の社会距離感覚
が変わってきているということなのでしょうが,つまり,価値観が
変われば,電車の中であろうと,バスの中であろうと,一定の
空間さえ安定して占拠することができれば,朝食も髭剃りもできる
ということです。それがあたりまえのことであるなら,誰も気に
しませんよね,たぶん。

>○ 一時的にオフィスになる。書類作り、商談など(副業も出来る)
ぼくはよく新幹線に乗るのですが,新幹線のオフィスとしての環境は
なかなかのものです。通算すると3000時間以上,新幹線内でノート
パソコンを使って仕事をしていますが,不便を感じたことはありません。
ひかりレールスターの指定席の最前列はオフィスシートという
席になっていて,テーブルが広く,電源もとれます。ひかりレールスター
の8号車には4人がけの個室もあって商談もできます。
ふつうの通勤電車でも,本数を増やして混雑しないようにすれば,
そういう環境を提供することは不可能ではないと思います(とりあえず
採算を無視すれば,ですが)。

>○ 仕事帰りに、どこへでも行ける。
そんなに仕事帰りにいろいろ行く必要がありますか?
それと,とくに都市部だったら,車の置き場を考えなくていいので,
車じゃない方がどこへでもいけるんでは? と思いますが。

>○ 費用は電車やバスよりはるかに安い。(自分が運転手だから?)
>  遠距離で高速を使っても、費用はトントンで、もう一人乗せている
>  なら、感謝もされて、費用は半分になる。4人なら1/4。。。
でも,車の代金とか駐車場代とか車検とかメンテナンスの費用を
考えても安いと言い切れますか?

>○ 荷物を多量に載せられるので、日曜雑貨から仕事上の道具まで
>  常に準備しておける。着替えも用意できる。
これは職場と自宅の両方に用意しておけば済むことのような気がします。

>○ 多量の買い物ができる。屋根の上には座布団そ敷いて、材木や
>  ベニヤ板も運べる。
>○ 郊外型大規模アウトレットショップ、大規模専門店へも行ける。
大きなものだったら配送してもらえるので,自転車で行っても
大丈夫です。実際,ぼくはそうしています。

>○ 歩けない母をどこにでも連れて行ける。
>  親戚の高齢者の方などの送り迎えサービスが出来る。
頻繁でないと思われるので,介護サービスとかタクシーを利用すればいいことだ
と思います。

>○ 家族で出かけたときに、誰かが具合が悪くなっても休ませる
>  ことが出来る。
車が苦手な人は,車の中では休めません。道端に寝転がるのは
なかなか気分がいいです。

>○ 公共の交通機関ではペットお断り。。
そうですか? バスケットに入れた小型犬などは,よく電車に
載せている人を見かけますよ。引越しのとき以外で,大型の動物を
遠方に連れて行く必要は,どれくらいあるでしょうか? というか,
そもそも周りに十分な運動をさせる環境がないならば,大型動物
を飼うべきではないと思いますが。

>○ 仕事帰りに、疲れたときや、寝たいときは、カプセルホテルより
>  居心地がいい。
>○ 客や知人との待ちの場合、休む場所が確保されている。
>  席を倒して寝てしまうときもある。
>○ 足をがに股に広げてだらしない恰好でリラックスできる。
>  ガラス一枚なのに、この安心感は?なんだろう。。
さて。
この3つが,たぶん,ゲンゴロウさんの車への愛着をあらわしている
のではないかと思いました。個の空間の創出機能というか。
休むのだったら,カプセルホテルの方が体を伸ばせる分,疲れは
取れてもいいと思うのですが,それでも車の方が落ち着くのだと
したら,そこに車というハードウェアへの愛着があるのだろうなあ,
と感じるわけです。
その愛着をねじふせてマイカー通勤を半減させねばならないとしたら,
大きな抵抗にであうだろうと思われます。前のメールで書いたのはそういう
意味です。

>100円ならば、時々、乗って上げる。
長野市や山口市のコミュニティバスというやつは,全線100円です。
でも,若い人はあまり利用していないようです。運行頻度が少なすぎ
ることと,路線網が粗すぎることが原因じゃないかと思います。
パプアニューギニアやソロモン諸島で都市を走っている,PMVという
マイクロバスは,だいたい全線15円から30円くらいですが,いつも
満席に近い状態です。自家用車の保有率が圧倒的に小さいからという
こともありますが,パプアニューギニアのPMVの良いところは,
停留所でなくても停まってくれるとことです。運行ダイヤもあり
ませんが,ともかく網の目のように張り巡らされた決まった路線を,
何台ものマイクロバスがかなり頻繁に走っているので,何番のバスが
どこを走るかさえわかっていれば,あまり待ち時間もなく好きなところ
にいけるのです。小回りもききます。どうも日本のバスは大きすぎる
んじゃないかと思いますし,いけない場所が多すぎますし,本数が
少なすぎます。
その辺りを改善すれば,利便性は向上しますが,それでも車に
愛着がある人は車を使いつづけそうな気がします。ゲンゴロウさん,
70円だったら,本当に車を処分できますか?

ちょっと言い過ぎかもしれません。
失礼があったかもしれませんが,ご容赦いただければ幸いです。

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Minato Nakazawa <minato@ypu.jp>
山口県立大学看護学部 公衆衛生学・看護健康情報学
Phone 083-933-1453 / FAX 083-933-1483


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