[BlueSky: 3593] 地球の友セミナー Part2


[From] YOSHINORI ENDO [Date] Sat, 18 Aug 2001 15:07:06 +0900

 こんにちは。遠藤@ピースボート・ボランティアスタッフです。
 今日は、地球の友セミナーPart2の模様をリポートいたします。

 地球の友ジャパン環境セミナー 第2回
 〜環境問題とあなたのオカネ 
      自分のオカネを追ってフィリピンまで〜
 日時:8月17日(金) 19:00〜20:00
 場所:ピースボート東京事務局
 講師:波多江 秀枝(はたの ほづえ) 

 今回のテーマは、我々の税金がODAとして使われているが、それが現地で本当に
感謝されているプロジェクトなのかどうか、ということがテーマでした。一例と
して、フィリピンで問題になっているサンロケダム建設問題が取り上げられて
いました。

 ここで少し、サンロケダムについての背景を説明
 場所:フィリピン ルソン島北部・コルディリエラ地方
 アグノ川にサンロケダムが建設中(90パーセントまで完成)
  
 事業主体 サンロケパワー社
 株主 丸紅(42.95パーセント) 関西電力(7.5パーセント)
     サイスエナジー社(アメリカ、50パーセント)
 サンロケ多目的ダムは、アジアで最大のダムである。
 日本最大のダムである黒部川第四ダム(通称クロヨン)と比べて欲しい
 (かっこ内はクロヨンのデータ)
 高さ 190メートル(186メートル)
 長さ 1.1キロメートル(492メートル)
 貯水量 8億5、000万立方メートル(2億立方メートル)
 総工費は11,91億ドル(約1,200億円)
 国際協力銀行、三井住友銀行、東京三菱銀行、第一勧銀、農林中央金庫
 が9億ドルを融資している。
 
 「ダム完成後、設立主体のサンロケパワー社は、フィリピン電力公社に通常の5倍
の値段で向こう25年間電力を売り続け、その後の保有権は電力公社に引き継が
れる契約になっている。だが、十分な発電量や電力需要が見込めなくても高額の
料金受け取りを保証されている契約になっており、また、ダム自体の寿命も50年
しかない可能性があることが指摘されている。フィリピンはGNPの70パーセント
を海外への債務返済に充てている重債務国であるため、このプロジェクトで多
額の債務と大きなリスクを抱えることになる」
 〜地球の友ジャパン『ストップ・サンロケダム キャンペーン』のパンフより
抜粋〜

 このダムは80年代半ば、マルコス政権の頃から計画されていたそうです。言い
出しっぺはJICAだったそうですが、その時はマルコスはいい顔をせず、計画は頓
挫してしまいます。    
 ところが'95年、ラモス大統領の時にこの計画が再び浮上します。ダムは下流地
域に恩恵があるらしいのですが、ラモス大統領は下流域出身だったらしく、利権
がらみでこの計画が再び甦りました。前回調査の経緯から、ODAからは出資はム
リだろうということで3社共同出資による「サンロケパワー社」を設立し、そこが
事業主体となって建設が進んでいます。
 このダムの目的は、
 1.水力発電
 2.灌漑
 3.洪水対策
 4.水質改善
の4つの目的あるといわれています。ですが、「1」に関しては、フィリピンは電力
不足は解消されているそうです。これからは新規ダム建設よりも、風力発電や太
陽発電に力を注いだ方がいいと波多江さんはいっていました。
 「2」に関しても、事業者側は「このダムで、87,000ヘクタールが灌漑される」とい
っているそうですが、すでにこの地域の灌漑は十分に進んでいる上、このプロジェ
クトとは別に、ODAからの出資で別の灌漑計画があるらしいです。
 「3」の洪水対策に関しても、アグノ川にはすでに2つダムがあるのですが、この夏
の水害の時にもあまり効果がなかったらしい。事業者側は、「最新の技術が使わ
れているから、ダム決壊はあり得ない」といっているらしいのですが。
 「4」について。これはでたらめ。水質改善どころか、過去に出来た2つのダムの
おかげで、土砂堆積、水位の上昇などでかえって水質は悪化したと地元民は述べ
ています。
 
 ここまで説明があったところで、現地の状況を伝えるビデオが放映されました。
この問題を伝えるニュース番組でした。
 
 反対運動の中心になっている村に電気が引かれたのは5年前。村は祖先を大事
にし、自給自足の生活を送っている。カメラは、原住民と一緒にダム建設現場に
車ではいる。現場は、150tトラックがいっぱい走っている。
 
 原住民の話「20年前よりも自然が減った。我々にとっては、ダムは死を意味する。
川には2つのダムがあるが、大量の土砂が流れなくなり、生活が困難になった。こ
れは天災ではなく、人災だ」
 
 住民が支援しているNGO(地球の友ジャパン−以下FOE−と一緒に、「サンロケ
パワー社」の責任者と談判します。ですが責任者は「ダム建設に関する資料は出
せない、欲しかったら社長にいってくれ。途中で止めたらもっとカネがかかるん
だぞ」と発言。

  波多江さんはこの3月、現地に行って来たそうです。その際現地の人間から、 
「この計画は日本の金無しには進まない計画だ」といわれしまったそうです。
 融資している国際協力銀行の担当者は、
 「我々は融資する側なので、事業云々についてコメントできる立場ではない。社
会面、環境面で配慮されていると思っている」とこのビデオで発言しています。
 ですが、FOEが講義にいったとき、国際協力銀行は反対運動があったことを知ら
なかったらしい。扱っている金額は世界銀行より多いのですが人数が少ないた
め、事前調査も事業者頼みらしい。この地域の調査については、'99年に国際河川
ネットワークというところが調査したそうです(結果については触れていませ
んでしたが)。

 ビデオは、原住民の歌で締めくくられていました。
 
 ダムが出来たら、私たちは祖先に責められる
 どうしたらいいのだろうか?
 彼らは必ずダムをつくるという
 子孫はどこに住めばいいのか?

 このダム建設に伴い、すでに740世帯が立ち退き、さらに200家族が立ち退きを
命じられているらしいです。補償もいまだにおこなわれていない。移住家族はほ
とんど職がなく、運良くあるついてもダム作業員という仕事で、ダムが完成した
ら失業してしまう。電力公社によるプロジェクトも成功しているものは少なく、
住民の多くは将来を悲観しているそうです。またこのプロジェクトで、コミュニ
ティと民族文化の基盤が解体されることを人々はおそれているそうです。

 このプロジェクトで使われているオカネは、郵貯、簡保からでているそうです。
そして、このオカネも、もとを正せば我々の税金です。
 原地住民からは、日本の金が環境破壊を起こしているといわれます。さらに、日
本は昔は軍隊で、今はオカネでフィリピンを占領しようといわれたそうです何
とも恥ずかしい限りです。このプロジェクトでもNGOは、早めに情報公開しろ、工
事を中止しろといっているのだが、国際協力銀行はビデオでもいったとおり、事
業に対する責任も権限もないといっているらしい。腹が立ちます。

 もっとも、ODAは悪いことばかりではなく、役に立っているところもあります。
 いい例として、ケニアのAIDS対策緊急支援援助や、学校建設運動があげられてい
ました。やはり、大型インフラには利権やらなんやらで、いろいろ問題があるよ
うです。問題が起こらないようにするには、世論をあげてのモニタリングや、エ
コファンドの活用をあげていました。

  報告は以上です。
  一言いえば、もうちょっと開発と郵貯・簡保の関係にもうちょっと切れ込んで
くれたらなあ、と思いましたが。

 では、長いメールを読んでくださってありがとうございました。
 
 
United People Alliance
  ピースボート
ボランティアスタッフ
遠藤 嘉則
mataro@ss.iij4u.or.jp
We Are Aid Team!!


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。