[BlueSky: 4334] Re:4323  排出権を買っても金は払うな


[From] "ICHINOSE,Takeshi" [Date] Mon, 03 Jun 2002 00:32:05 +0900

尼崎市の一ノ瀬です。

 小宮さん、伊東さんのご意見;

「排出削減できない部分は、ロシアから排出枠を大量買い付けして
穴埋めしよう
「その費用0.8兆円は、ODA削減でまかなおう

は、現実的かもしれませんが、賛成できません。

 私は、排出権は、形式的に購入したことにして置いて、実際の支
払いは北方領土問題が一応の解決を見るまでは、見合わせるべきだ
と思います。その間、購入費用は毎年積み立てて、ロシア以外の国
々の省エネ投資支援のために用いるべきだと思います。どのみち買
い手は日本ぐらいしかないのだから、実行不可能な話ではありませ
ん。(日本も、これぐらいの変化球は投げるべきだ)


理由1.
 ODAに無駄が多いからと言って、それを無駄なことに使って良
いという理由にはなりません。
 バブル期の発想は根本的に改めましょう。日本政府には、今、本
当に金がないのです。

 また、ODAは政府支出ですが、炭酸ガス排出枠を購入するのは
個別企業の筈です(でなければ、温暖化ガス排出削減のインセンテ
ィブなど働かない)。同列に扱うのは、無理があります。(排出権
を売るロシア側の場合、売る主体がどこになるのかはよくわかりま
せんが)


2.
 実は、「ロシアからの排出枠購入」という話自体”EUの作戦勝
ち”という批判があります。

 ロシアとの経済関係の緊密さから言っても、ロシアの経済復興の
ための資金は、基本的にはEUが出さねばなりません。
 ところが、EU各国は、EUの取り決めによって(ユーロの価値
維持のために)財政支出の拡大に対して厳しい制限が課されている
から、出来れば金は出したくはない。そこで考えついたのが、排出
権取引のアイディアで、これを使えば、資金はアメリカと日本が出
してくれることになる。
 アメリカは、それがイヤで京都議定書から離脱してしまったが、
バカまじめな日本は律儀にも残って、一人で資金負担をしようとし
ているわけです。


3.
 加えて、よく考えてもらいたいのですが、ロシアから排出権を購
入したところで、温暖化ガス排出削減には大して寄与しません。
 本来、排出権取引というのは、

a)頑張って排出を削減したところが得をする仕組みを作って削減に
インセンティブを与える
b)削減余地の大きいところに資金を回して削減を促進する、

というふたつの狙いがあります。
 けれども、ロシアの場合、放っておいても経済低迷で排出量が大
幅に落ち込んで排出枠に大幅な余裕があるので、たとえ金を受け取
ったからと言って、それをエネルギー利用の効率化に投資するイン
センティブに欠けます。多分、それ以外のことに使われてしまうで
しょう。

 一体、日本は何のために毎年数千億もの金を払うのでしょうか?


4.北方領土問題

 敢えて指摘するまでもありませんが、旧ソ連は太平洋戦争後、日
本の領土を武力によって占領して、未だに居座り続けています。こ
のため、これまでもロシアとの間の経済交流については、色々な制
限を設け、一方で、国際社会に向かって、占領の不当性を訴えてき
ました。EUなどは、北方領土問題について「日本は譲歩してやっ
てもいいじゃないか」等と主張しているため日本の立場は楽ではな
いのですが、それでも筋を通そうとしてきました。(ちなみに、
EUがロシアよりの態度を取る理由は、上と同じで、日本に金を出
させたいからでしょう)
 当然、資金援助要請にも、厳しい制限を付けています
 (ムネオ君を除いて)。

 けれども、ここで、排出枠購入の為に巨額の金銭を提供すれば、
今までロシアに対して強硬な姿勢を取ろうとしてきたことが無駄に
なりかねません。排出権は、通常の商取引を越えて、排出削減のた
めのODA的な援助の性格を持つからです。
 すると、”日本は、既に巨額の援助を行っているのに、ロシアに
対してかたくなな態度を採り続ける理由が分からない”などとEU
辺りから揶揄されることになります。
 これでは非常に拙いのです。

 私は、必ずしも北方領土を取り返さ無くてはならないとは考えて
いません。
 しかし、不法占領には断固としてこれを容認しない立場は貫かな
くてはなりません。
 軍事力に出来る限り頼らずに国防の実をあげてゆこうとするなら
ば、領土問題で安直な譲歩をしては絶対にすべきではないのです。


以上



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