[BlueSky: 3219] Re:3218 春の雑木林&「複雑系とは」へのお答え


[From] Ken Goto [Date] Tue, 10 Apr 2001 16:40:28 +0900

後藤@帯広畜産大学です。

和尚さん【3218】:
> 同じとも言えるが違うとも言える。構造の変化パターンが安定という意味です。つまり
> 静的な構造はどんどん変わる(様に見える)が、変化様式には一定のパターンがあって
> そのパターンが保存されていると言うイメージです。
なるほど。僕は、「構造安定性」へいたる道筋(プロセス)を全く無視
していたようですね。

・・・まぁ、生物リズムの分野では、transient (一過的な)な状態と
して、やや軽く扱われる領域です。もちろん、transient も、こ
ちらでは、決定論的な世界にしたがいますが。

> > しかし、和尚の御発言を拝聴しておりますと、複雑系では、あたかも一種類のメ
> > カニズムと一種類の構造安定パターンがあるかのような印象を受けます。複雑系
> > と言うからには、僕の関連したえげつなく「ない」綺麗なリズミカル系とは比べ
> > ようもなく複雑なのでしょうから、僕の誤解に違いないのでしょうけど、この点、
> > お暇があったらご教示いただければ嬉しく思います。
>
> 一種類なんてとんでも無い。ただ、どのパターンにおいてもその系の構成者は予測不可
> 能な変動に見舞われる。それを「えげつない」とばっさり表現しただけです。
>
> > ・・・複雑系だと、決まって(つまり、一義的に)「えげつない」安定状態が生
> > ずる、というような印象を僕は受けたわけです。
よくわかりました。

> たとえ話をしましょう。今の日本の教育は基本的には一種類でしょう?日本国政府の決
> 中略御免
> 、大学に貢献しない先生からクビって事になるでしょう?今の大学の先生が他のこと出
> 来るとは思えませんからねぇ。その後の生活は大変でしょう。えげつなくないですか?
骨身にしみるたとえ話でした。
予測不能性を「えげつなさ」とすると、↑の方向での変化はそれほどえ
げつなくないという感じはしますが。それより、もうすでに、(日常的
な意味での)えげつなさは、独法化への取り組みの中で、十分味わいま
したよ。あぁ、、、ファシズムって、こういう形で進行するんだな、な
んて(前の二文、ひとりごと;無責任発言)。この話題、深入りすると、
虐殺されそう。

> 私の考える複雑系は超大自由度(N)系で系内の相互作用網が2の(N*(N−1))
> 乗あるいはそれに近い数存在し得る系で、しかもそれが時間発展する。その意味からは
> 一直線の社会(日本みたいな)はお世辞にも複雑系とは言い難いです。各相互作用には
> 当然非線形性がありますから、入力側の変化が結果を大きく変えてしまうばかりか、僅
> かな自由度の増化自体が解析量を直ぐに発散させてしまう。ですから厳密な予測は原理
> 上不可能だと思います。ちょっと脱線ですが、にも関わらず、生物や生態系はその中に
> 絶妙の調和を形成する。言い換えればNP完全問題を解いてしまっている訳です。だか
> ら生物やその集合である生態系は凄いんですけどね。
すみません、NP完全問題、って何ですか?

さて、生物や生態系も複雑系なのですか?↑の一、二行目に複雑系の定
義が与えられているようなのですが、生物だとNはどれくらいの値を想
定しているのでしょうか?

生物に調和を与えているのは発生プログラムだと思われます。この発生
プログラムは完全に解読されたわけではありませんが、(大局的には)
決定論的なプログラムであることは確実でしょう:私たちは、発生して
成長・成熟して、老いて死ぬ、そのパターンは決まっています。

言い換えると、生物は複雑には違いありませんが、和尚さんの言う意味
での複雑系とはだいぶ異なるように思います。
・・・時間発展を一義的に規定する発生プログラムによって制約されて
いるため。

> > さて、引用させていただいた文章に戻ります。前半部はおそらく和尚ご専門の土
> > 壌微生物群集という複雑系から得られた結論だろうか、と思うのですが、その結
> > 論は人間社会にもマジで適用可能なのでしょうか?言い換えると、上に述べたこ
> > とと関連するわけですが、複雑系であれば結論は一つなのか、ということです。
> > マジで考えれば、二つの複雑系を複雑にたらしめているメカニズムが(素人考え
> > では)全く違うように思うのですが、そういったメカニズムの相違を超えて実現
> > される共通のパターンと言うものが複雑系だとあるのでしょうか?
>
> 私は両者は複雑系としては極めて共通性が高いと考えます。もちろん見かけ上の複雑度
> は人間社会の方がダントツでしょうが、自由度は微生物の方がダントツですね。何れに
> しても、両システムには共通の力学的性質がある様に見えます。一定以上の複雑さを備
> えたシステムには何かそう言うシステムの物性物理的性(さが)の様な物が作用するよ
> うになる様に思えてなりません。ですから、実際不思議と両者にはアナロジーが成立し
> てしまいます。
> 訳解らないと言う不満の声が聞こえそうですが(笑)、そうなんだから仕方がないと言
> う他ありません。スミマセン。ML上の議論では巧く書けませんが、お解り頂いたでし
訳解らない変動に見舞われる(予測不能性)という点での共通性につい
ては了解しました。
・・・同じことですが、人為では制御できない、ということでもありま
すね。なるがままにしかならない系、といったらよいのかな。

先ほど、和尚さんは、日本社会はお世辞にも複雑系とは言えない
とおっしゃいましたが、この日本社会に「撹乱因子」を投入して
複雑系にすることが和尚さんの目的ですか?

> が決まればまたお知らせしますが。
よろしくお願いいたします。

後藤 健
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生命を考える http://www.obihiro.ac.jp/~rhythms
帯畜大 生物リズム学 Phone (& Fax): 0155-49-5612


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