[BlueSky: 4333] 捕鯨に関する世論調査データ


[From] Minato Nakazawa [Date] Sun, 02 Jun 2002 21:23:44 +0900

中澤です。明日の講義の準備が,凝り過ぎでまだ
終わらないので研究室にいます。ぼくは学校給食でクジラの
ベーコンが出てきた世代なのですが,先週末に,クジラの
「おばいけ」というものを初めて食べました。尾の部分をさらして
ぷりぷりしたゼラチン質を残し,それを酢味噌和えで
食べるというものですが,山口の居酒屋では結構あるみたい
です。小郡駅の売店では,お土産用にクジラの缶詰(大和煮)
が売られています。「ミンククジラは増えています。適正に
管理しましょう」(若干文言は違うかもしれませんが,大意
は外していないはずです)と書かれています。
先日,新幹線の中で食べたのですが,ジューシィで美味でした。

さて,捕鯨に対する農水省の立場というか日本の国としての主張は,
小松正之氏の「クジラは食べていい!」(宝島社新書)を読むと
かなり明快にわかります。ぼくは基本的には小松氏の説明で
納得しました。たぶん,イデオロギー論争や圧力団体の思惑を
含めた政治的駆け引きの場となってしまったIWCよりもCITESの
方できちんと議論をして合意を作っていく方が見込みがあるから
そっちから攻めていこうとする戦略は間違っていないと思います。
イデオロギー論争で合意ができるはずがないですよね?
IWCの総会は科学委員会の報告もまったく無視して議論がなされて
いるので,そもそも合意形成を目指していないのだと思えてきます。

今回のIWC総会は下関であったので,山口では大きく扱われて
いましたが,ほとんど何も採択されないだろうということは
やる前から見えていたので,ある意味では茶番劇だということは
たぶん,各国代表はわかってやっているのだと思います。

ところで,捕鯨に関する世論調査が,この3月に行われていたのですね。
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/h13-hogei/index.html
に結果が載っていました。5000人の標本で,回収率も低くないので,
かなり日本人成人の代表性がある回答だと思いますが,

> Q18 〔回答票12〕我が国の捕鯨問題に取り組む姿勢として
> 次の4つの基本的立場を打ち出しています。あなたが重要だ
> と思うものをこの中からいくつでもあげてください。(複数回答可)
>(ア) クジラは,他の生物同様に持続的利用の原則に基づき
> 種を保存しながら利用されるべき
>(イ) クジラを含め野生生物は,最良の科学的事実に基づいて
> 管理し利用されるべきであり,科学に反する感情や政治的要素
> を管理や利用に持ち込むことは不適切
>(ウ) 人口の急増による食料供給不足解決のため,海洋生態系
> の自然の生産力を活用すべきであり,クジラを含む世界の海洋
> 生物資源の管理と利用を図る
>(エ) 食習慣,食文化はそれぞれの地域のおかれた環境により
> 長い時間をかけて歴史的に形成されたものであり,相互尊重の
> 精神が必要
> その他
> 特にない
> わからない

で,本質的には同じことを言っているのに(ア)を選んだ人が53.1%で,
(イ)を選んだ人が25.3%という温度差が,容易に合意ができる議論の
水準を示唆しているように思いました。こういうとき,ナッシュや
ノイマンが仮定したような(そして多くの経済学が仮定しているような),
人間がデータと条件さえ揃えば合理的判断をするというのは,あまりに
現実から遠い仮定だと感じます。ナッシュが打ち立てたゲーム理論では,
さまざまなコンフリクトに最適戦略が存在しうるわけですが,利得行列自体が
非定常的でプレイヤーによって異なる場合(そして現実は往々にして
そういうものであるような気がします)の最適解というのはどうやって
求めたらいいのだろうか? と気が遠くなります。

最後の方はちょっと説明不十分ですみませんが,ご参考まで。
P.S. 温暖化防止「長野モデル」はまだ読み了えていないので,そちらの
話はまた後でお送りします。

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Minato Nakazawa <minato@ypu.jp>
山口県立大学看護学部 公衆衛生学・看護健康情報学
Phone 083-933-1453 / FAX 083-933-1483


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