[BlueSky: 3546] Re:3542 ドイツは33%削減せよ


[From] ICHINOSE-Takeshi [Date] Sun, 22 Jul 2001 23:33:36 +0900

尼崎市の一ノ瀬です。

 NGOの方々には、EU(=ドイツ)の温暖化ガス排出の削減目標が、如何に
見せかけだけのものであるか、そして、日本に課されている6%削減が、如何に
過酷なものであるかということを、もう少し理解していただきたいと思います。


藤井さん#3542<
 東独の排出減少は、あなたがお書きになったように大きなものではないと思い
ますが。・・・1987年から1997年の間にドイツのエネルギー消費は5%減ってい
るだけで・・・・1990年以降はあまり変わっていないかもしれません。他のEU
国の1987年から1997年の間のエネルギー消費は軒並み増えていますから、(EU
の排出削減を)ドイツの削減でまかなえるというような状況とはほど遠いと思い
ますが。
>(カッコ部、一ノ瀬が付加)

 まず、ドイツの削減でEUの削減はまかなえない、と言う主張は、京都議定書
での削減分担と矛盾します
 最大排出国のドイツと、イギリスの削減で、EU全体の削減の90%をカバー
しています。

 次に、そのドイツの削減の内訳ですが、確かに、東独地域の経済破綻だけで全
てをカバーするのは無理でした。しかし、計算してみると、ドイツの削減目標2
1%の半分をまかなっていることがわかります。

 計算に当たっては、藤井さん提示の”OECDのデータ”は使用しませんでした。
私の手元にない上に、”エネルギー消費”ではなく、CO2排出量が必要だから
です。

*計算
・旧東ドイツの人口は、旧西ドイツの3.7分の1
・旧西ドイツ人の排出量:3.31トン
・旧東ドイツ一人当たり排出量は不明なのですが、旧ソ連よりはかなり
 多かったとみられるので、仮にカナダの値を使う。

 旧東ドイツ圏のGDPとエネルギー消費は4割減ったと言われています。
 これに従って、旧東ドイツ地域のCO2排出が40%減ったとすると、それだ
けで10%以上CO2排出は減少することになります。非常に大きいと思いま
す。
(排出量のデータについては、
http://www.atom-enecho.meti.go.jp/energy/graph/e02-24.html を利用)

 更にいうなら、ドイツは、元々一人当たりの排出量が非常に大きいことが問題
です。

 先ほどのサイトで、一人当たり排出量を比較すると、日本はドイツに比較して
かなり少ないことが分かります。
 一般に排出量は、経済・産業構造に大きく影響されるので、産業構造が異なる
国同士を単純に比較しても無意味ですが、ドイツと日本は、どちらも輸出立国の
工業国なので、比較には妥当性があります。

 データによると、1990年基準でドイツが21%削減しても、2.61トン
/人で、同じく1990年日本の2.35トン/人にも、1995年の2.50
トン/人にも及びません。
 仮に、日本が要求されている6%削減を達成した場合、2.2トンに減ります
が、ドイツがここまで減らそうとすると、33%の削減率が必要になります。
 ドイツは、10%の下駄を履かせて貰っても、21%しか削減できません。そ
れ以上は目処が立たないからでしょう。

 日本に要求されている6%の削減が、如何に厳しいものであるか、この比較か
らも明らかです。
 まともに達成することなど、純技術的には不可能なのです。


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