[BlueSky: 344] 日本全国均一無国籍風景


[From] kitapp@elf.coara.or.jp (Katsumi) [Date] Sun, 8 Aug 1999 13:01:24 +0900

MLの皆さん。こんにちわ,喜多と申します。
8月8日(日)今日も又どんより曇っている。新聞に寄れば今年の九州は「異変,太
陽の見えぬ夏」と言う事だとか,何でも「北に寄る太平洋高気圧」で,福岡の日照時
間は平年の62パーセントとかで,台風の通り道になっている,と。地球規模で起き
ている気象異常の一つの様だが,はっきりした原因は判らないとも。

さて,私は今年2度ばかり近県を一人旅した。昔なら秘境と呼ばれた様な山村を歩き
回った。まだまだ日本には美しい自然は残っている。が,この思いとは裏腹に,徐々
に,徐々に自然環境が破壊されているようにも思えた。その主なる原因は「非常に均
一化された宅地,建物」がこの国を「無国籍風景化」している様に思える。

私の今住んでいる福岡の東区香椎は,非常に立派な家が多い。大阪生まれの大阪育ち
の,私には全く羨ましい様な家が並ぶ(当地に来て4年)。が,何故かちっとも羨ま
しくもない。何故なら一言に言って「家が安っぽい」のだ。言葉は悪いが,どの家も
プレハブの様で,バラックの様で,或いはモデルハウスの様で,今,流行りの「ガー
デニング」で草花は多いのだが,どう見ても自然に負けている。まあ,私は自称画家
(笑)だが,「絵にならない」のだ。私はアメリカには行っていないが,ヨーロッパ
,中近東,インド,東南アジアを合計2年ばかり旅した。別に西欧崇拝主義者ではな
いが,やはり「ヨーロッパ」のまちまちは素晴しい景観だ。普通の日常生活,名もな
い民家でも「絵になる」風景が続く。中近東のアドベ(土塀式家屋とでも言おうか)
,その他,例え貧しくても,そこには特徴がある。

パリをこよなく愛した画家に佐伯祐三(大阪人)と,萩須高徳がいる。その萩須の言
葉に「私はどんなに素晴しくても,人の住まない,人の生活感のない(廃虚)は描か
ない。どんなに朽ち果てていても,そこに人が住んでいる家,人,空気を描きたい」
と言う様な言葉がある。確かにパリもモンパルナスや,ポンピドーセンターの様に高
層建築や,現代建築に様変りもしている。エッフェル塔だってそうだ。しかし破壊し
なくても良い物はまだ数多く残されている。

日本の最近の家屋は,ヨーロッパでもない,中近東でもない,やはりアメリカ型なの
だろうか。歴史の浅いアメリカでも,もう少しカントリーらしい「落ち着き」がある
ように思えるのだが(映像で見て)。
坂口安吾さんが「何も歴史的な遺産がなくても,人間は快適に生きて行ける」の様な
言葉を残したと聞いている。確かにそうだ。地方に過疎化が進み,都会が肥大し,住
む人が便利で,快適なら,建物が「無国籍」であろうと,安っぽく見えようと一向に
構わないのだろう。

もう,この何も感動しない無味乾燥の建築群の,それこそたった1パーセントも残っ
ていない様な地方感を,無理やり,さも素晴しい様に絵に残すべきなのだろうか。(
そう言えば,香椎には青空露天商のおばちゃん達が一番,絵になる風景)  喜多かつみ




kita katsumi kitapp@elf.coara.or.jp
「創造学級KITA ORIGINA」「誰も聞いた事のないコスモムジカ」
URL http://www3.coara.or.jp/~kitapp  
「創造空間」&「蔵書」&「奇蹟」&「古葉書」「切手」(7,DEC,1998更新)





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