[BlueSky: 4099] Re:4097] 本当のゆとりって何?>自己レス


[From] Ken Goto [Date] Fri, 03 May 2002 19:28:19 +0900

小宮さん、皆さん

GW中も授業準備におわれ、ゆとりのない後藤@帯畜大です。

小宮さん【4097】:
> ただでさえ覚えることが多くなってきているんだから、みんな
> がみんな同じように理数の知識を習得する必要はないのかも。
> 生徒ひとりひとりの人生の選択肢が増えるのであれば、ゆとり
> 教育もいいかもなあと、最近思うようになりました。

この点は、教育を「個人の幸せ」のためのものと考えるか、「国家有為
の人材を育てる」ためのものと考えるか、という問題ですね。

えらい人たちが唱導すること、一般に流布している考え方は後者が優勢
であるような印象を受けます。明治以来の学制も、この線に沿って敷か
れてきたわけでしょう。富国強兵。殖産振興。

「個人の幸せ」という観点からすると、唯一、学歴をつけることだけが
教育の目的であるかのような構造になっていますね。まぁ、たいていの
子供が勉強は嫌い、としてきたことは、少なくとも、僕が小学生の時か
らこの方40年、変わらない事実だと思います。

しかし、僕は勉強が好きな、例外的な子供でした。で、どうしたら皆が
勉強を楽しく行うようになるか、というのが僕の一つのテーマです。

幼児をみればわかるように、誰もが知的好奇心や知的創造力が旺盛な時
代を経験しています。勉強を嫌いにさせる一つの大きな要因は、知識の
詰め込み教育にある、と僕は考えています。算数などが嫌いになる要因
は、これとは違って、恐らく、できない、わからない、からでしょう。
暗記知識の量を競わせたり、受験テクニックの熟練度を評価したりする
試験制度もまた、勉強嫌いをつくる大きな要因ではないでしょうか。

もちろん、知識によって世界像は作られますし、どのような思考も知識
なしには不可能です。しかし、こうした形で実際に有効となる知識は、
暗記知識ではありえず、生きた知識です。

ものしり博士にもそれなりの楽しみがあるでしょうから、それはそれで
よいのですが、現実の思考に有効となる知識は、実際にいろいろと活用
する経験を積んだような知識だ、と思います。

こうした観点から、教材を絞り込むという側面でのみ評価するなら、僕
は「ゆとり」教育に好意的です。

さて、理数嫌いの大きな要因としてもう一つ見逃せない側面は、教育制
度の問題ではなく、社会問題、環境問題にある、と僕は考えています。

いろいろあげるときりがないように感じられますが、例えば、忍耐力の
低下。ぐっ〜、と堪えて思考することが苦手になっている。これは、田
辺さんがとりあげた団塊世代と大きく関係すると思うのですが、団塊世
代が親になって、親としての「威厳」は低下するは、子供に何でも与え
すぎるようになった。もう一つだけあげるとすれば、急速な都市化に伴
って、野外での子供の遊びが全般的に少なくなった。つまり、創造力を
培う自然な遊びが減ってしまったわけですね。

田邊さん【4093】:
> 自己中心的な人間を育ててしまった、社会と教育機構こそ改善
> すべきであって、私はその原因を指導要領だけに押し付けるつもり
> はありません。
どのようにしたら改善できるのでしょうね。

戦中・戦前派が猛烈に働いた一つの動因は、彼らが物質的に貧しい暮ら
しをしてきたことにあるように僕には感じられますし、団塊世代が子供
にものを与えすぎたのも戦後の貧しい暮らしが苦い体験になっているか
らではないか、と感じられます。親としての威厳の放棄にも、民主主義
の浸透や、時代的な反権威の風潮があったからこそだ、と思われます。

言ってみると、時代としての不可抗力。と、結論付けてしまえば、なす
すべが見えてこなくなってしまうけれど、こうした時代としての不可抗
力を冷静に判断できるような眼を養うことを、教育目標の一つに掲げる
のも一つの手かもしれません。知識教育では、このような教育はできま
せん。国語の時間でも社会の時間でも、一つのテーマでじっくり議論す
るような、そういう授業が増えてくると、こうした眼が養われるかもし
れません。

「自己中心的な人間を育ててしまった」のは、田邊さんのおっしゃる通
り社会と教育機構にあるだろう、と僕も思います。地域社会で鍛えられ
るような教育プログラムがあると、少しは改善されるかもしれません。
地域や親が子供を躾ることが最も肝腎なのですが、それが余り期待でき
ないとすれば、公教育でその責任を負わなければならない、と思います。

・・・ただ、僕の時代にも、小学校や中学校で「連帯責任」という「指
導」が入っていました。班の誰かがへまをすると、班全員の責任
となる、というもの。こうした歪んだ道徳教育は(今も続いてい
るなら)止めて欲しい、と思います。



後藤 健
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