[BlueSky: 3936] アメリカに正気に帰ってもらうための演説を広めよう(後編)


[From] mataro [Date] Thu, 14 Feb 2002 22:23:26 +0900


こんばんは。遠藤@埼玉です。
「アメリカに正気に返ってもらうための演説を広めよう」の後編をお送りいた
します。 

(転送ここから)
・世界を「正義と悪の戦い」に集約

 ジョージ・ブッシュが演説のなかで語る世界は、ほぼ原始的と言ってもいい
くらい単純なものである。なんともずる賢いペテンである。西部劇映画のよう
に、一方に悪者がいて、他方に善人がいて、そしてアメリカがどっちが善であ
り悪であるかを決めるというのだ。ブッシュは、アメリカが「何千人ものテロ
リストを捕らえ、逮捕し、世界から駆除した(殺害した−ヤン・エ−ベル)」
のだと自慢する。彼はレーガン元大統領がソビエト連邦を悪の帝国と呼んだの
にちなんで、北朝鮮とイランとイラクが「悪の枢軸」を構成していると言う。
われわれは悪に勝利しなければならず、「悪は現実に存在しており、これとは
戦わなければならない」と。
 このように絶対的な悪と絶対的な正義、つまり黒と白が存在するという。す
なわち「われわれと彼ら」である。今ではテロリズムという言葉が共産主義に
置き換えられた。冷戦のレトリックが復活し、現実の世界のあらゆる複雑さが
この公式にあてはめられる。もしこの世界観が国内向けだけに提示されたのだ
としたら、私のようなヨーロッパ人は、アメリカ人は賢く教養があるはずだか
ら、ひじょうに複雑なこの世界をそのように子どもじみて認識するしかできな
くなっている、と考え込まざるを得ない。
もしこの演説が地上最強の政策決定者による現実に影響力を持つ世界観を提示
しているとするなら、ブッシュ指導部はさまざまな分野から信用のある専門家
の助言を受ける必要がある。アメリカの外交政策を支えている知性的な前提は、
飲み屋での喧嘩以上のものでなければならない。

 アメリカの非凡主義、国家主義、優等生ぶり、選民思想

 ジョージ・W・ブッシュは、まるで裁判官か救世主であるかのように、人類
の上に聳(そび)え立つ非凡なアメリカ合衆国のイメージを提示している。ア
メリカは国際社会にパートナーを持たず、また国際社会の一員でもない。私は
民族国家として強い自覚を持つ国々で仕事をしてきた。クロアチア、セルビア、
ソマリアそして日本といった本当に民族主義の国である。だが、この四ヵ月間
に培養され、演説によって促進されてきたアメリカの国家主義に比べると、こ
れらの国の国家主義は影が薄くなる。危機に際してともに立ち上がり、自分の
祖国を愛することは素晴らしいことであり、それを表現するには愛国心という
言葉がふさわしい。愛国心という言葉を自分自身を至上のものと考えて使った
り、他の誰しもを自分より低劣で存在すら無視してよいとみなすようになると、
それはもはや超国家主義ないしは好戦的愛国主義である。
 「アメリカはどこにいても万人にとっての正義であり、真実であり、不変で
あるがゆえに、アメリカは自由と正義を守ることによって(世界を)指導して
いくだろう」。
これは空疎な声明でないとしたら危険な声明である。このような価値観は、さ
まざまに解釈され実践されるものだということが無視されている。この声明は、
アメリカ人以外の者がこうした権利を行使する権利を否定している。そこでブッ
シュは、まるで言いすぎたことに気づいたかのように、「われわれは自分の文
化を強制するつもりはない、だがアメリカはつねに断固として一歩も後に退か
ないだろう」とつけ加えている。
 アメリカの選民思想を正当化するのに二つのことが挙げられている。一つは
歴史であり、「歴史は米国とその同盟国に行動を求めている」と言い、二つ目
は神で、「神は身近に在す」と言う。このように、ほとんど聖書を語るような
気分にひたって、ブッシュはアメリカの国を神による選民の国と見なし、選ば
れて正義をなすのはアメリカが歴史と神によって選ばれたからだと言うのだ。
しかしこれでは、他の原理主義とたたかうためにキリスト教的な原理主義をも
ちだすということにならないか?
 演説によると、<自由部隊>はアメリカの憐れみ−-しかも極上のものをほ
どこし、イスラムの国々に発展と教育とその機会をもたらすという。それでは
ブッシュ大統領がイスラム諸国からなんらかの<部隊>を招いて、自国内で同
じようなことをさせると想像できる者がいるだろうか?

アメリカの軍国主義は国際社会の民主主義を終わらせる

 最後に、暴力に対して残忍な傾向と圧倒的なハイテク戦力の誇示がある。彼
は誇らしげに、アメリカは戦争に一日当たり3000万ドル費やすのだと語り、ま
た戦争は始まったばかりで、今後はもっと必要だなどと世界にむかって宣言し
た。この意味は、ブッシュがアフガニスタンの復興援助に支出するはずの金額
は対テロ戦争10日分の費用と同じということである。そんな程度の哀れみなの
だ。アメリカの軍事予算は4000億ドルに達しようとしており、世界の軍事支出
の半分(50%)を占めている。
 アメリカ合衆国は、自分たちが敵ないしは「ならず者国家」とレッテルを貼
る全勢力の10倍もの軍事支出をしており、軍事技術力ではおそらく20倍を上回
る能力を備えている。それほど強い者がこれほどの脅威にさいなまれるという
弁明が成り立つだろうか? これは健全なことなのか、それともひどく病的で
誇大妄想的な反応なのか?
 9月11日がそのような措置につながったというのは心理学的に正当化される
のか、それともあの日の事件が別目的で利用されているだけなのか?
 今日のアメリカ合衆国は、歴史上、もっとも強力な国である。他の一国であ
れ複数の諸国であれ、このたった一つの国に対してその国が要求するものと異
なる行動をとるよう説得することができないし、また、この一国が要求するこ
とを抑制することもできない。アメリカは世界を支配するかもしれない。アメ
リカは国際的な民主主義を定義するあらゆる概念に反して行動している。たと
えまったく慈善的であっても、他のすべての国の意志に反する政策を指図でき
る国が存在するという状況は、民主主義というよりも独裁主義に近い。
 私が指摘したいのは、アメリカは現在および将来の世界において(少なくと
も他の国が競争力を持つまで)こうした立場をとるべきではない、ということ
ではない。私が指摘したいのは、たとえガンジーやマンデラあるいはマザー・
テレサの導きであったとしても、一つの国、一つの思想、一つの政策に他のす
べてを上まわる大きな力を付与してはいけない、ということである。

 なぜブッシュのアメリカは危険なのか

 他国の不作為、権力の拡大、他の国々に対する自己の価値観の投影、複雑な
世界に対する非現実的な認識、自分だけが正義だと考える非凡主義と幻想、さ
らに歴史と神に選ばれたとする錯覚。こうした要素を、長期にわたる世界戦争
に捧げられたほとんど理解しがたいほどの大きい技術力や経済力と結びつけて
みよう。そうなると、必然的にアメリカを含む全世界にとってますます有害な
方向へ向かう、という定則に辿(たど)りつくだろう。
 もしアメリカ指導部が世界と協調しようとせずに世界に君臨しようとするな
らば、アメリカは自己の最善の利益と世界の最善の利益に対立して動いて行く
ことになる。
そのように文明の崩壊へと転落していくと、世界大戦かあるいは完全な混沌が
現実のものになるだろう。
 どんなに辛くても、まさに今、アメリカの崇拝者と同盟者にむかって、人々
の懸念の声をあげる時である。私たちのあいだには、この大国を賛美したり理
想化するより、むしろ危険視する見方がいっそう強まっている、それには実際
的な根拠があるのだとアメリカ国民が理解するのを私たちは手助けしようでは
ないか。
 (転送ここまで)
 

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