[BlueSky: 3594] 東大平和学ゼミ Part 8「開発・環境を平和学から考える」


[From] YOSHINORI ENDO [Date] Sat, 18 Aug 2001 23:25:17 +0900

 どうも、遠藤@ピースボート・ボランティアスタッフです。
 少し時期が送れてしまいましたが、「開発から見た平和」ということで、この6月
に開かれた東大平和学ゼミPart8「開発・環境を平和学から考える」という授
業が開かれました。そのレポートをお送りいたします。

 東大平和学ゼミPart8 開発・環境を平和学から考える」
 
 大テーマ「開発VS環境」
・マレーシア ARE社放射能汚染事件(1992年)
 まず最初に、ビデオが放映されました。ビデオは、マレーシアでの環境破壊問題
についてでした。
 日本企業(三菱系企業)と地元資本と組んでマレーシアに「ARE」という会社を
作ります。この会社が放射能対策を十分におこなっていたかったために、現地で
放射能汚染事故を起こしてしまい、地元住民に多大な被害を与えてしまいます。
 当然の事ながら裁判がおこなわれ、その結果、裁判所は住民側の訴えを認め、、工
場の操業停止を命じる判決を下すのです。この裁判は最高裁までもつれ込みま
すが、結局は会社側が逆転勝訴します。ですがこの会社はそれから3週間後に解
散します。やはり、どこか後ろめたいものがあったのでしょう。ですが工場はそ
のまま放置されるのです。現地民からは、「日本企業は日本国内では放射能及び
薬品などの公害対策を十分にしなくてはならないから、公害につながる部分は
国内ではなく、外国に頼んでいる。これはダブルスタンダードだ」といって非難
しています。
 ARE社の当時の社長もこれについて、業界向けの著書で、これは公害輸出であると
認めているのですが、後に出された改訂版では、その部分は削除されているそう
です。また、他の企業では川崎製鉄が、公害輸出をフィリピンでやっていると非
難されています。

  
 Q1 アンアカウントダブルコストの発生がしばしば容認されてしまうのはな
ぜか?どう対処したらよいか?
 例・水俣病もその一つ 説明責任を全うせずに住民に被害を与える状態
→アンアカウントコストである
域を出ていない

 ここで、「開発」の定義について触れられます。
 普通「開発」といわれれば、経済開発のことを思い浮かべませんか?しかし、この
授業では、開発は経済開発だけではなく、人間開発、人材開発、社会開発、これら
も開発の一種ですと教授はおっしゃいました。これらは、経済開発だけでなく、
いろんな開発の仕方があるのではないかという視点で生まれた概念なのです。
そしてこの授業のテーマ「開発で地域はよくなったのか?」というテーマにはい
るのです。
 先のシンガポールでの公害は、一時的なものではなく、重大な影響はずっと続き
ます。さらにいえば「貧者の核兵器」といわれる地雷についても取り上げられ、こ
の地雷問題もその一種なんだといわれます。ただ、化学物資・放射線物資と公害
被害との因果関係はいまだに解明されていないそうです。また、これまで出たデー
ターも、あくまでも憶測の域を出ていないそうです。 

バズセッション
 テーマ1.環境を壊さない開発はあるのか?
    2.被害が避けられなくても開発は進められるべきか?

 開発(至上)主義
 開発=その人の持っている本来性を広げるのが本筋
 今やっている開発というのは本当に住民の役に立っているのだろうか?
 暴力=その人の潜在的可能性を奪う 
  
「開発で多少の犠牲が出ても、その利益が大きいとわかっている場合はある程
度は目をつぶるべき」(by世銀関係者)これは正しいのかどうか?
 各グループに分かれて討論

 ・仏教的に見たら開発は欲望を満たす手段だから開発はするな
 ・被害が避けられない開発はこの世にはあり得ない
 ・開発がなくなるには人間がなくなるしかない
 ・環境を壊すのが開発 開発というのは多かれ少なかれ環境を壊す
  人間が手を加えるという時点で環境破壊につながっている
 ・人間にとって害がない状況で環境を変えるのは許容されるべきだ
 ・住民が賛成すれば開発を進めたらいいが、一部の意見だけでそのようなこと
を進めていっていいのだろうか?
 ・開発を押し進める政府が被害を受ける立場になっていないのが一番の問題
で、それは地域住民のことを考えていないことにつながる 
 ・先進国のやってきた工業的な開発で、自然を破壊しない開発はない
 ・これからの開発は人間などの開発(つまり教育面)に重点を置くべき
 ・開発に関しては事前調査にウェートを置くべき 企業と住民、双方に利点の
ある開発はできないか?
 ・開発=自然破壊と同義語 今までの開発は政府・企業中心だったので、これ
をいかに住民主導に変えていくか?
 ・欲しいと思っている住民が全然違う地域に原発を作ることになると、地域
間対立を起こす 今日取り上げられた「公害輸出」も、突き詰めていくと地域
間対立につながるのではないか?たとえば都心に住んでいる住民が電気を欲し
いために原発を作ろうと計画しているが、そのために地方に住んでいる人間が
犠牲を負うのは納得できない

結論
1.環境を壊さない開発は改変が破壊にならないようにすればよい
  棚田はそういう意味で理想的なシステムだと思う  
  日本的なやり方では自然破壊などの問題を引き起こす

2.開発=住んでいる人間の生活がよくなる(便利になる、儲かる、楽になる
  
 まとめ
 これまでの開発は「快」を増やす路線でした。だが、これがくせ者で、下手をす
れば「快」と一緒に、「不快」なものを一緒に押しつけられるおそれもあります。そ
のため、これからの開発は「苦」を減らすことが重視されると思います。「苦」を減
らすということは、必然的に暴力をなくすことになると思うので、「快」を増やす
という考え方(開発主義パラダイム)を、「苦」を減らすという考え方(平和パラダ
イム)に転換させるということが大事だということを紹介して、講義は終わりま
した。

 教室内には全部で100人近い学生がいたでしょうか? 女子学生もかなり目立ち
ました。そして、中は熱気でムンムンしていました。こういう授業が、どんどん他
の大学でも増えたらいいな、と思いました。この活動は、、とても意義深いものが
あると思っています。全国に広がらないかな?

 自分はいろんな市民運動のMLに首を突っ込んでいるのですが、常日頃感じるこ
とは、これらのMLが専門化、・細分化されているので、幅広い視野から物事を考え
られないというのが一番不満に思っています。
 ご承知だと思いますが、今の平和活動は従来は政治、法律面からアプローチされ
がちでしたが、今ではこれらの分野からだけでなく、教育、哲学、心理学、開発学、
国際学、文化、社会、歴史、自然科学、マスコミなど、幅広い分野からアプローチが
可能になっていると思います。そんなMLがあったらと思っていますが、なかなか
お眼鏡にかなうようなのが見つかりません。いっそのこと、自分でつくってしま
おうと考えています。

 それでは例によって、長いメールを読んでくださってありがとうございまし
た。

United People Alliance
  ピースボート
ボランティアスタッフ
遠藤 嘉則
mataro@ss.iij4u.or.jp
We Are Aid Team!!


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