[BlueSky: 3693] Re:3243 文明の生態史観はいま


[From] "Y.Kuzunuki" [Date] Sat, 6 Oct 2001 14:46:35 +0900

こんにちは、葛貫です。

過ごしやすい季節になり、積ん読状態だった本を少しずつ読ん
でいます。お時間がある方、お付き合い下さい。

須賀さんが紹介して下さった
> 梅棹忠夫編『文明の生態史観はいま』(中公叢書)
>    中央公論社 2001年2月20日初版印刷
>            2001年3月10日初版発行
を昨日の午前中に読み終えました。面白かったです(^^)。

この対談のもとになっている梅棹さんの「文明の生態史観」では、
ユーラシア大陸を、日本と西ヨーロッパという東と西の果てに
ある第一地域、その内側にある中国、インド、ロシア、イスラム
の4つの巨大帝国が興亡する第二地域、大陸の中心を南西から東北
にむけて斜めに走る「大乾燥地帯」に大別し、気候条件の影響を
受け、自成的に遷移してゆく文明について語られていました。

乾燥地帯では、有蹄類動物を家畜化し遊牧社会が成立した。
(動物の群れに人間がついて行くので土地所有は意味がない。)
近隣で農耕社会が成立すると、「略奪産業」が遊牧社会の
システムとして組み込まれる。

まともに被害を受けた農耕民は、それに対抗するために組織化し、
国家が発生した。

大陸の東西の果てにある第一地域では、外部からの強烈な撹乱
を受けることが少なく、資本家が育ち封建制度ができ近代資本
主義が発達した。

砂漠の遊牧民による撹乱をしばしば受ける第二地域では十分に
資本家が育っていない状態で、無理と歪みを内在させながら
専制君主制からいきなり近代資本主義へと、移行しようと四苦
八苦している。

フィールド・ワーカーである梅棹さんは、1957年に世界をこの
ような視点でとらえられたんですね。 
#すごく大雑把で、済みません。読み誤りがあったらご指摘を。

今、大乾燥地帯にある国アフガニスタンと、様々な文化がパッチ
状に入り混じっている移民の国である米国が対峙し、周辺の
国々が様々な都合を抱えて右往左往している。
凄い構図ですね。

『文明の生態史観はいま』では、川勝さんは陸路だけではなく、
海路経由の相互作用に関する考察も付け加えていらしたのですが、
もし、飛行機というものが発明されず「空路」がなかったら、
砂漠地帯は東西文化の交流にとって要路となり、そこで暮す人々
は、交易の安全性を確保するため、もう少し平安で豊かな生活を
することを許されたのかもしれないな、と思いました。

多くの遺跡の存在が示すように、河の流れの変化等、水利条件に
より、村落が壊滅したり、それに伴う部族間の争いがある厳しい
砂漠の環境の中でも、東西が混ざり合った豊かな文化をつくり出
した地域なのに・・・・。
現実がある以上「もし」を考えることは、それほど意味のないこと
なのだと思いますが、そういう在り方を潜在させている地域でも
あるのに、とアフガニスタンで採れた綺麗な青色をした青金石を
眺めながら思いました。

石油の確保等、外部の都合による戦乱により難民をつくりだし、
援助物資を投与する。たとえ生き延びることは出来ても、自立的・
自律的な生活の基盤を築くことができない人々の心が過激な方向に
向かってしまうのも自然な成り行きかもしれませんね。


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